前年のインターハイでは個人総合6位、種目別では表彰台にも上がる大活躍を見せ、一躍校内一のスターとなった体操部のカオリが、この年のインターハイにも出場を決めた。
同じく出場の期待された同僚のミサコは、カオリと競ってきたものの転倒が響いて惜しくもあと一歩のところで予選落ちしていただけに、体操個人競技では(という以上に、全個人競技を通じて)この年もカオリが唯一のインターハイ出場者となった。インターハイと並ぶ、高校生最大のスポーツの祭典「国体」の体操競技は団体戦のみしか行われないだけに、カオリとしてはインターハイにかける意欲は並々ならぬものがあったであろう。
夏休み、密かにNHKのテレビ中継で全国に流されるハズだった、カオリの美しい舞を期待していたにゃべだったが、間の悪い事にメディアはちょうど、同じ時期に開催されていたオリンピック一色に塗り潰されてしまった。
さらに間の悪い事には、体操競技の始まる数日前から、例年同様に「夏の高校野球全国大会」が重なってしまった。その上、抽選で地元・愛知勢の初戦の相手が優勝候補のスター軍団に決まったから、新聞の地方版からスポーツ面に至るまでこれらの記事で埋め尽くされ、片隅にほんの申し訳程度に出ていたインターハイの記事は、拾うのもひと苦労といった有り様となってしまっていた。
しかしながら、遥々と数百キロの彼方に出張していったカオリは、そんな俗世間の騒ぎとは無関係に、落ち着いて自分の演技を披露していたらしい。ようやく見つける事の出来た、地方版の見出しに
「『A高』のヨシノ選手、2年連続で自由演技出場」
の小さな見出しを見つけた時には
(観には行きたいが、会場はあまりにも遠い・・・)
と嘆く、にゃべの姿があった。
新聞を見た両親から
「アンタの学校には、随分と優秀な子がいるんだねー」
と言われ、不思議と自分の事のように誇らしかった。
結局カオリは、この年も個人総合で入賞を果たし、床運動で前年に続く表彰台、平均台でも「銀」を獲得するなど、前年に続いて見事な大活躍を見せた。
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