2005/01/09

高校サッカー選手権地区大会part1

  年末年始のテレビなどでお馴染みの「全国高校サッカー選手権

 

サッカー少年だった中学までは勿論、毎年テレビで観ていたし

 

「自分が高校選手権に出るのは当然」

 

などと、漠然と考えていた。が、高校に入り、最初の夏に行われたインターハイの県大会では、トーナメント緒戦で強豪私立校に、思わぬ力の差を見せ付けられたことで

 

「県内だけでも、あのレベルの強豪が何校もあるとは・・・全国大会に出るとは、いかに大変なことか!」

 

と痛感していた。

 

愛知県には200を超える高校があり、そのうち女子校を除けば殆どの学校にサッカー部は存在するはずだから、まず県大会を勝ち上がるだけでも想像を絶するほど大変なのである。

 

その県大会の前には地区大会があり、そもそもここを勝ち上がらないことには県大会にすら進めない。同じ地区には20の高校があり、3つのブロックに分けられ、各ブロックを勝ち上がった学校が地区代表として県大会に進む。つまり県大会に出場できるのは、僅か3校のみということだ。

 

同ブロックは7校で、初戦はシードされた『A高』は2回戦から登場した。初戦にPK勝利で、なんとか勝ち上がってきた敵は『A高』の相手ではなかった。

 

『A高』自慢の「恐怖の3トップ」が初戦からエンジン全開で「5-1」の圧勝という好スタートを切った。

 

にゃべとエースのドージマがそれぞれ2得点を挙げたが、3トップの一角ゴトーだけが無得点に終り

 

「明日、明日!」

 

と、ゴトーが吼えた。

 

続く3回戦。この試合に勝てば、県大会出場が決まる。相手は、同じA市の『A工高』だ。

 

『A工高』には『B中』でにゃべとともにトップで活躍したイモや、ゴトーの『C中』やドージマの『A中』などで活躍していた選手がたくさん居る。そうした連中に混ざって、試合前には懐かしいイモもやって来た。

 

言うまでもなく、中学の地区大会で優勝した時の『B中』で、にゃべと黄金のトップを組んでいた相棒である。

 

「オイオイ・・・オマエら3トップかよ!

卑怯だな・・・よく3人揃ったもんだ・・・しかも揃いも揃ってレギュラーで、3トップときやがった。まるで、マンガじゃねーか・・・」

 

と、イモが羨ましそうに言った。

 

「うちのチームにオマエが居れば、言うことなかったんだがなー」

 

「『A高』なんて、入れねーし。ま、オレは出番があるかどうかわからんが、がんばろーぜ」

 

と、互いに健闘を誓い合う。

 

「なんだ・・オマエ、まだレギュラーじゃねーのか?」

 

「まあな・・・途中から出るかも知れん・・・」

 

と、やや寂しそうなイモ。『A工高』は男子校で部員の数も多く、上下関係が厳しいだけに2年生でレギュラーになるのは難しい、ということらしい。

 

 試合は、前日3トップの中で唯一無得点に終ったゴトーの先制点から始まり、前日に続くドージマの得点も飛び出し「2-0」で前半を終える。が、後半開始早々『A工高』も1点を返して詰め寄ると、途中からイモがディフェンダーと交代で登場して来た。

 

「ん?

なんで、オマエがディフェンダーなんだ?」

 

「うるせーな!

ゲームに出れりゃ、なんだってえーだろーが!」

 

「で、オマエは誰に付くつもりなんだ?」

 

「そんなクダランことを聞くのか?

無論、オマエに決まっとるだろーが!」

 

「オイオイ、冗談は止めろ!

ヒロ(ドージマ)にしといてくれよ。自慢の石頭でな」

 

と言うと

 

「オイオイ、悪い冗談は止せよ。また病院送りは勘弁だぜ」

 

と、因縁のドージマも苦笑いで

 

「あれはオレの頭じゃなくて、実はにゃべのオーバーヘッドが犯人だろ?」

 

と、イモも軽口を叩いた。

 

結局、3トップのマークはこれまで同様に3年生が付き、イモは地味なディフェンダーの中でも目立たない脇役に徹していた。

 

ゲームは1点差のまま、いよいよ後半に差し掛かろうかというところで、ゴトーの貴重な2発目が飛び出し「3-1」とすると、そのまま逃げ切って県大会出場が決まった。

 

「クソー、やっぱオマエラつえーなー」

 

と、顔を顰めるイモ。

 

「にしても、にゃべだけが無得点とは不甲斐ねーぞ!」

 

「バカモン!

昨日はオレが2得点でゴトーが0だったから、今日は譲ってやったんだ。まあオレの本領発揮は、県大会からだわい」

 

と、無得点に終った悔しさを隠し、県大会での健闘を誓う。

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