ホテルで最も気拙いのは、なんといってもエレベーターなどで見知らぬ客と鉢合わせした時である。
よくあるパターンとしては、自販機やコインランドリーを利用する際に使うエレベーターでの鉢合わせで、浴衣嫌いのワタクシ自身は風呂上りはおろか就寝の時も上着を脱いだだけの普段着のままだが、大抵のオヤジ族は浴衣に着替えていて、これがまただらしのない着こなしだったりする。相手は風呂上りで、日中の疲れを癒してノンビリと寛いでいるのだから仕方がないが、見知らぬオヤジの見たくもない日常生活の一コマを見せ付けられるようで、御免蒙りたいものだ。
とはいえ、リーマン風のオジサンとか兄ちゃんならばまださほど気拙くもないが、相手が夫婦者(とか不倫カップル?)や若いカップルの場合は、最高に気拙い。最悪なのはエレベーターを出そうかというタイミングで、夫婦者やカップルに乗り込んでこられるケースだ。
ワタクシの方は、見知らぬよそのカップルなどには爪の先ほどにも興味はないが、いつも言っているようにワタクシ自身がなぜか人目を惹くタイプらしいため、ジロジロと見られてかなわない。概して男の方は遠慮があって無関心を装っているのに対し、女(特にオバサンとなると)の方は遠慮がなく好奇心剥き出しにしてジロジロと見てくるのには、辟易とさせられるのである。
かつて最上階にあるコインランドリーを使っていると、大学生くらいの若いカップルがやって来た。自販機の前で、どれを出すかで二人で侃侃諤諤とやっていて、中々出て行かないのにイライラしてきたワタクシは、ランドリーを急いでセットすると足早に二人の脇を通り抜け、エレベーターに乗り込んだまでは良かった。が、客室のボタンを押したタイミングで、自販機からジュースが転がり出てくる音が聞こえた・・・
(まさか・・・)
というあの嫌な予感とともに、金髪男の方が脱兎の如く駈けて来て、連れの女に怒鳴った。
出ちゃうぞー」
(オイオイ・・・なにもこれに乗ってこなくてもいいだろうが・・・)
無視して出してしまおうか、待っててやるかと迷っていると、厚かましい金髪男は外で「開」のボタンを押しながら、グズな女を待っているではないか・・・
仕方なく、手持ち無沙汰で待ちながら
(どうでもいいから、乗るなら早くしてくれ・・・)
とすっかりシラケていると、女の方はこちらを透かし見るようにしながら
「でも・・・
待ってればいいんじゃ・・・?」
とボソボソと呟きながら、明らかに見知らぬ男と同じハコに乗る事に、戸惑いを隠せない様子だった。
(あの女の様子では、乗ってくる事はあるまい・・・こりゃ助かった・・・)
勿怪の幸いタカを括っていたのだったが、しかしながら金髪男の鈍感ぶりは筋金入りだった (x_x)
☆\( ̄ ̄*)バシッ
「スイマセンが、ちょっと待ってもらえますか・・・?」
初めて、こっちの存在に気付いたように声を掛けて来たので、仕方なく
「ああ、いいよ・・・」
と「開」を押していてやると、グズる女の手を強引に引っ張ってきて
「いいじゃん、あれで・・・」
女の方は明らかにバツが悪そうに、垂らした前髪の奥から上目遣いにこちらを窺うようにしていた。
「あ、スイマセン・・・」
と言いながら乗り込んで来た金髪野郎の無神経さ、しぶとさには呆れるばかりである。
とはいえドアが閉まり密室状態になると、さすがの鈍感な金髪男にも気拙い空気がようやく伝染して来たか「ゴホンゴホン・・・」と盛んに空咳を繰り返しながら、時折こちらの方をチラチラと窺うように気にしていたが、ドアが閉まった途端に未知の存在たるワタクシを意識して、二人揃って急に黙り込んでしまったから、尚更気拙い事この上ない。
フロアに着くまでの僅か数十秒という時間が、実になんとも長く感じられ針のムシロのような乗り心地であった Ψ(ーωー)Ψ
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