2003/07/03

若き闘争の日々・第1章(2)



 どっちにせよ、今更まともな企業への就職などは土台無理な話であり、そもそも頭からその気もなかったから「楽をして稼げる」という文句につられるのも、無理からぬところなのである。
 
 が、言うまでもなく、現実がそうそう甘いわけはない。
 
 まず、テレアポの段階で説明どころか社名を名乗っただけで、バチバチと電話を切られてしまうケースが多く、とても訪問どころではない。
 
 商品のせいもあるだろうが、テレアポというものの難しさや虚しさを散々に味わされる事になる。
 
 また首尾よく訪問アポを取り付けた場合も、まずは営業に渡さなければならず、後は営業の手腕頼みで売れれば大枚が手に入るが、売れなければスズメの涙だ。
 
 誰に聞いても、来る日も来る日も朝から夕方まで電話を掛け続けても
 
 「そもそも訪問アポを取り付けるまでが、並大抵の苦労ではない」
 
 というのが実情のようであった ( ̄_ ̄;) うーん
 
 そうして2日目にして、早くも漠然とした疑問を感じ始めた
 
 昼休みを迎え、同じくらいの年齢の仲間(当然の事ながら、皆20代前半くらいのばかりだったが)3人と昼食に行った。
 
 一番新入りのワタクシが
 
 「みんな、アポとか取れてる? 
 オレは昨日からやってて、サッパリなんだけどなー」
 
 と水を向けると
 
 「ぜーんぜん。
 私は今日で一週間目だけど、まだたったの2件だよー。
 しかも2件とも、営業が売れずに終わってるし・・・」

 
 「まだいい方じゃん。
 私なんか4日目だけど、昨日までゼロだよ」

 
 「オレなんか1ヶ月近くやって、まだアポ2件だぜ・・・そのうち1件は売れたみたいだけど、結局トータルで5万くらいにしかなってないよ・・・」
 
 と、やはり誰もが上手く行っていないのは明らかなようだった。
 
 「やっぱ、みんな同じようなもんかー。
 どーもインチキ臭くないか?」
 
 「ホント、そう思うよな・・・名乗った途端に、電話切られちゃうようなのが多いし・・・なんか、評判悪すぎ・・・」

「なんか、評判悪くない?」
 
9割くらいは、まったく相手にされないし・・・なんか虚しくなっちゃうよねー」
 
「私も沢山の子に聞いたけど、成績のいいコで二週間で6件とかってコがいたけど・・・でも1件も売れなかっから、結局5万くらいにしかならないんだってさ」
 
「なんか最初の支店長の言ってた話と、全然金額が違うような・・・」
 
「そうそう。
 最初の話だと、確か1セット売ったら、報奨金が5万円と言ってたよな?
 
でも営業が持っていっちゃうから、結局我々には5000円くらいにしかならんしな
 
「しかも営業が売らなかったら、1銭にもならないんでしょ?
 5000円ってのも、うそ臭いんだよね」
 
「計算が違ってませんか? 
 って訊いたら、経費とか差し引いてとかなんとか、ヘ理屈で丸め込まれちゃったらしいよ」

 
大体、契約取れたって話、滅多に聞かねーしな・・・。
 10件に1件もなさそうだよな・・・」
 
「あれも、なんだかインチキっぽくない? 
 実際には契約取れてても、わかんないわけだしねー

 
「大体、あんなのを数万も出して買うヤツが、そうそういるわけないよなー。 
 実際いたとしても、売れなかったと言われれば確かに、オレたちにはわかんねーよ」
 
1ヶ月もいても、訪問アポが23件しか取れないってコも多いみたいだよね。
 まあ普通なら、それまでには辞めちゃうけどさ」

 
「それだと月収1万かそこそこだろ・・・やっぱ、完全歩合制ってのがインチキ臭かったんだよな」
 
「つーか、1件も取れずに辞めたヤツの方が多いんじゃねーか?」
 
などと、訊けば訊くほどに何ともインチキ臭いのである。
 
 名古屋支店長から皆が集められたのは、そんな会話があった翌日であった・・・

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