インターハイサッカー地区予選が始まった。
初めて出場した前年は地区リーグで優勝しながら、県大会では私立の強豪校の前に無念の緒戦敗退を喫していただけに、今年は上位進出が目標だ。
まずは地区大会。前年はトーナメント1回戦をシードされたが、出場校数が増えた関係で、今年はここからのスタートである。ここまで、センターフォワードはエースのドージマが固定だったが、この大会から、ドージマが「後ろから見渡せる」ということでOHに下がり、にゃべ、ゴトーの「2トップ」がデビューとなった。
キックオフからエンジン全開の『A高』が、一方的に攻めまくる。ゴトー、にゃべの得点でリードし前半を終了すると、後半にはOHに回ったドージマのゴールも飛び出し、幸先の良い揃い踏みだ。
(これまでヒロに集まっていたボールが、これからはこっちに来るはずだ)
と、格下相手に密かに「偉業」を狙っていたにゃべを尻目にゴトーがハットトリックを達成した。
この「6-2」の圧勝で気を良くして、2次リーグへと駒を進める。2次リーグは昨年同様8校が出場し、4校ずつ2つのグループに分かれた。ここでは、初戦からドージマが大爆発。OHに下がったとはいえ、ゴールに対する嗅覚はやはりこの男がナンバーワンで、初戦のゴトーに続くハットトリックを成し遂げ「5-0」と圧勝だ。
続く2戦目は3トップが揃い踏みで「3-1」で勝利し、早くも決勝トーナメント進出を決定付けた。
迎えた最終戦は、予想外の苦戦を強いられ「1-1」の痛み分けに終ったが、トータル2勝1分けとなり、堂々グループ1位でリーグ戦を終えた。
(オレだけ、ハットがない・・・)
と歯軋りをかみ殺しながら、眠れぬ夜を過ごしたにゃべの「桧舞台」は決勝トーナメントに用意されていた。
初戦は、にゃべの一人舞台だ。ゴトー、ドージマの華麗なハットトリックを立て続けに見せ付けられてきたにゃべが、前半だけで意地の2得点を決める。
(今日は、死んでもハットをやらねば!)
と執念の鬼と化したにゃべが、遂に偉業を達成し「4-2」で快勝。さらに、決勝はドージマの2発で『Y高』を「2-0」で退け、グループ優勝で堂々の県大会出場を決めた。
県大会は、前年同様に4つのブロックに分けて行われた。1回戦は名古屋の学校を相手に、にゃべ、ゴトーの2発で「2-0」の勝利。前年の県大会は初戦で敗れていただけに、これでまずは一歩前進である。
続く2回戦は、優勝候補の一角に上げられていた公立最強の『K高』が相手だ。
「なんで、ウチが優勝候補に挙がってねーんだ?
おかしーんじゃねーの?」(にゃべ)
「仕方ねーよ。マスゴミの連中の目なんて、どいつもこいつも節穴と来てやがるからな」(ゴトー)
「『K高』を倒して、あっと言わせてやろーぜ!」(ドージマ)
と「優勝候補」の呼び声高い相手にも、怯む3人ではない。
「優勝候補とやらを叩きのめしてやるわ!」
との強い意気込みだけがあった。
試合は両校様子見の静かな戦いで幕を開け、20分過ぎた辺りから徐々に展開が動き出した。先に仕掛けたのは『A高』の方だったが、華麗なパスワークでディフェンスを崩した相手に、先制を許してしまう。が、すぐにゴトーがカウンターで一気に突っ走ると、鮮やかにゴールを決めた。
同点!
そのまま、前半が終了だ。
後半に入ると、またしても『K高』にリードを許すという苦戦。リードして守りを固め始めた相手に、なかなかチャンスを作れず苦しい展開が続き、時間も残り少なくなっていく。
(さすがに相手は堅いな。最早、ここまでか・・・)
と、いよいよ追い詰められたところで、マラドーナばりの華麗なドリブルで2人、3人と突破していったドージマのシュートが、鮮やかにゴールネットを揺らした。
再び同点!
その後は両校チャンスをものに出来ず、時間切れとなって勝負は初のPK決着へともつれ込んだ。
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