入れ替わり立ち代わりでX大のラウンジに現れてくる「A女子大軍団」。この日も、例によってケーコ、マドカ、ヒロミのトリオが参上していた。
で、これまた例によってホソノ、ニシモトとバカ話に興じている時、A女子大トリオから「リナ」という名前が繰り返されるに及び
「そのリナちゅーんは、誰やねん?」
と、目ざといホソノから突っ込みが入ったことは、言うを俟たない。
「リナは、こん近くのCaféでバイトしとるから、行とはみる?
可愛い子やで」
というケーコの口車に乗せられ、リナ嬢のバイト先のCaféへと繰り出すことに。
「かわいい子」と聞いては、捨て置けないのが我らオトコどもの哀しいサガなのである。
「本当におるんかい?
上手いこと言って、またケーキでも奢らせようとしとるんやねーんか?」(ホソノ)
「うつけ者が!
あんたらがごとき貧乏人にたかるうちらやいわ。見損なっちゃ困るわな」
とケーコが切り返す。
「ま ごちゃごちゃ云わんと、参ればわかるこっちゃ」
と、ニシモトはさすがに如才がない。
「こんだけ期待させといて、いざかわいーなかったら、これよりおまえらのゆーことは信用せんて」(ホソノ)
「その『おまえら』っちゅーのは、えー加減やめとき!
ま 実物みりゃ納得やがな」
と自信たっぷりに笑うケーコに水を差すように
「そやな。かいらしい子ちゅーんは、まあ観るアンタらん主観でしかあらへんから、過剰に期待へん方がえーかもな・・・」
とマドカ。
さすがは「芸術系」だけに、この時は「顔に似合わず言うことがきつい」と思ったが、実際は悪気はなく、単に正直なだけらしい。当然ながら、ケーコとヒロミは慣れているのか平然としたものだ。
ともあれ、目指すCaféに到着。とはいっても、X大キャンパスとは目と鼻の先と言う近距離の有名チェーンのCaféだったが、普段は格安のキャンパス内Caféで過ごしている我がトリオからすれば
「ほー、こんなとこにCaféがあったんや・・・」
というのが共通の認識だった。
で、入るや否や
「いらっしゃーい!」
という、いかにも元気そうな甲高い声が響くと、AJトリオは真っ先にカウンターへと進んでいく。
「リナ―!
X大生、連れて来やはったよー」
と言うケーコの声に振り向いたその女は・・・・
確かに「かわいい子」には違いない。身長150cmにも満たない小柄で童顔の女子が、エプロン姿でカウンターに陣取っていた。
「こんコら、こへんな見かけによらず天下んX大生なんよ!」
それはねーだろうという、しかしケーコらしい紹介の仕方だ。
「へー、X大生って・・・スゲーやん!
まあ、うちとこはこんな場所がらや、X大生もよー来てくれはるけどな」
と、さすがは如才なく応じたリナ嬢。
「リナんこと話どしたら、是非ひと目観たいゆーから連れて来やはったんよ」
と、ヒロミが適当なことを言っている。
「いや、わいらはケーコに無理矢理拉致されてきたんややけどな・・・」
と言うホソノに
「まあまあ、どないぞ・・・」
と、さすがにリナは愛想が良いから、第一印象からして圧倒的な好感度だ。
「ああ、アンタもおったん」
と、リナ嬢はなぜかマドカを見つけると、一段と気易く言った。
「知り合い?」
「おん、幼馴染やわ~」
聞けば2人は家も近所で中学、高校が一緒だったということで、Caféではその話で盛り上がった。
「うちら、小学校から大学まで、ずーっと一緒やからねー」
もっともA女子大での学部は異なり、芸術系のマドカとは違いリナは「食物栄養」学部だった。
「今度、野菜ソムリエの資格を取るんや」
と意気軒高なリナだが、彼女の実家はといえば下鴨辺りにある老舗の寿司屋ということだった。
なるほど。実家がその辺りということは、A女子大からの帰宅の道筋にX大キャンパス前にあるバイト先のCafeが収まるのか。
「寿司屋の娘が野菜ソムリエって・・・なんや、それ?」
「だって寿司屋なんて、もう時代遅れやん」
「んなことない!
京都の老舗のお寿司屋さんって、興味あるわ。
今度、みんなで食べに行かへん?」
と、早速食いしん坊のケーコが提案。
話は盛り上がり、ついさっきのX大でのマドカによる、我がトリオの似顔絵の腕に言及すると
「あー、こん子はちっちゃい時からメッチャ器用やったからな。写生大会とか、コンクールで入賞の常連やったわな」
というリナの証言はむべなるかな。
「マドカ、さっきの傑作を見せたれ!」
というホソノの煽りにも
「あー、こん子の描く絵やったら、観んでも想像つくよ」
といういい方から、よほど親しいに違いない。
それにしても、このリナ嬢、身長は150cmにも満たず、いわゆる「ロリ系」を絵に描いたような幼児的な体型も「巨漢」のケーコとは好対照な印象だが、その高い声でまくしたてる話術はなかなかのもので、トリオの中で最も雄弁なホソノとも丁々発止のやりとりを演じるなど、なかなか侮れない。
「バイトが暇な時に、私もX大に行ってえーんかな?」
というリナ。
これまでのA女子大の顔ぶれと言えば、ケーコ、ヒロミ、マドカが主流だから、この中では最もチャーミングなリナの来訪は、もちろん大歓迎だ。実家は寿司屋という家庭環境から客慣れしているせいかコミュ力は高そうで、初対面の我々に対しても軽口を聞いてくるが、決してケーコのような嫌味がなくマドカと同様サッパリした性質も好感が持てた。
そんなキャラだけに、コーヒー1杯でたっぷり話し込んでしまったが
「あんまり長居されへんとオーナーの期限悪うなるから、適当なとこで切り上げてな。こん次はうちがX大に行くから、続きはほんでしよ」
とウィンクするリナを観るにつけ
(A女子大ってのは、まったくロクなのがいないと思っていたが、案外いい子もいるじゃないか・・・)
などと勝手に納得してしまった ( ´艸`)
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