その身に一身に集まる視線、己の一挙手一投足に反応し忠実に動く、44人のシモベ(?)
(うーん、こりゃ辞められん。かいかーん!! (*`▽´*) ウヒョヒョヒョ
しかも悪い事に『A高』学園祭は一般にも開放されていたから、他校の学生やら近所の一般人やら、それなりの見物で人垣が出来ていたこともあって、すっかり舞い上がってしまい、目立ちたい一心でメチャクチャなパフォーマンスを演じてしまった。
しかしバンドの方は、最初から指揮などは当てにしてなかったか、はたまた日頃からの千佳の統率が優れていたのか、素晴らしい演奏を披露してくれた。
そして、運命の結果発表!!
「クラス対抗ブラスバンド大会。優勝は・・・『威風堂々』のA組に決定!!!」
生徒会長タカミネ御曹司の美声が高らかに告げ、リーダー千佳の元に日々特訓を続けて来たメンバーの女学生らは、みな感激の涙に暮れた。
「優勝トルフィーは、オマエが・・・」
「いいよ・・・にゃべ行ってきて」
と千佳に譲られ、タカミネ会長から金色に輝くトルフィーを手渡されたにゃべ。
「御曹司よ、祝福コメントをくれ・・・」
「うむ・・・クラスとしては悔しい。が、学校としては誇らしい演奏だった」
さすがは御曹司!
御曹司から褒められ、すっかりご機嫌となったにゃべ。
「ナカジマよ、総ては上手く纏めてくれたオマエのおかげだ。あの短期間で、みんながあんなに上手くなっているとは、正直まったく驚いたぜ・・・」
と、千佳にトルフィーを手渡すと
「フフフ・・・私も多数決を引っくり返してやるからには、それなりの意地があったからね。実のところ私もアイドルなんかより、こういうのがやりたかったから。まあ、アンタの提案のお蔭かな・・・」
さすがは気の強い彼女らしく、感涙に咽ぶ女学生の輪の中にあって、一人まったく涙を見せない。金色に輝くトルフィーを誇らしげに胸に抱き、大仕事をやり遂げた後の心底満足げな清々しい表情を浮かる千佳は、今の時代なら写メにでも撮りたくなるくらいに輝いていた。
「でも、やっぱり選曲のおかげかな。ポップス系のクラスとは、演奏効果が全然違ってたよね。この曲、とってもいい曲だからみんな好きになったし、好きでなくちゃあんなに続かないよね。アンタが言ってた通り、演奏も凄くやりやすかったし。演奏に関しては、殆どタカシマさんに仕切ってもらったようなもんだったけど、練習の時もみんな見る見る上達していく一体感が実感できて、凄く楽しくてやり甲斐があったよ」
猫のように大きな千佳の特徴的な黒目が、ゾクゾクするほど蠱惑的に見えた。
今だから言うけど、休憩の時なんか
『こっちはもう完璧だけど、唯一の心配はにゃべの指揮だねー』
なんてみんなで、アンタのことを笑ってたんだ・・・」
「バカヤロ。それよか、オレの指揮はナカナカのもんだったろ?」
「そうねえ。まあ今日の指揮は、それなりにサマになってたかな。でも、さっきタカシマさんに訊いたら
『大分、マシになったけど、まだまだ全然トーシロの域だな』
とか言ってよ」
「アイツめ、調子に乗りやがって・・・一発、お見舞いしてやらんと」
と千佳と別れ千春の姿を見つけるや、早速詰め寄った。
「アハハハ。でも、みんなにはそれなりにサマになって見えたのは、一体、誰のお蔭かしら?
最初は、スコアの見方すら知らなかったくせに・・・」
「う・・・まあ、オマエには感謝してるよ。しかし気まぐれとはいえ気になって様子見に来てくれるなんて、オマエも案外いいところがあるじゃねーか」
「私が、気になって様子見だって?
アンタ、アホとちゃう。ここだけの話、あれはナカジマさんから頼まれたのさ。
『どーせ彼は、偉そーな事を言っててもスコアが読めるかどーかも怪しいんだから、悪いけどタカシマさん見て来てくれない?』
ってね」
「クソ、アイツめ!
偉そうなカントクヅラだけでなく、最初から総てを見抜いていやがったか・・・」
「ちょっと!
『偉そうなカントクヅラ』ってのは、なんなの?
向こうで毎日、最後まで残って一番頑張っていたのは、間違いなく彼女だけど。普段は、あれだけ強気を絵に描いたような人が、吹奏楽部に1人で頭を下げに行って合同練習を頼み込んだのも彼女だし、あれがなかったら優勝なんてなかっただろうね。練習後にみんなが帰った後も、チェックリストみたいなのを作って、夜遅くまで細かいチェックをしてたしね。まあ途中からは、ずっと私も一緒だったけど。
彼女、(茶髪のヤンキー風だっただけに)元々クールな人だと思ったし、こういうのにあんなに入れ込むとは思わなかったけど、なんというか意地があったのね。途中で指揮を投げ出そうとした誰かと違ってさ、あんなに芯の強い人はちょっといないよ。ホント、今度ばかりは尊敬したわ」
「うぬぬ・・・」
「だから、ここだけの話、全国大会(声楽コンクール)前の一番大事な時なのに、部活をサボってずっと付きっ切りになっちゃったよ。だって、彼女と一緒に居る時が、一番楽しくて充実感味わえたもん・・・」
まったく意外な事実を聞くに及び
(あんなものは所詮、高校生活の余興の一つに過ぎん・・・)
などと終始醒めていたのは、一人自分だけと思い知らされることに ( ゜ ▽ ゜ ;)エッ!!
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