これで居間に居ないマリコ姉かレーコ姉どちらかの犯行は明らかだから、早速オヤジは離れ2Fのマリコ姉の部屋を襲うと、そこにはレーコ姉の姿もあった。
「オイ、レーコ!
オマエが、オレの金庫から金を盗ってったのはわかっとるぞ!
白状せー!」
もはや、これまでか・・・が、さすがは付近一帯にその名の轟くような、極道娘のレーコ姉だ。このオヤジの剣幕にも、顔色を変えたのはほんの一瞬だった。
「ワタシが金庫の金を盗んだって?
ハハハ・・・笑わせんなって。
フン、バカバカしい!
ヘンな言いがかりを付けんじゃねーよ!」
と、スケ番の本性を丸出しにしたふてぶてしい態度が、いよいよ顕わとなってきた (キ▼д▼)y─┛~~゚゚゚
「何が言いがかりなもんか!
この前から、ちょこちょこと金庫の金が減っているのをオレが気付かんとでも思っとったか、このバカモンが!
さっきもオレが便所へ行く足音を訊きつけて、慌てて逃げたのはオマエだろうが。オレは見とったぞ!
金庫の鍵が開いて、金が下に落ちとったのはどういうわけか、説明してみ~!」
いよいよ動かぬ証拠を突きつけられ観念か・・・と思いきや、逆に怒りに顔を高潮させたレーコ姉は思わぬ叫びを始めた ∑( ̄皿 ̄;;キィィィィィィィィィィィ!!!
「このドジヤローが!
バカヤロー!
ドジ踏みやがって~!
チクショウ、オマエなんかに教えるんじゃなかったよ~、クソッたれめ!」
と、姉に散々に悪態を吐いた後
「ちょっと~、私じゃなくて犯人はアイツだからね~。
ワタシャ、金庫の番号を教えてやっただけで、後のことは一切知らんわ」
と、不貞腐れてタバコを蒸かし始める始末だ (`Д´)y-~~ちっ
こうなれば今度は、マリコ姉の怒るまいことか。それまでは、クビをすくめてオヤジとレーコ姉の成り行きを見守るばかりだったが、こと自分に火の粉が降りかかってきたから、黙ってはいられない。元々、このマリコ姉の方は、レーコ姉ほどに明け透けなアバズレではなかったものの、ことヒステリーの度合いに関してはさすがのレーコ姉も真っ青なほど、怒ると手がつけられなかった。
「いい加減にせんか~、このバカヤローが!
私がやったのは今日だけで、残りは全部オマエがやったんだろーが!
このアバズレが!」
「なに~!
テメー、ブッ殺すぞ!
クソゴリラが!」
「テメーこそ死ね!
泥棒ザルめ!」
といった調子で、いつもの大喧嘩が始まってしまった。
後に母がレーコ姉から訊いたところによると、偶然目にしたのかはたまたチャンスを窺っていたのかは定かではない(恐らくは後者だろうが)ものの、ともかく視力左右とも2.0という「鳥目」が自慢のレーコ姉が、オヤジが金庫を開けている場面をこっそりと盗み見て番号を憶えてしまったらしい。そして数回に渡り掠め取った金額は、なんと合計およそ20万にものぼっていた。
が、レーコ姉にとっては、調子に乗って最後にマリコ姉を仲間に引き込んだことが運の尽きで、百戦錬磨の悪党であるレーコ姉とは違い、マリコ姉はこうした悪事に手馴れてはいなかった。ここでドジを踏んだのは『天網恢恢疎にして漏らさず』というところであったろう。
が、常々オヤジから
「アイツは心臓に毛が生えとるか、余程アホかのどっちかだぞ!」
と扱き下ろされていたレーコ姉の「真価」が発揮されたのは、実にここからであった Ψ(`∀´)Ψケケケ
この事件があったのは11月頃から12月にかけてであったが、例年通り正月にみなが集まった。マリコ姉が早朝から起きて、おせち料理を作る母の手伝いをしている間、レーコ姉は天下泰平の高いびきでグウスカと寝ていた。おせちを皆が食べ終わった昼過ぎになって、大あくびをしながらやって来たから、母もその存在をすっかり忘れていた。
「そういやアンタ・・・居たんだっけ・・・?」
と言うと「あけましておめでとう」も何もなく
「ちょっとちょっと!
私の喰らいもんはないの~?」
さらにマッハ、ミーちゃん、にゃべっちらが次々に両親からお年玉を貰う光景を見ていたレーコ姉は、持ち前の通りの良い大声で
「ちょっとー。
私の『トシダマ』は?」
と至極当然といった調子で請求したから、これには両親も呆れて顔を見合わせた。
「お年玉って・・・?
アンタのお年玉が、あるはずないでしょうが!
一体、神経はマトモなの?」
呆れて声も出ない態のオヤジに成り代わり、さすがに日頃は温厚な母も怒りを隠せず、しかし小さい子供達の手前もあるだけに、遠回しに精一杯の皮肉をかますと
「なんだ・・・高校生になったら貰えんのかぁ・・・チェッ、つまらん!」
と、露ほどの反省の色もなかった ヽ( ̄ー ̄*)ノオテアゲ
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