2005/07/10

プレイボーイ

  「ねえキミら、誰かと待ち合わせ?」


 「ううん・・・」

 

 照れ笑いするばかりで、どっちとも返事をしない相手にも、委細構わず口説き始めるコージ。


 「うん。ちょっと、お茶でも飲みながら、お話せえへん?」


 「どうする?」


 と、顔見合わせる2人。

 

目の前に次々と立ち現れるナンパ師どもは、さすがに総じてオシャレでルックスも平均以上の連中が多かったが、いつものインチキ臭いダテ眼鏡を外しているマサムネは、それらの誰よりも垢抜けたオトコマエだったから、女にモテることは疑いがなかった。

 

 「大丈夫! オレら、怪しいもんやないから」


 「大学生?」


 「そう、キミたちは?」


 「うちらは、S短大やけど・・・」

 

愛知出身のこっちは『S短大』なる名前を聞いたことはなかったが、後でマサムネに確認したところ、大阪のいわゆる駅弁短大らしかったが、マサムネはそつなく


 「おー、S短大ね。オレらはX大生や」


「えーっ! X大生?

スゴすぎーっ。」

 

とのけぞる2人。私立のボンボン大学ならともかく、よもや天下のX大生がナンパ橋まで繰り出してくるとは想定外だったか (* ̄m ̄)ブッ

 

 「ともかく、そこいら歩きながらお店を探そうや」


 と歩き出すマサムネの後を、しっかりとついてくる2人。


 やはり全国区の知名度を誇る『X大』だから、ましてや関西圏における神通力は、それこそ「神の領域」らしく、当然ながらその辺りはしっかりと心得ているマサムネである。


 「ねえねえ、京都から来たん?」

 

徐々に積極的になってきた女子。


 「オレは元々、こっちの人間やけどな。でも今日はホンマ、サボって来たかいがあったわ」


 とさすがにマサムネはソツがなく、しばらく歯の浮くようなヨイショが続くうち、相手の女学生が徐々に警戒心を解いていくのがわかる。


「こっちの人、口が上手やわ・・・そーやって、いつもナンパしてるんやないの?

ホンマにX大生?」


 という彼女の指摘には、自分も同感だった。それだけマサムネのテクニックは、堂に入ったものなのだ。


 また単に口が上手いばかりでなく、じつこく繰り返すが、眼鏡を外した素顔が相当なオトコマエなのである  ̄_ ̄;) うーん


 それも色白の典型的な優男タイプだけに、これは放っておいてもかなりもてそうだ。現にキャンパスでも、女学生たちが盛んに秋波を送っていたようだった。身長も高く、本人に聞いたところでは177cmとのことだったが、スリムな体型のせいか実際以上に高く180cmくらいに見えた。

 

こうして見ると都会的な洗練された振る舞いといい、天才的な話術といい、どこから見ても女にモテそうなタイプである事は、改めて認めざるを得なかった。

 さて、4人で心斎橋アーケードの喫茶店に入り取り留めのないお喋りをするうち、女のコ2人が連れ立ってトイレに立った。


 「オイ、オマエは、どっちゃがええ?」


 「オレは・・・やっぱり細いコの方がいいかな」


 「じゃあ、オレはポッチャリの方にしよう」


 「しようって・・・どうするつもりなんだ?」


 「とりあえず飲み屋でも連れて行って、ゆっくり口説くに決まっとるやないか」


 「もう、そんなとこまで考えてたのか?」


 「アホ抜かせや・・・茶店でダベっておしまいって事があるかいな。坊ややおまへんで」


 「しかし・・・飲み屋って、勘定は誰が払うんだよ?」


 「そりゃあ、オマエに決まってんやろ。その代わり段取りはぜーんぶひとつのこらず、オレがつけたるさかいな」


 「(Д´)y-~~ちっ
 まったく、どこまでも調子のいいヤローだ」


 「イヤなら無理にとは言わんが・・・オレはナンパくらいはいつでも出来るし、今日はこのまんま手ぶらで帰ってもエーンやがな」


 こうした駆け引きには滅法したたかなコージは、最早こっちが引くに引けないと見透かした上で、敢えてこうした言い方をしていた事はわかったが、ここまで来ては最早どうにもならぬ。


 「仕方ねーな。折角ここまで来たんだし・・・今日だけは、オレが払っておくよ」


  「わりーな。それなりには、用意してきとるんやろ?

まあ、そないに金のかかるタイプじゃないやろから、あんまり使わせんようにするから」


 「しかし、車はどうするんだよ?」


 「なーに・・・帰りは、オレが運転していくから心配いらん。オレはアルコールなんぞ不味いもんは、一滴も飲まへんからな」


 確かに、以前の食堂で友人が評していた通り、どこまでも調子の良い男であるが、それでもどうにも憎めないのが、この男の才能とも言えた。


 そんなこんなで、すっかり調子に乗って酔っ払っている間に、2人女子を相手に段取りを決めてしまっていたのだから、驚くべき抜け目のなさである。


 「高校生時代には、数人の人妻を誑かした事もある」


 と自慢げに語っていただけに、どうやら19歳の小娘辺りはマサムネの手にかかっては、赤子の手を捻るようなものらしい。

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