酒を呑んだ後に、ラーメンが食べたくなるのは何故だろう。居酒屋などへ呑みに行くと最初は適当な単品料理を食べるが、大体においてある程度おなかが一杯になると、ひたすら呑む事になる。アルコールが体中を駆け巡り心地良い酔いが廻ってくると、ついつい普段以上に会話に熱がこもるせいか、長居をしたり何件かをハシゴをしている間に、次第にまた腹が減って来る。しかし、なんとなく今更食べるのも面倒な感じがしてきて、お開きになった後でやけに空腹を感じるという事がしばしばあり、考えてみれば殆んど大したものは食べてなかったのだと気付いたりする。そんな時、帰り道に屋台ラーメンなどが目に入ると自然と足が向いてしまうもので、あの湯気の立ち上る情景と独特のだしの匂いに猛烈に食欲をそそられるのだ。
同好の志が多いと見え、狭い屋台狭しと先客のサラリーマン風オジサンやニーちゃんらが旨そうにラーメンを啜っているのを見ると、一層腹が鳴ってくる。
真昼間のお天道様の下で見るなら、恐らくは薄汚い侘しいようなあんなショボクれたジーサマの曳く屋台などは、たとえタダでも近寄らないような気もするが、あれこそは「闇のマジック」とでも言うべきか。不思議と、ついつい引き寄せられてしまうのである。そしてこれがまた何故か、例外なく非常に旨く感じるのだから不思議なものだ。
ワタクシなども、会席(懐石)やコース料理などと畏まったものよりは、屋台ラーメンの類を遥かに好むタイプだが、かつてこんな話を訊いたことがある。
ある大食漢が、何かの事情で奥さんと懐石料理に招待される事になった。ところが、元来がさつで「コース料理」などとは一切縁のあろうはずはなく、奥さんからはかねがね
「意地汚い犬食いはやめなさい!」
などと扱き下ろされていたこの御仁は
「オレは懐石なんてもんなら、カツ丼か天丼の方がよっぽどえーがー」
とブツクサと文句を垂れていたそうな。そして、案の定
「食べとる時に、後ろにジーっと立って監視されとるみてーなのがやだわー。
それにちょこっとずつしか持ってこーへんし、量も少な過ぎてちーとも喰った気がせーへんかったてー」
と、わざわざ「口直し」にと、嫌がる奥方を連れてチャーシューメンを食べに行ったとか。まあその気持ちは、満更理解出来なくもないか ( ̄m ̄*)ブブッ
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