2005/01/28

「Classic」の探求(3)


 では、最後に「古典主義」を見ていくことにする。

<古典主義 【英】:CLASSISM
語源は、古代ローマ市民の最高階級を意味するクラッシクス(Classicusは、美術、文学、音楽、建築など広い分野にわたって使われ、明晰な秩序に基づく完成された表現を目指す、様式傾向や芸術理念を意味する。17世紀フランスで芸術理論として高められ、現在では一般的な様式概念としても、歴史上のある特定の時期を示す概念としても用いられる。
様式概念としての考え方としては、バロックに対立する表現様式として見る立場と、アルカイスム古典主義バロックと展開する様式発展の一つと考える立場があるが、いずれもアルカイスムの素朴で生硬な表現やバロックの激しくダイナミックな表現に対して、合理的秩序に基づく統一性、安定した構築性、調和の取れた静かな表現等を古典主義の特質として挙げている。

代表的な時代としては、紀元前5世紀のギリシア、ルネサンス、17世紀、18世紀末から19世紀初頭にかけてのフランスがある。様式概念として広く捉えた時、日本美術などの西欧美術以外の芸術に古典主義の時代を見い出したり、ピカソの「古典主義時代」など個人の様式に適用することがある。

そして、古典主義音楽だ。

<古典主義は、ヨーロッパでギリシャ・ローマの古典古代を理想と考え、その時代の学芸・文化を模範として仰ぐ傾向のこと。均整・調和などがその理想とされる。文脈により、異なった意味合いで使用される。ロマン主義の対概念。音楽では、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンが古典派音楽(古典主義音楽)と言われる。音楽の場合、ギリシア・ローマの古典を復興しようという意識があった訳ではないが、ソナタ形式に見られるように調和の取れた構成の形式美を重んじている>
出典Wikipedia

このように「古典主義」の語源が「Classicus」という解釈に忠実に基づけば、実は「Classic音楽」にカテゴライズされるのは、モーツァルト、ベートーヴェン辺りまでとなってしまい、以降の年代に登場したシューベルトやワーグナー、或いはブラームスやチャイコフスキーといった有名作曲家は、古典派に代わって登場した「ロマン派」の音楽家として、その作品は狭義には「Classic音楽」に含まれない、という理屈になってしまうわけである。

が、これはあくまで「Classicus=古典主義」に基づいた場合の狭義の解釈であって、先の辞書に出ていたように

「学問・芸術などの分野で古い時代に作られ、長い年月にわたる鑑賞を経て、現在もなお高い評価を受けている作品で、民俗音楽やジャズ・ポピュラーなどの大衆音楽以外の、芸術的に正統とされる西洋音楽」

という広義の解釈こそは、今日広く人々に膾炙されているものである。

 古典派(classicという言葉は<第一級の、模範的、高雅な、経典的、古代ローマ・ギリシャ様式>などの意味がある。古典主義といえば古典崇拝派を指し、ゲーテやシラーなどのギリシャ研究から起こった文学運動のことである。形式的な類型と調和を重んじ、客観的な美しさを追求する事が主眼とされた。  音楽における古典主義は、ウィーンで花が咲いて、ウィーンで実を結んだ。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの3人の出現によって、画期的な楽風が樹立され、古典主義の完成となったのだ。

古典主義の音楽がウィーンで栄えるためには、すべての条件が揃っていた。ウィーンは、長い間ヨーロッパにおける文化の中心地であったばかりでなく、王君を始め貴族たちは自身で音楽を嗜み、優れた作曲家や楽団を抱えて自分のサロンで演奏をすることが誇りであった。

ウィーン派初期の音楽家の名を挙げれば少なくないが、最初に現れた大きな名はグルックである。グルックはマリーアントワネットの王女、王子に音楽を教授するため、一時パリにもいた。続いてハイドンが現れ、モーツァルトが現れ、ベートーヴェンがやってきて、ウィーンを第二の故郷とした。つまり彼ら4人とも、ウィーン生まれではない。ウィーンの音楽的雰囲気に惹かれて来て、彼らによってウィーン古典派の輝かしい伝統を作り上げ、そしてウィーンに骨を埋めたのである。

 古典派音楽の特色は、次のことが言える

1
.整然たる形式による単旋律音楽(※)で、ソナタ形式、ロンド形式がその中心となった
2
.端正な音楽理論をもち、和声楽、旋律構成法、管弦楽法が合理化された。
3
.創作理念として、荘厳、崇高、純美を目的とし、多分に貴族的であった。

※ルネッサンス以降、盛んだった多声音楽(複旋律音楽)はポリフォニーと呼ばれたが、これは同時に二声以上の旋律が流れるもので、これにはカノン、フーガなどの形式があり、もっぱら対位法によって処理された。それに対して、単旋律音楽(ホモフォニー)とは一本の旋律が中心となり、和声によって伴奏され音の加重が自由であり、壮大、豊麗にされるもので、この時代のソナタ形式、ロンド形式、歌曲形式などは、単旋律音楽を最も効果的に発展させた。グルックを除く3人は、すべて器楽の作曲家である。古典派の音楽では、オペラももちろん一つの重要な部門ではあったが、全体的にはその特徴は器楽にあって、特にソナタ形式、またはシンフォニーの音楽である。

0 件のコメント:

コメントを投稿