「奈良の仏像・京都の庭」といわれるように、京都といえば他の地域では滅多にお目にかかる事の出来ない「名勝庭園」や、更に格上の「特別名勝」など実に数多くの名庭があるが、この詩仙堂庭園といえば庭園ファンにも人気の高いので良く知られている。
元々、この詩仙堂は、かつて徳川家康家臣の戦国武将だった石川丈山が隠棲を決め込むために造営した庵で、実際に晩年の30年間をここに蟄居して風流な余生を送ったといわれているところなど、やはり同じように戦国の世から身を引き東山殿(銀閣寺)を造営して、文人として隠棲した足利義政を彷彿とさせるところがある。
詩仙堂は徳川家の家臣であった石川丈山が、隠居のため造営した山荘である。 名前の由来は、中国の詩家36人の肖像を掲げた詩仙の間による。詩仙は、日本の三十六歌仙にならい林羅山の意見を求めながら、漢晋唐宋の各時代から選ばれた。肖像は狩野探幽によって描かれ、詩仙の間の四方の壁に掲げられている。
詩仙堂は、正確には凹凸窠(おうとつか)という。凹凸窠とは、でこぼこの土地に建てられた住居の意味であり、建物や庭園は山の斜面に沿って作られている。
丈山は、詩仙の間を含め建物や庭の10個の要素を凹凸窠十境と見立てた。寛永18年(1641年)、丈山59歳の時に造営され、丈山は寛文12年(1672年)に90歳で没するまで、ここで詩歌三昧の生活を送った。
「小有洞」という門を潜り竹林の中の道を行くと、石段の上に「老梅関」という門があり、その先に詩仙堂の玄関がある。玄関上は3階建の「嘯月楼」となっており、その右手(西側)には瓦敷の仏間と六畳、八畳の座敷、左手には四畳半の「詩仙の間」、「読書の間」など多くの部屋がある。このうち、嘯月楼と詩仙の間の部分のみが丈山当時の建築で、他は後世の改築である。
庭園造りの名手でもある丈山自身により設計された庭は四季折々に楽しむことができ、特に春(5月下旬)のサツキと秋(11月下旬)の紅葉が有名で観光客で賑わう。縁の前に大きく枝を広げた、白い山茶花も見所のひとつ。一般にししおどしとして知られる、添水(そうず)と呼ばれる仕掛けにより時折り響く音は、鹿や猪の進入を防ぐという実用性とともに静寂な庭のアクセントになっており、丈山も好んだという>
出典Wikipedia
「丈山庵」という正式名称が示す通り、この丈山も義政同様に造営に当たっては全般的な指揮をとって自らの好みを反映させたというところなどは、戦国の時代に産まれながらその芸術家としての素養には目を瞠らざるを得ないところであろう。義政もそうだが当時の時代背景からか、当時の人々は「月」というものに対してかなり宗教的な思い入れが強くあったらしく、この詩仙堂も仏間の上に嘯月楼と呼ばれる月を眺めるための望楼を設けているのが、非常に特徴的な造りであった。
「詩仙」の由来は中国の詩家によるもので、丈山自らが選んだ36詩仙の肖像を狩野探幽に描かせたものに自作の詩を添えた「詩仙の間」がルーツであり、丈山自身は詩にも書にも堪能な稀に見る芸術的な素養を備えていた事がわかる。
また寺社などでよく見かける「鹿おどし(正しくは添水=そうず)」は、竹筒の中央を固定させ筒に水を引き入れ水の重みによって傾き、その弾みで石を打ち音を出すという仕掛けで、猪や雀を脅すためにこの丈山が最初に考案したものと言われている。更に丈山の才は作庭にも及び、前述した京を代表する名庭の一つに数え上げられる庭園も、大部分が丈山の設計によるものらしい。

詩仙堂庭園

詩仙堂庭園
書院の前には、白砂にさつきの古木を配置した庭園があります。5月の下旬、さつきが色づく頃は、後ろの木々の新緑と、さつきの花のピンク、葉の緑、庭の白砂という、この自然が織りなす色のコントラストがとても魅力です。書院の縁側に座って、この自然の絵画をのんびり眺めていると、世間の忙しさから離れた別世界にいるようで、ついつい時間が経つのを忘れてしまいます。
また、詩仙堂の庭園は降りて散策することができる回遊式庭園で、地面の白砂とさつきの美しい刈り込み、藤や花しょうぶ、アジサイ、周囲の木々による紅葉など、四季それぞれに美しい姿を見ることができます。庭園には、残月軒という茶室や東山から引いた小川なども配置されており、江戸時代初期の作庭の名人と呼ばれた石川丈山の庭への思いを感じます。
鹿おどし(ししおどし)
鹿おどし(ししおどし)
詩仙堂の回遊式庭園の一角には、石川丈山が動物をおどかすために発案したと言われる『鹿おどし』があり、庭内にその独特の音が響き渡っています。ちなみに『鹿おどし』とは、竹筒の中央部を固定させてから、筒の中に水を入れ、その水の重みによって傾いた筒が弾んだ時に石を打ち音を出すもので、日本で初めて考案されたものと言われています>
詩仙堂の庭に咲く花は、梅に始まり椿、ツツジ、山茶花、紫蘭といったメジャーなものからほととぎす、京鹿子、すすき、サンシュユアスチルべ、ベニウマ・オオデマリ、ショウマ、ミヤコワスレ等等、一々あげていてはキリがないほどである。
肝心の紅葉はやや時期が遅れ、朱の色付きは少しピークを過ぎていたのには心が残ったが、パラパラと降ってきた小雨に洗われた後に射してきた木漏れ日を浴びた庭園中央のススキが、あたかも主役の座を奪うかのように燦然と輝いて見えた。
(ススキって、こんなに美しかったのか・・・)
錦秋に彩られた庭園。茶室「残月亭」の鄙びた佇まいをバックに、清楚な金色に輝きながらサラサラと揺れるすすきの鮮やかな対比と、時折思い出したように「コーン・コーン」と鹿おどしの音が優雅に響き渡る。
秋深し。
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