2005/04/08

レスピーギ『ローマの松』(ローマ三部作)


 

 おのおのに於いて異なる松と場所、時間を彼の得意とした色彩的なオーケストレーションを用いて上手く描写している。

レスピーギは、1926年に自らフィラデルフィア管弦楽団を指揮してこの曲を演奏するにあたり、次のようなプログラムを書いている。

「『ローマの松』では、私は記憶と幻想を呼び起こすために、出発点として自然を用いた。極めて特徴を帯びてローマの風景を支配している何世紀にも渡る樹木は、ローマの生活での主要な事件の証人となっている」

つまり、彼はこの曲で単に松のことを描こうとしたわけではなく、松という自然を通して古代ローマへ眼を向け、ローマの往時の幻影に迫ろうと言う意図を持っていた。そのため、この曲にはグレゴリオ聖歌などの古い教会旋法が好んで使用され、古い時代への郷愁と過去への幻想が効果的に生かされている。

1部 ボルゲーゼ荘の松(伊;I pini di Villa Borghese ;Pines of the Villa Borghese
「ボルジア荘の松の木立の間で子供たちが遊んでいる。彼らは輪になって踊り、兵隊遊びをして行進したり戦争している。夕暮れの燕のように自分たちの叫び声に昂闘し、群をなして行ったり来たりしている。突然、情景は変わり、第二部に曲は入る」
ローマのボルゲーゼ公園の松並木で遊ぶ子供たちの情景をホルンの高らかな響きと、賑やかで派手なオーケストレーションで彩った速い旋律で描いている。 なおボルジア荘の松とする記載を見かけるが、ボルゲーゼ家とボルジア家は別であり誤りである。

2部 カタコンブ付近の松(伊;Pini presso una catacomba ;Pines near a catacomb
「カタコンブの入り口に立っている松の木蔭で、その深い奥底から悲嘆の聖歌が響いてくる。それは、荘厳な賛歌のように大気に漂い、次第に神秘的に消えてゆく」
カタコンブとは古代ローマでの初期キリスト時代の墓のこと。信者たちの悲観と祈りに満ちた歌声が、全オーケストラを駆使して描かれる。

3部 ジャニコロの松(伊;I pini del Gianicolo ;Pines of the Janiculum
「そよ風が大気を揺する。ジャニコロの松が満月の明るい光りに、遠くくっきりと立っている。夜鶯が啼いている」
ジャニコロの丘は、ローマ南西部にある。満月の中に浮かぶ松と幻想的な月光が描かれる。クラリネットのソロが哀しい。

4部 アッピア街道の松(伊;I pini della Via Appia ;Pines of the Appian Way
「アッピア街道の霧深い夜明け。不思議な風景を見守っている離れた松。果てしない足音の静かな休みないリズム。詩人は、過去の栄光の幻想的な姿を浮べる。トランペットが響き、新しく昇る太陽の響きの中で執政官の軍隊がサクラ街道を前進し、カピトレ丘へ勝ち誇って登ってゆく」
古代ローマの進軍道路として使われた石畳の道は今でも残る。ピアニッシモから「軍隊の行進」に伴い徐々に音強を増し、フォルティッシモに至る。舞台上の管弦楽に加え、舞台裏の金管楽器のファンファーレが加わり勇壮に全曲を閉じる。舞台裏の金管楽器は、しばしば客席の脇や後ろや2階席などに置かれ、立体的な音響を響き渡らせることがある。
出典Wikipedia

0 件のコメント:

コメントを投稿