まず、弱音器をつけた弦楽器によって瞑想的な主題が演奏され、中間部でようやくピアノが登場してくる。ここでの繊細で装飾的なピアノは、北欧の夜空に煌く星を眺めているような雰囲気がある。第3部はオーケストラに支えられたピアノが主題を強奏し、名残りを惜しむかのように静かに消えていく。第2楽章は全体を通して厳しい北欧の寒さと、美しい自然の息づかいが聞こえてきそうな素晴らしい音楽である。
ノルウェーのベルゲン生まれのグリーグ(1843-1907)は、ライプツィヒ留学時代に影響を受けたドイツ・ロマン派的なベースの上に、自国ノルウェーの民族精神を反映させるという、独自の音楽世界を築き上げた。
25歳の1868年、ひと夏で書き上げられたこのピアノ協奏曲は、作曲家のそうした作風が明らかとなった出世作である。ノルウェー民謡や民族舞曲の要素が盛り込まれ、劇音楽『ペール・ギュント』と並ぶグリーグの代表作である。
この曲を創作していた頃のグリーグは、前年に結婚し翌年には女の子が生まれたばかりという、幸せの絶頂にあった(この子供は残念ながら、僅か1歳で亡くなってしまった)
そうした私生活の充実振りが窺われるような作品である。
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