2005/01/26

復帰(反乱シリーズpart7)

冬休みが明けて数日後、久々の再登校となった、にゃべ。努めてさりげない様子を装っての登校だったが

 

「オオー!!w(*o*) 

にゃべが来やがったぞ~~~~~!」

 

と、唐突の珍客(?)のお出ましに、早速クラス中にどよめきが起こったのは無理もない。

 

「オー、にゃべよー!

オマエ、生きとったんかー?」

 

「一体、1ヶ月近くも、どこほっつき歩いてたんだー?」

 

「オマエが病気だったなんて話は、誰一人信じとらんかったぞー」

 

「オレたちゃ、ブタ小屋に押し込められてつまらん日常の繰り返しというのに、オマエはえー身分だよなー」

 

などとマチャら男子学生らから、口々に罵られる。

 

険悪なムードは露ほどもなく、判で捺したようにどこにも笑顔の花が咲き乱れていたのが、なにより嬉しいことだった。当然ながら、何をおいても真っ先に訪れなければならないのが、畏友ムラカミである。

 

「よー、ムラ!

色々、心配かけてすまんかったな・・・」

 

と声をかけると

 

「おー、どーした?

オレの見立てでは、もう戻って来んと思っとったが・・・バイト、クビにでもなったんかい?」

 

と、あのギョロ目でほんの一瞬だけ、ジッと覗きこまれた。この時ばかりは目を逸らしていたが、これだけの「以心伝心」の間柄だけに、僅か束の間ではあったものの、その「本気度」を見抜こうと言う鋭い視線を感じた。

 

「えらい迷惑したのは確かだが、別に心配などしとらんかったから、まあ気にすんな・・・」

 

と憎まれ口を叩くと、なぜか逃げるように去っていった。

 

昼休み、食堂で一人弁当を食べていたにゃべの席に、男子どもが何人も集まってくる。その一人には、演劇部の新部長となったひょうきん者のフクザワの姿もあった。

 

「先生!

ホントのところ、なにしとったんか、エー加減、白状せーや!」

 

と例によって、周囲の目を存分に意識したポーズたっぷりの追及だったが

 

「だから、病気だったって言ってんだろ。しつこいな、オマエラも・・・軽い肺炎のようなのに罹ってな」

 

「あほ!

肺炎なら、もっとやつれとるわ!」

 

「だからもう、すっかり良くなったんじゃないか」

 

誰も信じてないのは承知で、あくまで病気で押し通す肚を決め込んむしかない。

 

当然ながら放課後には、サッカー部にも顔を出した。3年生は既に退部していたので、ここで油を絞られることがなかったのは救いだったが、サッカー部員にまた同じ説明をしなければならないところが辛いところだ。

 

キャプテンのドージマの巨躯が、やけに懐かしくも眩しい。軽く詫びを言うと

 

「まあ、特に言うことはねーが・・・」

 

と拍子抜けするほどあっさりしたものだったが、口の悪いゴトーらからは

 

「キミは誰?

見かけん顔だが、転校生かな?

サッカーがやりたきゃ、入部届けを出さんといかんよ」

 

などと、1週間くらいはしつこく皮肉を噛まされ続けた (*ΦΦ*)ニシシシシ

 

ゴトーとしては、小学生時代に

「オマエって、誰だっけ?」

とやられたあのトラウマが強烈だけに、そのしっぺ返しのつもりは明らかだったが、ここまで徹底した執拗さそのものが、実はゴトーの心配がいかに大きかったかの裏返しだと思えば、それほど腹も立たない。

 

「転校生のムトーでーす! (*▽´*) ウヒョヒョヒョ」

 

などとふざけてやると

 

「オー!  キミ、ムトー君か!

オレはゴトーだよ!」

 

と、大うけしていたが ヾ( >)ノ彡

 

副キャプテンのタケには

 

「ヒロはあんなヤツだから、なんも言わんかったろうが・・・オレは、メチャムカついたぜ! このツケは絶対に返せよ」

 

と凄まれた。

 

(ま、身から出たサビだから、しばらくは仕方がない・・・)

 

と、早速練習を始める。

 

バイト先で、どうにも払拭出来なかった違和感が、サッカーボールを追いかけて走る爽快感に変わって行く。

 

(やっぱりここが、オレには一番居心地の良い場所なんだ・・・)

 

と、改めてしみじみと実感した。

 

やがて日もとっぷりと暮れてクラブの練習が終わり、みな帰路に着いたが夜のグラウンドを一人、黙々とトレーニングに励むドージマの姿があった。そのストイックなまでに孤独な背中は、無言のうちにも何かを訴えているように見える。

 

(にゃべよ、甘ったれんじゃねーぞ!)

 

というように・・・

 

本来なら最も怒っていい立場の男だが、何ひとつ文句を言わない大きな背中を見ているうちに、急激に申し訳ない気持ちに突き上げられ、知らぬ間に

 

「ヒロよ・・・色々と迷惑をかけたな・・・」

 

と、声を掛けていた。

 

「座るか・・・」

 

と、向かい合って腰を下ろす。

 

「練習の邪魔したかな?」

 

「いや、そろそろ上がろうと思ってたとこよ・・・」

 

「なんつーか、すまんかったな・・・」

 

改めて詫びを入れると、ドージマは

 

「オマエの辞書にも「反省」という言葉があったんだな。むしろ、そっちの方に驚いたぜ・・・」

 

と、目を剝いた。

 

「で・・・問題解決ってことでえーんかいな?」

 

「うん、まあ・・・色々、思うところがあってな・・・所詮、現実逃避には違いねーんだろうけどな」

 

「うむ・・・オマエの考えとか行動は深淵すぎて、オレにはサッパリ理解できんが・・・要するに聞きたいことは、問題が解決したのかどうかだけよ」

 

「うん・・・それはだな・・・なんというか難しい問題なんだが・・・」

 

と説明しようとすると、ドージマがグローブのような大きな手で制した。

 

「まあ、えーってことよ。オマエの言葉など、元から信用しとらん。答えは、行動あるのみ・・・」

 

実際、常にそうしてきた男が言うだけに、腹にずしりと響くような説得力がある。

 

「うむ・・・」

 

「じゃあ、話はおしまいだ」

 

というと、山のような巨体がむっくりと立ち上がった。

 

この機に、この「大人の男」とじっくり腹を割った話をしたかったが、その時、背後から聞き覚えの独特の張りのあるソプラノが・・・

 

「にゃべー!

ちょーご無沙汰!」

 

そこには夜空をバックに、千春の大柄なシルエットが浮かんでいる。その背後からは、さらにひと回り長身のスリムな女学生の姿が、こちらへ向かって来るところだった。

 

「じゃ、オレは先に帰るぜ・・・」

 

「オイ、待てよ・・・」

 

と止める間もなく、気を利かせたか(?)ドージマが疾風のように去っていった・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿