味方がせっせと作ってくれるチャンスを悉く逃していさまは、第三者のワタクシでさえもが
「何だ、コイツは・・・サッパリダメじゃん・・・」
とあまりの情けなさに目を覆いたくなるばかりであり、1-0でナイジェリアにリードを許したままジワジワと重苦しい時が刻まれ、残り時間もあと僅かと言うところまで来ました。
そうして後半も44分を過ぎ、いよいよ終わりかという断崖絶壁崖っぷちのところで、劇的なドラマが待っていいようとは・・・
NHKの実況アナが
「まったくいいところがないままに、これでR.バッジオの夏が終わってしまうのでしょうか・・・」
とかなんとかぼやいてみせたところで、最後のチャンスボールが廻って来ます。
「これが恐らくは、ラストチャンスとなるでしょう!」
と言うや「ファンタジスタ」の足から放たれたシュートがようやくの事でゴールネットに突き刺さり、まさに土壇場の土壇場で飛び出した起死回生の一発で同点に追いついたのです。
「ようやく・・・ようやくR.バッジオに一発が出ました・・・!」
と、実況アナも興奮に我を忘れ「ようやく」を連発するほどに、非常に長い道程でした。
4試合目の終了間際にして、ようやくの初ゴールを決めるや水を得た魚のように、延長に入ると見違えるほど動きが良くなった「ファンタジスタ」を中心に一転して、ゲームがイタリアペースに傾き始めた。今度は解説者も
「素晴らしいですね・・・アイディアが・・・」
と唸らせるような個人技で、疲れの見えるアフリカの雄を翻弄した末にPKをもぎ取り、自ら2点目を決め2-1でこの死闘にケリをつけます。
これで、すっかり波に乗った「ファンタジスタ」は、続く準々決勝のスペイン戦でも1-1でまたしても延長戦突入かという終了間際の88分でゴールを決め、準決勝のブルガリア戦では前半に2ゴールを決める破竹の快進撃が止まらず、すっかり手が付けられなくなります。
「うむむ・・・確かに「ファンタジスタ」だ」
決勝トーナメントに入ってからは3試合連続の5ゴールで、一気に得点王争いにも食い込んできた「ファンタジスタ」の華麗なテクニックに、ボロクソに扱き下ろしていたワタクシも舌を拭い、すっかりと魅了される事になります。
そしていよいよ迎えた決勝戦、相手は優勝候補筆頭に挙げられていたブラジルです。
ここまでの得点王争いで、6得点でトップに立っていたブラジルのロマーリオと、1点差の5得点まで一気に迫ってきた「ファンタジスタ」による対決が期待されましたが、さすがに両選手ともに厳しいマークに合い結局0-0のまま延長でも決着が着かず、W杯史上初めてとなる「PK合戦による決勝戦」となります。
PK合戦でチャンピオンが決るという、なんとも間抜けな展開となって本来ならば拍子抜けのするところですが、ここでも「ファンタジスタ」がまたしても史上稀に見る劇的な幕切れのドラマを演出してくれる事になるのでした。
大きなプレッシャーの中、両軍とも最初の選手が外すという波乱含みの展開でスタートしたPK合戦は、その後2人が順当にゴールを決めて3人が終了したところで2-2と、まったくのイーブンです。
イタリアの4人目はマッサーロ。シュートの正確さでは定評があり、この大会でも再三素晴らしいシュートを見せていたマッサーロでしたがよもやの失敗に終わり、対するブラジルは4人目も順当に決めて、いよいよイタリアは追い詰められました。
そして最後の5人目に登場してきたのが、エースの「ファンタジスタ」です。
(なんか失敗の予感がする・・・)
なんとなく不吉な胸騒ぎのする中、裏をかいて小技に走った「ファンタジスタ」のフェイントは、ブラジルのGKタファレルにまんまと見抜かれて失敗。
イタリア敗北!
ガックリと腰を落として項垂れる「ファンタジスタ」に駆け寄って肩を抱くチームメイトたち。その時「ファンタジスタ」の目には、キラリと光るものが見えました。
(う~む・・・「ファンタジスタ」か・・・なんかカッコ良いなー)
どういうわけかこの時になって、この「ファンタジスタ」の魅力が非常に強く胸に迫って来たのだから、不思議なものです。
そんな印象深かった、あのW杯から10年後の2004年。98年のW杯代表チームではエースの座は若手に譲ってはいたものの、クラブチームでは相変わらず世界トップの大エースとして君臨していた「ファンタジスタ」でしたが、2004年5月に遂に引退を表明しました。
「ファンタジスタ」がゲーム終了後に引退を表明した時の画像が「YAHOO!ニュース」で採り上げられ、数年ぶりに「ファンタジスタ」にお目にかかる事になりました。
(そういえば、長い事見てなかったっけ・・・あれから、どんな風に変わったんだろうか・・・)
興味津々というよりは寧ろ感慨めいたものがありましたが、驚いた事に黒髪がいつの間にか金髪に変身していたのはともかくとして、すっかりダンディな男前として若い頃より数段魅力が増して来ているように見えたものです。
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