2004/12/20

お嬢の夢想

言うまでもなく女子生徒の人気ナンバーワン、というよりは余程のヒネクレ者を除外すれば、全女子の羨望の的とも言えた御曹司だったが、いかに本人が気さくな男ではあっても、さすがにこれだけのサラブレッドを口説こうという剛の者は皆無であった。

たった一人の例外を除いては・・・普通の女子にはあまりにも敷居が高い上に、万一首尾よくこの御曹司の彼女にでもおさまろうものなら、嫉妬深い女子どものことだけに、どのような「イジメ」が待ち受けているかは想像に難くない。いや彼女に収まるのは無理だとしても、単にモーションをかけただけでも

(なによ、あの嫌な女!)

てなことにもなりかねなかった。

 そこへ「真打ち登場!」とばかりに、颯爽と登場してきたのが「お嬢」だ。なんせ、そこいらの女子とは違い「社長令嬢」であり、かつ母方は「高貴の出」だから、生まれ育ちの良さは御曹司にもまるで引けを取らない。ルックスを含めた外見と成績に関しては、さすがに御曹司のような目の覚めるようなレベルに比すべくもなかったが、プライドの高さと気の強さを含めた「胆力」では、御曹司を遥かに凌駕していた。

入学早々に、早速御曹司に目を付けたお嬢は、他の女子が手の届かない「雲上人」と指を咥えて諦めているのを見て取るや、安心してじっくりと密かな値踏みをしていたフシがあった。

そして、1年が経過した。いよいよ「掛け値なしの本物」と見るや、ソロリソロリと触手を伸ばして始めるお嬢。

百万人と言えど我行かん」が如き唯我独尊のお嬢だけに、周囲の噂などは屁のカッパ。

(愚かな連中が騒いどるわ!)

と、鼻でせせら笑っていたくらいなものだったろう。

一方、天下のモテ男タカミネ御曹司の方はといえば、こちらは放っておいても女の方から寄って来るのだから、好き好んで毀誉褒貶の喧しく聞こえる悪評高いお嬢を選ぶ必要はないとの判断からか、お嬢のモーションには当初からまったく腰が引けていた。

得意の強引な押し捲り戦術は功を奏さず、寧ろ次第に及び腰となっていく御曹司を見たお嬢は、すかさず戦法を変える。なにしろ性格的にはトンデモな鼻持ちならない悪女とはいえ、その身に備わった賢さは半端ではないのであった。

一旦は、あたかも矛を収めたように、しばらくは鳴りをひそめたかに見えたお嬢だったが、密かに次善の策を着々と温めてるかのように爪を研いでいた! 

あのプライド高きワガママなお嬢が、人が違ったようにすっかり謙虚になり、こと御曹司の前では借りてきた猫の如くに、おとなしくなったのだ(もっとも、そのような態度は、あくまで御曹司に対してだけで、御曹司の視界にないところでは、依然として天衣無縫な振る舞いが蔭を潜める事は、まったくなかったらしいが・・・)

スーパーエリートとはいえ、世間知らずで善性の塊のような御曹司だけに、お嬢の手練手管に巧みに誑かされたか、或いは面倒を避けるために調子を合わせていただけかは不明だが、次第にお嬢に対し寛大な態度を見せるようになった。

以上の経緯は、何人かのクラスメートらの証言をつなぎ合わせて創作したものだが、実際

「御曹司も、またえらいのに目を付けられたもんだな・・・」

と、同情の声一色であったのは確かである ヽ(´―`)ノやれやれ

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