2005/09/03

野生児・ミスター(偉大なる奇人変人・ミスターpart5)

6.泡風呂事件
合宿風呂での話。何人かの選手が風呂に入っている時に、監督のミスターが現れた。

(あれ?  監督が・・・?)

と、湯船でリラックスしていた選手らが、訝しげな面持ちでミスターを見つめていると、やおら体を泡立てて洗い出したミスター。濃い胸毛に覆われた体が、見る見る泡に包まれていくと見るや、突如そのまま湯船の方に向かって来たミスターは、全身泡だらけのままドボン! と飛び込んでしまったから堪まらない。湯船は、一瞬にして泡だらけとなったことは言うまでもない。

この予期しないトンデモな行為に、呆然として声も出ぬ選手たちを尻目に、一人満足したミスターは

「あー、サッパリしたー。じゃ、お先にー!」

のセリフを残すや、いつものセカセカした足取りで風呂から上がっていったのでした。

7.野村事件
南海時代の野村氏といえば、言うまでもなく球界を代表するキャッチャーでありました。初めてオールスター戦に選ばれた野村氏は

「セリーグに勝つためには、最低でもONのうちのどちらか一人を徹底的に封じ込める必要がある」

と考えたそうです。そこで一計を案じた野村氏は、まず3番の王選手が打席に入った時に

「あれ? 調子のよい時と、違うスタンスをしとるなー」

とかなんとかブツクサと独り言を訊かせると、打席でソワソワしだした王選手を見て更に野村氏はゴチャゴチャとデタラメを吹き込んだ結果、王選手はすっかり調子を狂わせてしまったそうです。これに味を占めた野村氏は、続いて4番のミスターが登場して来るや、再度

「あれ・・・? 調子のよい時と違うスタンスをしとるなー」

と同じセリフでカマをかけましたが、どこ吹く風のミスターからは

「いやー、ノムさん・・・今日はいい天気ですねー」

と、まったくピントの外れた応えが還って来るばかりでした。しつこい野村氏は、さらに暗示にかけようと色々とデタラメを並べると

「ノムさん、後ろでゴチャゴチャと煩いですよー。ちょっと静かにしててくださいよー。ブッ!」 

と、オナラをかまされたのでした。

(アカン!  コイツは人の話をまったく訊いとらんわ・・・)

かくて、真面目な性格で暗示に掛かり易いと踏まれた王選手は、野村捕手時代のオールスターは1割台と徹底的に封じ込められましたが、なにを吹き込んでも暖簾に腕押しのお祭り男ミスターは、いつに変わらず三割以上の高打率をキープし続けたのでした。

8.
指導法
ゴジラ松井が星稜高から鳴り物入りで巨人に入団し、当時監督のミスターは大いに期待をかけましたが、しばらくは思ったほどには活躍してくれませんでした。打撃コーチだけでは足らず、ミスターの依頼を受けた大物OBが入れ替わりゴジラの指導にやって来ましたが、頑固者の松井はたとえ相手が3000本安打で「安打製造機」と称された張本であろうと、自らの信ずる理論以外は一切受け付けず、並み居るOBたちの手を焼かせたと言われたものです。

壁にぶつかりもがいている松井を見かねて、業を煮やしたミスターが遂に自ら直々に指導に乗り出します。それまでに登場して来た数多のOBらの指導に関して

「細かい事をゴチャゴチャと言い過ぎて、自分には合わない」

といったような趣旨の事を親しい人に漏らしていたと言われた松井ですが、そこへ現れたミスターの指導には、逆の意味で面喰ってしまったらしい。

「いいか、松井よ! バッティングなんてものは、難しく考えちゃダメなんだ。  バッティングの真髄というものはだな・・・スーッと飛んで来た玉をパーンと打てばいいんだ、パーンと。スーッと来たらバーン! わかるな? これだよ、これ・・・何も難しい事はないだろ!」

細かい点に拘り過ぎるという、それまでのコーチの指導が気にそまなかった松井も、この単純明快すぎるミスター指導には

「まったく理解できませんでした・・・」とア然ボー然。

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