待ちに待ったインターハイ地区予選が始まった。
1年生でベンチを暖めていた昨年は、県大会には進んだものの初戦敗退に終った『A高』。今年は、ご存知にゃべ、ゴトー、ドージマの2年生最強トリオが3年生を抑え、3トップを形成する豪華布陣で前年の雪辱を誓う。
3人による熾烈なポジション争いの結果、総合力でにゃべ、ゴトーの両エースを抑えた怪物ドージマがセンターフォワードの座を射止めていた。昨年はもっぱらベンチ要員に終ったにゃべ、ゴトーとは対照的に、186cmの巨漢ドージマだけは試合にも抜擢されて活躍を見せていただけに、にゃべ、ゴトーの2人は
(これ以上、ヤツに差をつけられては堪らん!)
と、それぞれ期するものがあった。3人にとっては、高校で迎える初の大会であるとともに、サッカー少年ならば誰もが憧れる「インターハイ出場」という、夢のような大きな目標がある。
高校サッカーの「三大大会」と言われるのが、夏の「インターハイ(高校総体)」と冬の「全国選手権」、さらには「国体(国民体育大会)」の三大会だ。このうち国体は県代表の選抜チームの編成だけに、実質的には夏のインターハイと冬の全国選手権が「二大大会」として、にゃべらのターゲットとなる。
迎えた地区予選。10校が参加して行われるトーナメントの1回戦をシードされた『A高』は、2次リーグ戦からの登場だ。2次リーグは8校が出場し、4校ずつ2つのグループに分かれる。
Aグループに入った『A高』は、初戦はこのブロックで最大のライバルと目される『F東高』とぶつかった。
「いよいよだぜ・・・胸が高鳴るなー!」(ゴトー)
「うむ・・・いよいよ、インターハイかー。ワクワクするなー」(にゃべ)
「2次リーグは、3連勝で勝ち抜くぞ!」(ドージマ)
と、武者震いする豪華トリオ。3トップは、エースのドージマがセンターフォワードを務め、にゃべ、ゴトーが両ウィングで固めるという夢のトリオだ。
(このゴールデントリオなら、3連勝は間違いない)
と、3人ともが確信していたに違いない。
とこらが、初戦の相手は予想以上に強かった。最後まで1点も取れず「0-1」とよもやの敗戦スタートで、早くも後がなくなった。
「オレが点を取れなかったせいだ・・・すまん・・・」
と、ひたすら敗戦の責を負うドージマに
「今日負けたのは誤算だったが、まだ初戦だし残り2つを取ればいいんだ」(にゃべ)
「その通り。油断は禁物だが、負ける相手ではねーだろう」(ゴトー)
と、巻き返しを誓う。
2次リーグは、各リーグ上位2チームが決勝トーナメントに進む仕組みだけに、初戦の敗退は痛いとはいえ、まだまだ充分に挽回のチャンスはあった。
幸い、2戦目の相手は「グループ最弱」の『G高』だ。
この日は前日の悔しさをぶつけるように、序盤から一方的な「ゴール祭り」となり「5-0」の圧勝。前日無得点に終ったエースのドージマは、ハットトリックの大爆発を見せた。
ここまで、ともに1勝1敗で迎えた最終戦、この試合に勝った方が決勝トーナメント進出を決めるという、まさに正念場の一戦である。
この試合は、前日3得点のドージマが徹底的にマークされる。そんな中、にゃべとゴトーが前半に得点を上げ「3-1」で余裕の勝利を飾った。
これで、2次リーグは「2勝1敗」となり、グループ2位で決勝トーナメント進出を決めた。
トーナメントの初戦は、Bグループ1位通過の『D東高』との対戦。前の試合は厳しいマークで抑え込まれたドージマが、この試合は再び2得点と活躍を見せるなどで接戦を制して決勝戦へ。
決勝は2次リーグ初戦で、ここまで唯一敗戦の辛酸を嘗めさせられた憎い『F東高』が待ち受けていた。ここでも徹底マークに遭ったドージマを尻目に、またしてもにゃべとゴトーが得点を挙げて「2-0」でリベンジの勝利を勝ち取り、念願の県大会出場を決めた。
県大会は、各地区予選を勝ち抜いた40校が、4つのブロックに分かれて戦う。 2次リーグ優勝の『A高』は1回戦をシードされ、2回戦からの登場だ。相手は私立の強豪だけに、さすがにこれまでの地区大会の相手とはレベルがまったく違った。
雨でグラウンドのコンディションも悪い中、開始早々に先制点を許すと終始劣勢の展開でゲームが進んでいった。地区リーグの戦いでは、ドージマが徹底マークされた場合でも、にゃべ、ゴトーが自由に動ける時間帯が必ずあったが、さすがにこのクラスの相手は隙がない。にゃべ、ゴトーからも、終始マークが外れることがなかった。
こうして、殆どチャンスらしいチャンスがないまま、前半終了間際にさらに1点を奪われるという、非常に苦しい戦いだ。
後半に入ると、ようやくドージマに待望の1発が飛び出し、 1点差!
(さあ、これからだ!)
と意気上がろうかと言う矢先に痛恨の失点を喰らい、再び2点差に。ぬかるんだグラウンドに足を取られ、どうにも思うように動かない。
その後も決して気を抜かない相手に、そのままズルズルと押されて「1-3」の完敗で、無情にもピリオドが打たれた。
「うーむ・・・全国大会は遠いな・・・」(にゃべ)
「うーむ・・・なんかフラストレーションが溜まる終り方だな・・・もっと、サッカーがしたかったのに・・・」(ドージマ)
「まあまあ・・・オレたちまだ2年だし、これからたくさんチャンスはあるさ」(ゴトー)
「全国大会出場」どころか県大会緒戦で敗れるという、トリオにとっては実にほろ苦い高校サッカーデビューとなってしまった。
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