2004/12/29

ムソルグスキー『展覧会の絵』(ラヴェル編)(3)


ピアノ版

ラヴェル編曲版

  この『展覧会の絵』の斬新さは、音楽史にもエポックメーキングとして数え上げられるものと評価しても、決してオーバーくらいに重要な作品だ。

ドビュッシーを筆頭にラヴェル、マスネといったフランスの音楽家ばかりでなく、スペインのファリャやイタリアのレスピーギにまで影響を及ぼした「印象主義音楽」の台頭は、ドビュッシーによって齎されたとされがちだが、そのドビュッシー自身が

「ワガハイは『展覧会の絵』から、最も大きな影響を受けた」

と明言しているのである。

しかしながらそれだけの傑作であるにも拘らず、作曲者ムソルグスキーの生前には遂に公で一度も演奏される機会に恵まれなかった。晩年は、アルコールに溺れて野垂れ死に同然に、僅か42歳という若さで不遇の死を遂げてなければならなかったムソルグスキーの薄幸な生涯こそは、実に返す返すも残念でならない。

組曲の内容は、ハルトマン遺作展で印象に残った十枚の絵を、描写したものである。

「プロムナード」(フランス語で散歩道・遊歩道)は、その名の通りムソルグスキー自身が画を見て廻る様子が描写されたものだ。曲の合間にも併せて5回出てくるが、その都度の心境の移ろいが反映され、総て同じ主題ながら少しずつ違った曲調になっていて、これだけ聞き比べるだけでも興味深い。

7曲「リモージュ、市場」・・・フランスの都市、リモージュの市場の喧騒とされているが、実際にはロシア女たちの市場でのおしゃべりと、掴み合いの大喧嘩が描写されているらしい

8曲「カタコンブ」・・・ローマ時代の地下墳墓「カタコンブ」の中を、カンテラを下げて見物している画家自身の描写

「プロムナード・6

9曲「バーバ・ヤーガの小屋」・・・バーバ・ヤーガとは、ロシア民話や伝説に出てくる妖婆(魔女)の事で、箒に跨って空を飛び回るとされている

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