2003/07/07

若き闘争の日々・第1章(4)

 「そこへ掛けたまえ・・・」
 
 と、向かいのソファを勧める仕草をした。
 
 「なぜ、君だけを呼んだかわかるかね?」
 
 (そりゃ言うまでもなく、タヌキが私の天才を見込んでの事でしょう・・・
 
 という本音は飲み込み
 
 「いや全然・・・サッパリ心当たりがありませんが・・・」 
 
 などと、空トボケテ見せると
 
 「先の社長の訓示だ・・・君は、さっきの私の話を聞いてなかったのかね? 
 社長は、一目で相手の心を見抜く天才だという話を・・・」

 
 「はあ・・・
 まあ一応、訊いてはいましたが・・・一応ね」
 
 「社長が、大変に気を悪くなされたようだ。

一人だけ、まじめに話を聞いてない者がいるがあれは何だ』

と、私がこっ酷く叱られたよ」
 
と、ジロリといやらしい眼つきで睨むと
 
「キミは、社長の話を疑いながら聞いていたろう?
 疑いを持って話を聞いているところまで、見抜かれていたぞ・・・」

 
(それくらいは、よほど鈍感でなければわかるだろう・・・)
 
と、腹の中でせせら笑いつつも
 
「はあ、そうですか・・・」
 
とだけ答えた。
 
「なぜ、私の話を疑った? 
 キミ以外はみな、真剣に聞いていたんだ・・・なぜ、私の話を信じなかったのかね?」

 
そろそろ
 
なんでこんなクダラン事で、わざわざ呼び立てられなければならんのか?
 
と、次第に腹立たしさが込み上げて来た (" ̄д ̄)けっ
 
こうなると、幸か不幸かおとなしく収まらないのが持って生まれた性分だ。
 
「なんで、とか言われてもね・・・私の心の持ちようにまで、異議を唱えられるのは心外ですが・・・」
 
「なにを?」
 
「あのヒトラーでさえ物質的な酷い強制はしたけど、思想や心情、宗教といった精神的な自由までは奪わなかったはずですがね。 
 てことは、
ヒトラー以上の独裁者?

 「ヒトラーって・・・なんで、そんなものを持ち出すんだね?
 それは話が違うだろう、君・・・」
 
 
 ややうろたえたような感じだったが、直ぐに立ち直ると持ち前の尊大さを見せながら
 
 「私は忙しい。
 キミと、くだらない議論をしているヒマはない!」

 
 と、強い調子で言った。
 
 「自分から呼びつけておいて、よく言えますね・・・」
 
 「なんでそう、イチイチ理屈をこねるのかね・・・もっと、虚心坦懐に人の話を素直に聞けないのか。
 
 言っておくが私は名古屋支店長なのだ。
本来なら、オマエのようなチンピラと話をする立場じゃないんだぞ

なんだって?
 アンタが呼んだから、仕方なく来てやったんじゃないか!
 たかが支店長風情が、偉ぶるのは大概にしてもらいたいわ
 
 と、しばし睨み合いとなった。
 
「そもそもですが・・・いちいちそんな細かい事で気分を悪くするような、そんな程度の人物じゃあ、あのアリガタイ教祖サマもロクなもんじゃないんでは?」

「ウヲッホン」
 
と、支店長はもったいぶった咳を一つして
 
「キミも、イチイチ失礼な男だな。
  一体、君はこの仕事に真面目に取り組もうという気持ちがあるのかね?」

 
「まあ、最初はそのつもりでしたがね・・・正直、三日目くらいから虚しくなって来たというかね。
 みんな胡散臭いとかボロクソに言ってますが、支店長として実態をご存知なのでしょうか?」 
 
この際、開き直って全ての不満をぶちまけてやるのだ! 
  
「とにかくだ・・・キミのような万事に付けて疑い深い不真面目な人間には、このシビアなミッションは到底やり遂げられん、というのが私の結論だ!

本日、この場限りで解雇する!!
以上!!!」
 
というと、相手はテーブルを叩くような勢いで、宣言するかのように立ち上がった。
 
「オレだって、こんなクソ会社は肌に合わんと思っていたところだったし、ちょうどえーわ。
 こんなインチキくさい商売の片棒担がされるのは、こっちからも金輪際お断りさ
 
「インチキくさいとは何だ、貴様!」
 
「実際、インチキそのものだろーが」
 
などと支店長と、あわや掴み合いにならんばかりの激しい口論は続いた
 ;(;(;*;;;;);););ノ゙アーッヒャッヒャッヒャッヒャァー
 

0 件のコメント:

コメントを投稿