バッハ初期のオルガン曲。20代の青年バッハが、オルガン音楽に新風を吹き込んだ意趣ある作品だ。
特に前奏曲にペダルのレシタティーヴォ(recitativo=叙唱、朗唱と訳されもするが、オペラ、オラトリオ、カンタータなどの中に置かれるもので、まず歌を用いた、概して大規模な組曲形式の作品の中に現れる一種の曲のこと)にも似た導入をしている点は、視覚的にも強い印象を残す。オルガン曲を両手声部が中心と捉えている聴衆には刺激が強い。
若いバッハに相応しく両手両足の総合的な操作が求められるが、オルガン曲に崇高なハーモニーを求める日本では十分に定着していない。バッハは、この頃に北ドイツ・オルガン楽派の巨匠ディートリヒ・ブクステフーデを訪ねており、技巧的な効果を追い求める作風が反映している。
出典Wikipedia
当代随一のオルガンを擁する名門の聖マリア教会(北独のリューベック)の専属オルガニストだったブクステフーデは絶大な人気を誇る音楽家であったが、バッハは彼の「夕べの音楽(AbendMusik)」の演奏を聴くため遙々370Kmも離れたリューベックへ出かけたのだった。
ニ長調であるが、ピッチを半音程度(A=421Hz)下げるので、変ニ長調の曲想。
「前奏曲とフーガ」と題された作品は10数曲残されているが、その大部分はヴァイマール宮廷でオルガニストを務めていた時代の作品が大部分である。
ライプツィッヒ時代に作曲されたと思われる作品も幾つかあるものの、現在の研究ではそれらの大部分も原型はヴァイマール時代に遡るものが多いと言われる。その様な数ある作品の中で、最も有名で華やかさにあふれた作品が、このBWV532と言える。
冒頭の力強い上行音階は、いかにも若きバッハの精神の高揚がうかがえ、何よりもフーガ部における壮大な4声のフーガが圧倒的である。ペダルの演奏に特に高度なテクニックが要請され、オルガニストとしての自信に満ち溢れている。
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