ブルッフは、ドイツでもっとも高い評価を集めるオラトリオ作曲家として活躍した。その作品は生前盛んに演奏されていたらしいが、1935年から45年までのナチス時代、ユダヤ教信者と見なされた彼の作品は総て上演禁止とされた。そのため戦後60年を経た今も、ヴァイオリン協奏曲とスコットランド幻想曲、そしてコル・ニドライといった、僅かの作品が知られるに留まってしまった。まことに、独裁者の愚かさこそは恨めしい。
ただしヴァイオリニストにとって、この協奏曲はある種の思い入れのある作品らしい。その理由はヴァイオリンのレッスンを始めると、必ずと言っていいほど採り上げるのがこの協奏曲であるためで、発表会などでは一度は演奏した経験を持っているからと言われる。ただし、プロのコンサートで演奏される機会は決して多くはない。
ロマン派の協奏曲らしく、メランコリックでありながらゴージャスな雰囲気も漂い、ヴァイオリン協奏曲の「女王」と称されるメンデルスゾーンの協奏曲と比べても、殆ど遜色はない完成度と目される。
緩やかな第2楽章は、魅惑的な旋律で特に名高い。冒頭、フルートによって美しいメロディが歌われた後、魅惑的なヴァイオリンの独奏によってメロディが受け継がれる。3つの美しいメロディを組み合わせた、歌に溢れた楽章である。
深く豊かな情感に覆われ、息の長い優美なフレーズにいつまでも浸っていたくなるような穏やかな美しさと、中間部での感情の高ぶりが魅力的なアクセントを齎す。この協奏曲で、一番の聴きどころといえる。
出典http://www.yung.jp/yungdb/mobile.php
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