2018/01/16

食材の流通と変化 /農林水産庁Web

食材の流通と変化

はじめに

日本の家庭における日常の食生活は、自分たちが生活している地域にある米などの穀類を中心に、野菜、果物や魚介類等を主な食材として形成されてきた。しかし、社会が発展するにつれ、食品をはじめとする財の流通システム等が整備拡大されてくると、食生活も大きく変わってくる。このような中で、それぞれの地方や地域での特色ある「食文化」が生まれ、そして変化しつつ醸成されて今日まで来ているものと言える。

 

特に、近年においては、経済の発展と高度化、更には品種改良や養殖などの生産技術の向上、食品流通における輸送システムや冷蔵・冷凍技術また加工技術の一層の伸展、また一方では、天然資源の変化や漁場や漁獲の制約などもあり、食生活は大きく変わってきている。そこで、ここ半世紀の間における社会経済状況の変化や流通システムの確立を初めとする産業的、技術的変化が、食材の流通にどんな変化をもたらし、食生活にどのような影響を与えているかを見ることとしたい。

 

そのため、とりわけ、日本全国各地及び世界各国から集荷した多種大量の生鮮食料品を家庭の食卓に運ぶ、国内食品流通の最大の要である中央卸売市場の食材流通の変化などを中心に見ながら、その特徴に触れてみたい。

 

I 食材の流通システム

1 卸売市場の役割と種類

国内の食材流通の中心的役割を持つ卸売市場は、国民の食生活に欠かすことのできない生鮮食料品等(野菜、果実、生鮮水産物、加工水産物、肉類、花き等)を日本国内はもとより諸外国からも集荷して、適正な価格を付け、速やかに分荷し、国民の台所に送る役割を担っている。

 

卸売市場は「中央卸売市場」と「地方卸売市場」、「その他卸売市場」に分けられる。中央卸売市場は、都道府県、もしくは人口20万以上の市が農林水産大臣の認可を受けて開設する卸売市場であり、平成239月現在、44都市に72市場が開設されている。地方卸売市場の場合は、卸売場の面積が一定規模(青果330㎡、水産200㎡、食肉150㎡、花き200㎡)以上のものについて、都道府県知事の許可を受けて開設されるものであり、平成194月現在1237市場ある。中央卸売市場の開設は地方公共団体に限られており、都や府または市である。地方卸売市場の場合は、地方公共団体のほかに株式会社や農協、漁協等も開設できる。その他卸売市場とは、中央卸売市場及び地方卸売市場以外の卸売市場であり、卸売市場法に規定が無く、条例で必要な規制をすることができる。

 

2 卸売市場の機能

卸売市場の機能には、5つの重要な機能がある。

1つは品揃え機能であり、世界や日本全国各地の産地から多種多様な食材(生鮮食料品)が豊富に集荷される。また、産地育成をしながら商品開発を行い、消費者ニーズにあわせた商材、求められる食材を集荷するという機能も果たしている。

 

2つめは集分荷・物流機能であり、大量に集荷した食材を少量多品目に分荷して、迅速、確実に市場外の小売店、スーパー、料理屋等へ流通させる。

 

3つめには、最も重要な機能としての商品の価格形成機能がある。需要と供給を反映した、迅速かつ公正な評価による透明性の高い価格形成機能である。これがなければ商品の値段の相場が分かりにくく、価格決定が不安定になる恐れがある。

 

4つめには決済機能であり、安定的な生産及び出荷に重要な役割を果たしている。販売代金が数日内に、確実に卸売業者から産地に支払われるため、産地にとっては大変安心なシステムである。しかし、卸売業者が仲卸業者から代金を受け取るのには一週間程度かかり、仲卸業者が小売業者等の販売先から代金を受け取るには、更に日数が長くかかることが多いのが実情であり、特に、スーパー等大型店の決済は長期となる場合も多く、仲卸業者の経営は資金繰りの悪化で大変苦しい状況にある。

 

5つめは情報機能で、需給にかかわる情報の収集と伝達である。これらの機能が働くことにより、消費者に食材を適正な価格で供給し国民生活の安定と向上を図り、生産者には継続的で安定的な販売ルートを確保するという重要な役割を果たしている。

 

3 取引の流れ

1)卸売市場の取引の流れ(青果物・水産物)

(a) 卸売市場の卸売業者は、産地の出荷者(生産者・出荷団体・集荷業者)から多種多様な生鮮食料品を集荷する。出荷団体は、地域の農協や水産漁業組合で、集荷業者には輸入会社などがある。個々の生産者が、直接卸売市場へ持ち込むことは少ない。

卸売市場は効率的に大量に流通するところであり、食材がどっと卸売市場に入荷してくる。一定期間、定量が必要な品物は買付集荷が多く、委託集荷は、売れ残りが生じたり、単価安で産地の希望価格に添えなかったりする場合もある。

 

(b) 卸売業者は集荷した品物を、市場内の卸売場で、せり売り・入札又は相対(あいたい)売りにより、仲卸業者・売買参加者へ販売する。売買参加者とは、開設者(都・府・市など)の承認を受けた大型需要者(大手スーパーや給食業者など)、加工業者、小売業者(生活協同組合など)などであり、仲卸業者を経由せずに直接値段をつけて購入できる。

 

関西の卸売市場では、この売買参加者が少なく、京都市場では2社である。関東以北では、仲卸業者よりも売買参加者の方が多い。売買参加者が品物を購入するには仲卸業者に競り勝つ必要があり、仲卸業者から購入した方がより確実であり、実際には安価な場合もあることから、関西、特に京都では仲卸業者経由で購入する場合が多い。

 

(c) 仲卸業者は、市場内に店舗を持ち、買い受けた品物を細かい単位に仕分け、調整し買出人である小売業者、料理店、スーパー(大口需要者)等に販売する。

大手スーパー等との取引については、スーパー等が何日も先に売る商品の販売価格を決めていることから、取引は一種の先物取引であり、仲卸業者にとっては予定された取引価格で確実に商品が入手出来るか不明確なため、経営上の大きなリスクを負っている。(仲卸業者は、現実的には損失を被っている場合も多い。)

なお、卸売市場は流通市場であり、一般消費者が直接購入する市場ではないが、法令上禁止され罰則があるものでもなく、一般消費者が仲卸店舗や関連事業者店舗で購入していることもある。

 

一方、買出人である料理店などが、卸売市場内で品物を購入せずに、卸売市場から小売市場へ販売された食材を小売市場で購入することや、産地から直接購入する場合もある。(例:京都の有名な錦市場は小売市場であり、錦市場には主に京都市中央卸売市場の仲卸業者経由で、多くの食材が届いている。料理店やレストランなどでは、錦市場で購入したり、自ら希望の食材を品定めするために早朝の卸売市場に来て購入するなどしている。)卸売業者から仲卸業者へ、そして小売業者(買出人)を通じて消費者へという形態等を持つ流通システムは、日本独特のものがあると言われている。

 

 (注)

委託集荷とは、卸売業者が出荷者から物品の販売委託を受けて行なう集荷方法。

買付集荷とは、卸売業者が出荷者から物品を買付けて行なう集荷方法。

相対売りとは、市場でせり、入札で売買せずに、当事者間で売買方法、取引価格、取引量を決定して売買する取引のこと。

 

京都市中央卸売市場第一市場(青果物・水産物)の事例(平成233月現在)

卸売業者数       4      (青果物卸会社2社、水産物卸会社2社)

仲卸業者数       214業者           (青果仲卸業者84業者、水産関係130業者)

関連事業者数   101業者           (飲食・促成野菜・肉類・卵・豆腐・佃煮・乾物・漬物・味噌・醤油・食器・包装資材等の販売等)

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