2003/12/20

最も尊敬すべきはClassic音楽作曲家

職に貴賎なし」とは昔からよく言われることだが、優劣はともかくとして特定の職業に対する憧れや尊敬の念は、誰しもが持っている。

一般的に尊敬される、社会的地位が高い職業としては

・医師または医学者
・大学教授または研究者
・経営者
・スポーツ選手
・芸術家  

などが挙げられるのではないか。

まず、これらを大まかに分類するなら「頭脳系」、「スポーツ系」、「芸術系」に分類されるが、個人的には「頭脳系」よりは「スポーツ系」や「芸術系」を評価したい。

その根拠として「頭脳系」の方は、必ずしもセンスの必要性なしとまでは言い切らないが、一方では余程のバカではない限りは本気で努力すれば、かなりのところまでは達成可能な分野であると言えるからである。

無論、ひとくちに「頭脳系」とはいっても、国家公務員上級試験(いわゆる「キャリア」)や司法試験といったところになれば、実のところ生まれ持った能力の限界がものを言うのだろうし、同様にいわゆる駅弁大学くらいなら努力次第でどうにかなるだろうが、東大・京大ともなると、これはいかに死に物狂いの努力をしても、やはり生まれ持った能力がなければダメな世界だ。

それでもある程度のところまでは、努力次第でどうにかなりそうな分野ではある。

これに対して、スポーツはどうか?

例えば100mを走るのに15秒かかる人物が、毎日数百本のダッシュを死に物狂いで繰り返したら、オリンピックに出られるか?

これは絶対に無理で、精々が14秒台か運がよくて13秒台に縮められれば上出来の部類であり、世界トップレベルの910秒台となると、これはもう絶対的に限られた才能というほかはない。

そして子供の時に鈍足だった人物が、成長して急激に伸びるという場合も例外的にはあるだろうが、通常はオリンピックに出るような才能の持ち主はすでに小さな子供の頃から、周囲が争う意欲をなくすくらいのずば抜けた才能を発揮しているのである。

芸術もまた同様に、気合いだけではいかんともしがたい分野である事は、たかだか学生時代の小さな経験に照らしてみるだけでも、歴然としている。

その証拠に、これまたスポーツ同様、子供の頃は下手糞な絵を描いていた人物が、成長して突如として目を瞠るような傑作を次々と描いていくようなことは稀で、やはりこうした才能は小さい頃から、周囲を驚かせるよるようなケースが殆どなのである。

 スポーツと芸術の比較となると、これは非常に難しいが、どちらが上か下かということは別として、スポーツ選手の寿命は総じて短い。

ゴルフなどのソフトなスポーツを例外とするなら大体40前で引退だから、人生7080年のうちの精々20年が良いところで、これに対して順調に行けば芸術家の寿命は遥かに長い。

「芸術家」と言っても画家や作家など様々あるが、その中で個人的に最も尊敬(というよりは崇拝)してやまないのが、Classis音楽の作曲家である。

この理由は、実に単純明快だ。

絵や文学は、その巧拙を別にするなら描くこと自体は、小学生どころか幼稚園児でも創作が出来てしまう世界であるが、こと作曲ともなるとたとえ大人であろうと知識のないものには、まず手も足も出ない分野なのだから。

作曲とはいっても、猫が気紛れにピアノの鍵盤上を歩いたら、偶然に音楽らしきものが出来た・・・という可能性もないとは言い切れないが、ことオーケストレーションとなっては、素人にはまったく手も足も出ない世界である。

そもそも、楽器の演奏という事では何の心得もないワタクシとしては、このオーケストレーション」というものに対しては、尊敬などは遥かに飛び越えて畏敬の念さえ憶える

どんな楽器にせよ、その道を極めるのはおろか楽器の特性を知るだけでも容易ではないのは、あるひとつの楽器を極めていけば、それだけで一生喰うに困らないという事実を見れば明らかだ。

ところが作曲家の場合は、最低限でもオーケストラに必要となるありとあらゆる楽器を、自在に頭の中で(或いは実際に)操るくらいの知識は、絶対に必要なのである。

ただひとつの楽器をマスターするだけでも難事なのに、これほどにありとあらゆる楽器の特性に精通した一流作曲家となると、最早「魔法使いのような神がかり的な存在」としか言いようがないではないか。

勿論、それにはそれなりの努力はあるのだろうが、やはり生まれ持った脳の構造が優れて特殊であるとしか思えないのである。

絵画や文学、或いは彫刻などもそうだが、下手は下手なりに描いたり創ったりという創造が楽しめるのは、ともかく目に見えるものを対象にすればよいからだ。

一方、音楽というものは、そもそも何もない「無」の状態から「音」という形のないものを創り上げていくという極めて特殊な世界であり、いかに意欲があろうと知識のない素人にはまったく手も足も出ないのだから、これを最も尊敬してやまないのは当然なのである。

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