2004/12/26

ゴトーの悲劇・2年版

  どういう星の巡りあわせかはわからないが、世の中というもの一旦ドツボに嵌ってしまうと、なかなか抜け出すのは容易ではないらしい。『A高』入学後のゴトーが、まさしくそのような「ドツボ」にドップリ嵌ってしまおうとは!

 

ゴトーといえば、過去に紹介した通り『B小』から『H小』に転校後は「神童にゃべのプレッシャー」から解放されたかの如く別人のような大変身を遂げ、学校きっての秀才として生徒会長を務めた。さらに『B中』から分離新設なった『C中』においても真紀、ナカムラといった秀才とトップ争いを繰り広げ、またスポーツも万能と、まさに『B中』における天才にゃべにも匹敵するようなスーパー中学生として、皆からの尊敬と人気を一身に集めていたらしかったのだが・・・

 

それが僅か1番とはいえ、宿敵にゃべの後塵を拝した入学時の「推薦順位」が、ケチの付き始めだったのかもしれない。

 

「あの推薦順位は、6番と7番が間違がっとる。ありゃ、プリントミスとしか思えん・・・あれから、オレの人生がおかしくなったようなもんだ・・・」

 

「なに言っとる!

至極順当な査定だろうが・・・寧ろ、オマエの7番こそ過大評価過ぎて、何かの間違いとしか思えん」

 

などとふざけていたものだったが、執念深さでは人後に落ちない男だけに、ライバルの上に立たんと立候補で委員長の座を射止めたのが1年前だった。そこまでは良かったものの、パートナーに選ばれたのが「生き神様」のようなスーパー天才だった事が、そもそもの悲劇の始まりだ。

 

女子委員長マザーの底知れぬ天才と、人間的な器の大きさにも圧倒され続けたかつての英雄ゴトーは、すっかり自信喪失。蔭では、女学生から

 

「ゴトーって、マザーの執事みたい・・・」

 

とまで扱き下ろされ

 

「どんなブスでもバカでもいいから、とにかくアイツの相手だけは御免蒙る・・・」

 

と、泣きを入れていた (TT )

 

後期、委員長の役目から開放され、ようやく持ち前のプレイボーイぶりに目覚めたゴトーは、茜や千春といった辺りに盛んにちょっかいを出して一人悦にいっていたが、そんな平和な時期も長くは続かなかった。

 

2年生となり、マザーの重圧から開放されホッとしていたであろう矢先には、あろうことかマザーに匹敵するか、或いはそれ以上の難物にぶち当たってしまったのである。

 

正真正銘「どんなブスでもバカでもない」、ほかならぬ「お嬢」とメデタク委員長に選ばれてしまった。

 

当然の事ながら、この頃にはお嬢の万里の長城の如きプライドの高さは広く知らぬものがないくらい既に有名になっていたとはいえ、ゴトーとしてはマザーとの「地獄体験」から

 

(ま、あれに比べりゃ可愛いもんだろ)

 

などとタカを括っていたらしい。しかしながら、あの稀代のワガママお嬢が、ゴトーのようなおふざけパートナーに満足するはずはなかった。

 

 さらにゴトーにとって悪い事には、前年のお嬢のパートナーだったナカノという男子が目立ちたがり屋で女誑しのゴトーとは違い、温厚なおとなしい性格だったことで、お嬢に逆らわず万事において立てるようにして、ソツなく役目を終えていたことだった。

 

結果

 

「あんな変なのとは、やってられないわ」

 

などと、散々に扱き下ろされる始末に。

 

同じクラスだった、サッカー部のA君によると

 

「オークラ(お嬢)は、ゴトーなどはハナから見下している感じで、とても見ちゃおれんかったわ。確かにオークラってのは見た目もそこそこだし、頭脳の回転がめまぐるしく際立っていたのは事実だけど、性格があんなにきつくてはなー」

 

と、呆れ返っていた。

 

かくて

 

「口には出さないが、哀れむような視線が突き刺さった」

 

というマザーと

 

「コイツ、しばいたろか!

と思ったことが、何度もあった」

 

というお嬢。

 

「いっそ、しばいてやりゃどーだ。そうすりゃお嬢も少しは目が醒めて、皆から感謝され英雄になれたかもしれねーぞ」

 

「いや、それはできん。やっぱ、手を出せん金持ちオーラが出まくってたからな・・・」

 

何の因果か、2年続けてこの『A高』を代表する「魁女」に当たってしまったゴトーの悲劇たるや、友人として同情に値する。気の弱い男(というよりは、まともな神経の持ち主)なら

 

「オレなら、とっくにノイローゼになってるよ」(A君)

 

という過酷な状況だったが、そこは精神的な逞しさでは群を抜くゴトーだけに、懲りずに体操部のカオリにちょっかいを出していたらしい。

 

サッカー部で顔を合わせると

 

「オイ、にゃべ! 

オレは、オマエが羨ましいぜ、まったく。去年が白椿(茜)で今年はオーミヤ(真紀)とは、よくよくパートナーに恵まれたヤツよ。オレくらいのインケツは、世界中探し回っても滅多にいねーぞ・・・」

 

「ハハハハ・・・  それは神がちゃんと、日頃の行いを見ているということだな・・・。で、去年と今年では、どっちがマシなんだ?」

 

「ウム、それは、世界一の難問だな・・・強いて言えば、マザーの方は口は悪いが温かみもあったし、なにより去年はオマエや白椿が居たからまだ楽しさで救われたが、今年だけはなんともかんとも・・・」

 

「しかしなー。考えてみれば、校内一の天才と校内一のお嬢だから、得がたい貴重な体験かも知れんぞ」

 

「ヒトゴトだと思いやがって・・・まあ確かにあの2人は、色んな意味でトンデモな存在であるのは認めるがな・・・あれに比べりゃあ、中学の時のオーミヤなんかは天使みたいなもんだ・・・」

 

実際、得がたい体験ではあろうが

 

(オレでなくて良かった・・・)

 

と、密かに胸を撫で下ろすにゃべであった (^^)y-o

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