2004/11/07

竹馬の友(高校生図鑑part10)

 学生生活を通じ、最も多くの影響を受けた相手といえば、この男に尽きる。 ムラカミとの出会いは、実に保育園時代にまで遡るのだから、かなりの歴史だ。 

にゃべもムラカミも同じ4年保育だから、理論的には3歳の時から早くも毎日顔を合わせていた事になるが、さすがにその頃の記憶というものは綺麗サッパリと消えてしまった。記憶にある最初のムラカミは、小学校1年の時だ。入学早々に行われた知能テストの数値が異常に高かったため、教師らをアッと言わせ、また50m走でも皆が910秒台をヒイコラ言いながら駆け抜ける中、悠々「8.2」をマークし、早くも「神童」の名を欲しいままにしていた、にゃべ。

こうして幼い優越感に浸っていた時に、算数の計算では常ににゃべに続く2.3番手に付けていたのが、悪友トリオを形成したマサとムラカミであった。さらにこのムラカミの場合は、50m走でも8.2秒のにゃべに唯一肉薄する「8.3」秒(マサは9.0秒くらいだった)をマークし

「ムム・・・アイツめ・・・なかなか手ごわいヤツ・・・」

と、早くもにゃべが注目することとなった、唯一の幼いライバルであった。

その後、成長するに従いメッキが剥がれていったマサなどを尻目に、このムラカミだけはあらゆる点で、なにをやってもにゃべと遜色ない高い能力を発揮し続けた。そしてまた、幸運にも互いの家が歩いて僅か5分という近所であったことも幸いし、必然的に一緒に下校するのが当たり前になっていった(遅刻常習のにゃべだから、登校が一緒になることはありえなかったがw)

その後も、ムラカミとの良好な関係は続く。小学校の6年間で、実に4度も同じクラスになる幸運にも恵まれたし、卒業時にはともに私立『東海中学』に進学を奨められた経緯なども、益々連帯感を強めるのに拍車をかけたかもしれない。

幸いにも、どちらか一方が『東海』へ進学することもなく、エスカレーター式に『B中』へ進学し、引き続き2人の好関係が続く。幼い頃は、人一倍ワガママだったにゃべだが、お互い何事も包み隠さぬ真の親友関係が成立していたのは、ひとえにこのムラカミのパーソナリティに拠るところが、大きかったのであろう。

 このムラカミこそは、実に寛大かつ融通無碍な男である。それだけに、多少の言い争いくらいはあったものの、真剣にケンカをしたような記憶も殆んどない。 振り返ってみれば、常に彼には巧くはぐらかされて来たイメージだった。

サッパリ勉強というものをしなかったにゃべと、それよりは幾分はマシとはいえ、あまり熱心に勉強している様子のない趣味の男のムラカミだから、中学ではさすがに2人とも成績が落ちた。とはいえ、元々A市辺りの田舎では抜きん出た頭脳を持った2人だったけに、それでもトップクラスを維持したまま、余裕で『A高』へ推薦入学となる。

中学時代までは、にゃべ、ムラカミ、香を含めた3人だけは例外的に優れた存在だと己惚れていたものの、天才ヒムロの転入に始まり『東海』受験時に受けた「名古屋ショック!」、さらには『A高』で目の当たりにした何人もの「本物の逸材」を見るに及び、このころにはすっかり

(オレは、天才などではなかった!)

と、ようやく悟っていた時期である。そんなタイミングで、ムラカミと同じクラスとなったのは中3以来2年ぶりだった。これまでとは違い、周囲に知らない顔ぶればかりが並んでいるだけに、ムラカミの顔を見た途端に思いもよらず、猛烈な懐かしさが込み上げて来たものだった。

これは、ムラカミの方でも同じだったらしく

「オー、ムラよ!
何だか2年とは思えんくらい、懐かしい感じがするぜ」

と言うと

「よー、にゃべ、久しぶりだなー。高校でもまた、一緒になるとはなー」

あのいつもクールな友にしては珍しく、心底懐かしく嬉しそうに大きな目を輝かせていたあの表情が、思い起こされる。

(やはり、ここへ来て正解だった・・・こういう友こそは、二人といない得難い存在だろうからな・・・)

と改めて友人の有り難味というものが、肌身に染みたものである。

あの「名古屋ショック」は、神童にゃべにとっては忌まわしいトラウマとなった出来事ではあったが、どの教師の雄弁な言葉よりも身をもって「世間」というものを肌身に染み込ませてくれた。そういう意味では、或いは得がたい体験だったのかもしれない。

そして、今やもっと身近な『A高』内にも、ビックリするような天才やらまだまだ隠れていそうな逸材がゴロゴロいるのを目にした事で、ここでもまた世間の広さを身をもって体験する事になった。

こうした様々な経過を経て、久しぶりに再開したムラカミには

「オウオウ!
井の中の蛙が、大海に出たような顔しとるじゃねーか。あれ(名古屋ショック)以来、オマエも世間を知ったようだな (≧∇≦)ブァッハハ!」

などと冷やかされることに。この男は、やはり総てお見通しだった。

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