「にゃべ!
そーいやオマエ、泳ぎはサッパリだったよなー。ちっとは、上達したんかい?」
「うーん、まあ、そこそこにはな・・・」
いきなりムラカミから強烈な一発を見舞った、にゃべ。スポーツ万能ながら、なぜか水との相性ばかりは殊の外悪く、水泳だけはどうにも上達しなかった(サボってばかりいたから、当然とも言えたが)
「じゃあ、オレとムラは後で泳ぎに行ってくる。にゃべはこの場所を確保しとく役だな」
「生憎、ビーチボールを持ってきたからなー」
とはいうものの浅瀬は人でごった返し、とても気持ちよく泳げるそうなスペースは見当たらない。仕方なく三人はビーチベットに寝転がり、周囲ではしゃぎ回る人並みを見るともなく見ていた。
「しかし・・・」(ムラカミ)
「ん? どうかしたか?」(シゲオ)
「こうしてヤローばかり三人でボケーっと寝とるっつーのも、なんとも様にならんいうか・・・」(ムラカミ)
「そうそう。別荘の夜を楽しむためには、やっぱナンパの必要があるだろーて」(にゃべ)
と衆議は一致をみたが、ではさて誰がナンパ役を買って出るかとなると、適した役者がいなかった。
「やっぱ、こういう役はにゃべだろー」(シゲオ)
「ん?
なんでオレ?」
「そりゃあ、言わずとも・・・3人の中では一番のオトコマエで、アタマも切れるし、背も高く一番スマートだし・・・と、自分で思ってんだろ?」(シゲオ)
「まあ事実、その通りではあるのだが・・・」
「じゃあ取り敢えず、その辺をブラブラと歩いてみるか。これはと思うのがいたら、オレとムラで声を掛ける。その間、オマエは黙って立ってりゃあ、それなりにサマになるから、最後の詰めは頼んだ」
「よし、じゃそうするか・・・しかしこれだけ人間がいたら、知った顔の2人や3人はいそうな気もするが・・・」
とぼやいたまさにその時、タイミング良く眼の良いシゲオが目敏く見つけたのは、まだ水着姿のあどけない三人娘であった。
「オーイ、A子」
「あーっ、シゲオ先輩っ。先輩たちも、来てたんですかー?」
なかなか可愛らしいその3人組は、弓道部のシゲオの後輩とクラスメイト2人というところらしい。相手の人数も、お誂え向きの3人。早速、3人同士でビーチボールで遊んだ後は、カキ氷を食べながらお喋りが始まる。
「コイツの別荘が近くにあるんだぜー」
「うわーっ、別荘ってスゴッ!
見たい見たい」
若いコだけに、好奇心は旺盛だ。
「別荘ったって、何年も放置してたヤツだからなー。オレも今日が初めてだし見た事はないけど、そんな大層なもんではないはず。お化けでも、出なきゃいいが・・・」
そんなこんなで別荘には、6人連れ立って訪れる事となった。
建物そのものはさすが、思ったよりはまずまず立派だったものの、なにせ何年も使われる事がなかっただけに、そこここに黴臭い匂いが。冷房は勿論の事、扇風機や冷蔵庫とてあるわけもないが、不思議な事に何年も汲んでいないはずの井戸水が使えたのだけは、大いに助かった。
ともかくも一通りの検分を兼ねて、室内の空気を入れ替えてから、再び海岸へと戻る若い6人。結局、なんのかんのと言いながら3人娘たちとしっかり楽しみつつ、気付けば日が暮れかけて来た。
彼女らを駅まで送って行き、再び海岸に戻った時はドップリと日が暮れ、いつの間にやら人影もめっきりと減って、残っているのはカップルの姿しかない有様だった。
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