引っ越しpart2

さて、ここまでの条件を書いた紙を見せると、担当者は一様に首を捻って 　

「これだけの条件のところは、ちょっとないですねー。非常に難しい希望ですよ、これは・・・ちなみにご予算はいかほどで・・・？」

「一応、10万以内で考えているけど、良いところなら多少アシが出てもいいが・・・」

　家賃以上に気になっていたのは初期費用の方で、大抵は敷金と礼金が2か月分、仲介手数料が1か月分と翌月家賃を含めて家賃の6か月分が相場だから、家賃が10万とすれば初期費用はおおよそ60万程度となる計算だ。

「出来れば、このバカ高い初期費用を抑えたいんだけどね。敷金・礼金合わせて2ヶ月とか1ヶ月とか。ゼロなら言う事ないけど曰くありげなのは困るし・・・まあ、正真正銘のゼロなら、家賃は11万とか12万でもいいよ」

「そのくらいの家賃が出るのなら、該当する物件があるかもしれませんが・・・しかし初期費用イチイチは正直、少ない・・というか殆どないのが現状ですが・・・」 　

と、これもどこも似たり寄ったりの返答である。いずれにせよ、内見は土日しか出来ないから、無駄を省くために平日のうちにメールで物件の資料を送ってもらい、その中から予めピックアップをしておいて良さそうなものだけ見て回る事にしたのだが、それでも何週かに渡って複数の仲介業者の紹介で、都合30物件くらいは見て回ったろうか。

どの物件にしろ、必ずどこか気に入らないところはあるものだから、沢山見る毎に

（この部分は、前のところの方が良かったな・・・）

と次第にいいとこ取りばかりして、自分の頭の中でドンドンと理想の物件が出来上がってしまい、現実からは益々遠ざかっていくという悪循環に陥ってしまった。

「そうやってもう、2年以上も探し続けているお客さんもいらっしゃいますよ・・・」

と訊いて

（それはいかん・・・このままでは、オレもドツボに嵌るぞ・・・）

と戒めかけた時であった。声をかけていた幾つかの仲介業者の中には、その時に住んでいたマンスリーの管理会社も含まれていたが

「今、お住まいの同じマンションの別の部屋で、イチイチという物件がありますが・・・」

訊けば今と同じ部屋のタイプで、一つ上の階になる。今の物件であれば前に触れた必要条件は、日当たりがそれほど良いというほどではない事を除けば総て満たしていたし、希望条件の方も「角部屋」以外はほぼ網羅しているから文句はない。

以下のような具合に・・・

《該当物件》
●Must条件

・初期費用＝敷1・礼1

・鉄筋コンクリート建築

・3階以上

・ベランダあり

・エアコン付き

・室内洗濯機置き場（ドア付き）

・南向き

・間取り1Ｋ

・大型クローゼット

・バス・トイレ別

・自転車通勤可能圏内

・ペット不可

●Want条件

・屋内鍵付き自転車置き場あり（2年分前払いで1万2000円）

・光ファイバー

・BS

・CATV（個別契約）

・スカパー（個別契約）

・分譲マンション

・保証人不要

・システムバス（浴室乾燥機・浴室暖房・涼風・自動湯張りお知らせ機能付き・ゆらぎのシャワー）

　家賃は管理費込みで約10万だから、他の沢山見た物件と比べた場合には、遥かにお値打ち感がある。欲を言えば、もう少し部屋が広ければ言う事はなかったが・・・最も気に入っているのは、なんと言ってもシステムバスである。追い焚き機能はないものの、1℃単位で湯の温度設定が出来「自動湯張り」という機能が付いていて、音声で知らせてくれる。「浴室乾燥機」も付いているから、天気の悪い日はここで洗濯物を乾かす事が出来るのも便利である。寒い冬は「浴室暖房」が重宝だし、暑い夏は「涼風」機能を使えば、快適な風が送られてくるのである。これらは総て、タイマーで制御も出来る仕組みになっている。

　

また「バス・トイレ別」の物件だから「独立洗面台」は当然と言えば当然ではあるが「洗面化粧台」と言って、床屋のような大型のミラーキャビネットがついている。洗面ボウルも大きなサイズで、シャワーヘッドが床屋のそれのように蛇腹で伸びる収納式になっていて、ここでも洗髪が出来るのは便利だ（ただし、椅子は便座になるが・・・）。ミラーキャビネットの照明は曇り止めも兼ねており、ヒーターの熱で鏡の曇りがアッと言う間に取れていく仕組みである。

usenの光ファイバーは普段はBBRを入れているため30～40MB程度だが、引っ越し直後に試験的に直結で「gooスピードテスト」を行った時は、99.6MBという驚異的なスピードを記録した（16000人中、11番目）

システムキッチンもスグレモノのらしいが、こちらの方は殆ど湯を沸かす程度しか使わないから、宝の持ち腐れと言えるが。2001年築と比較的築浅物件でもあり、これだけの内容からして家賃が安いのは、駅から15分程度と少し離れているためであろう。