技術部隊（Gシリーズ第4章）前編

　どこの職場にも凄いヤツが一人、二人はいるものだが、今の現場にも図抜けた技術力の持ち主がいた。

その人物の話の前に、まずこの職場で求められるスキルとしては

（1）業界（PKI）の専門知識
（2）インフラ全般の知識（ネットワーク及びセキュリティ技術）
（3）unixサーバ系の知識（Solaris、Linux、hp）
（4）Windowsサーバ系の知識（2000及びNT）
（5）PC全般に関する知識

といったところである。

このうち（1）に関しては、元々が特殊な業界であるから最初は誰もがゼロからのスタートであり、徐々に経験を積んでいくため年齢に関係なく、長くいる者ほど相対的にスキルが高くなる。最も古株であるリーダーのＮ氏と現場責任者のＴ氏は、構築から携わりもう5年くらいになるから、業界では知られた存在だ（ただしＫ氏の方は、構築が終わった時点から、最近まで本社に引き上げていた）

さらに、現場キャリア4年以上の総責任者のＨ氏（役所からの出向者）と、技術リーダー格のＲ氏、24歳のＫ君らが続く。当然の事ながら、この時点でまだ1年程度のワタクシは、勉強もサッパリしていないし、この方面ではまだまだひよっこも同然であった。

（2）のNW技術は、皆が最も知識のない分野といえるが、Cisco認定及びMicrosoftプロフェッショナルたるワタクシの専門分野である。当初はNW管理者兼セキュリティ担当は、ワタクシの前任者が抜けた時点で技術リーダーのＲ氏が一人で仕切っていたが、出向半年後からワタクシが加わり元通りの二人体制となった。他に、こそこレベルが高いのはＮ氏、Ｔ氏、Ｈ氏ら辺りか。

（3）に関しては、ともにunix開発歴10年以上のリーダー・Ｎ氏と技術リーダー・Ｒ氏の独壇場であり、さらに開発畑出身のＨ氏とＣ君もここへ来る前はＣ言語などで、ガリガリとプログラムを書いていたらしい。最年長のＴ氏は、汎用機時代からフォートランやベーシックを書いていたプログラマーであり、javaにもそこそこ詳しかった。ちなみにワタクシ自身、unixは得意ではない。

（4）に関しては、クライアントのWindowsは誰しも使っては来ているが、サーバ系の知識を持っているとなると、案外いないものだ。元々サーバ系はunixが殆どの環境なので、これに関するオーソリティはいなかったが、そこそこ詳しいのはMicrosoft認定プロフェッショナルのワタクシとＲ氏、次いでMCP三つを立て続けに取得したＹ君、Ｔ氏、Ｎ氏、Ｃ君、Ｔ君、といったところである。

（5）に関しては、自宅に幾つものサーバを立ててLANを組んでいるＲ氏がMS-DOS、Win3.1からの圧倒的なキャリアと知識を持ち、続いてサポートデスクを経験していたＫ君、またキャリアの長いＴ氏らと続き、ワタクシとＣ君、Ｎ氏、Ｙ君らもそこそこというレベルだった。

　さらに頭の良さ、というか論理的思考と文章力を含めたプレゼンテーションスキルから見た地頭では、Ｎ氏とＲ氏を頂点にＴ氏、Ｃ君、Ｈ氏らが抜きん出ていた。

以上を纏めると、以下のようになる。

（1）業界の専門知識・・・Ｎ氏、Ｈ氏、Ｔ氏、Ｒ氏、Ｋ君、Ｃ君
（2）インフラ全般（ネットワーク及びセキュリティ技術）・・・Ｒ氏、にゃべ、Ｎ氏、Ｔ氏、Ｈ氏
（3）unix（Solaris、Linux、ＨＰ）・・・Ｎ氏、Ｒ氏、Ｃ君、Ｈ氏、Ｔ氏
（4）Windowsサーバ系・・・Ｒ氏、にゃべ、Ｙ君、Ｔ氏、Ｎ氏、Ｈ氏
（5）PC全般に関する知識・・・Ｒ氏、Ｎ氏、Ｔ氏、Ｃ君、にゃべ、Ｈ氏、Ｙ君 （6）地頭とプレゼン能力・・・にゃべ、Ｎ氏、Ｒ氏、Ｔ氏、Ｈ氏、Ｃ君、Ｋ君

このように現場の10数人のうち、全般的にレベルの高いのは総責任者のＨ氏（30代半ば＝某省庁から出向）、現場責任者のＴ氏（40代後半＝Ｎ社マネージャー＝出向）、リーダーＮ氏（40代前半＝Ｎ直系会社主任＝出向）、技術リーダーＲ氏（30代後半＝Ｎ系列会社から出向）、にゃべ（表向きはＮ氏と同じＮ直系会社から出向）、Ｃ君（30代前半＝某セキュリティ会社から出向）の6人である。

このうちＣ君は、なぜか技術部門ではなく業務部門に配属されており、また総責任者のＨ氏はクライアントである役所との窓口となっており、技術に携わっている暇はあまりなかった。現場責任者のＴ氏も基本的には管理する立場だから、実質的に現場の技術部門を指揮しているのは、リーダーＮ氏と技術リーダー格のＲ氏である。

ともに、この現場に出向して4年から5年という二人だが、最近になってＮ氏が半分管理者寄りのチーフにシフトされた事で、押しもアクも最も強い強いＲ氏がリーダーシップを取り、代わってインフラの管理とセキュリティ担当を任されそうになっているのが、誰あろうワタクシであった。

　技術部門には、ワタクシよりも古株でキャリア2年、3年以上という人物は何人かいたが、年齢的に若かったり（20代前半）、インフラ管理を任せられるだけのＮＷ全般のスキルがそれほど高くもなかったりで、僅か現場経験半年そこそこながら、Cisco認定＆Microsoft認定プロフェッショナルであり、前の現場でその方面で経験のあるワタクシに、幸か不幸か白羽の矢が立ったわけだ。

技術リーダーのＲ氏とは、当初から隣り合わせの席で最初に

「ここの構成に関しては、オレの方が経験が長い分だけ知ってるから、わからん事があったら何でも訊いてくれ・・・」

と言っていたものの、なぜかワタクシが質問をすると、いつも喧嘩腰の口調だった。