「ポチはどこへ?」から、およそ20年後の話である。
当時まだ独身で、ハシリのコンピューター会社に務めていたマリコ姉も、時流れて今や三児の母として、ベテラン主婦の座に納まっていた。何の因縁か、高校生の長女が、友達から子猫を貰い受ける話が持ち上がった。末娘もこの年から小学校に入学し、日中は少しヒマの出来たマリコ姉は、退屈凌ぎにはうってつけとなりそうなネコを歓迎し、珍しくもせっせと世話を焼いていたらしい。
「私って、案外動物好きなのよねぇ。フフフフ」
などと自慢していたのも可愛らしい仔猫のうちで、やがて持ち前の飽きっぽさとヒステリーから、家族の知らぬ間にどこかへ捨ててしまったらしい。学校から帰ると、忽然と姿を消してしまったネコに3人の子らは当然不審を感じはしたものの、何せマリコ姉のヒステリーはマコトに尋常ならざるものだけに、亭主のみならず子供たちにとっても恐怖の的。うっかり非難などできるものではない。また気まぐれなマリコ姉だから、家計を楽にしようと思い出したように何度かパートを始めはしても、ワガママかつ短気な性格だからどれも長続きせず、日中は独り居の無聊を持て余していた。
そのような日常が続いていた頃、亭主の勤める大手の会社が時ならぬ好景気に見舞われ、臨時ボーナスが支給されるという嬉しいサプライズが訪れる。念願の家族サービスを済ませても、まだ優に10万ほど予算が余る嬉しい誤算が出来し、早速浪費家のマリコ姉は
「さあ、みんな!
この10万のお金を何に使う?」
と、3人の子供に問い掛けた。2人の娘は
「ペットが欲しいよー!
可愛いニャんコがいいわ~!」
と声を揃え、また小学校高学年の長男坊は
「オレは、犬の方がいいな」
などと、口々に希望を述べ立てた。
勿論、結婚前からマリコ姉によって、すっかり去勢されていた大人しい亭主に意見はない。犬嫌いのマリコ姉は、長男の希望を却下しネコに決めるや早速、一家でペットショップへと出向いたところ、そこで某サラ金CMよろしく、すっかり一目惚れをしてしまったアメリカンショートヘアを、気前よく大枚 10万円也で買い落としたのである。
日頃は滅多に意見などしたことのない、ロバのようにおとなしい亭主から、汗と涙のボーナスを搾り出して買い落とした血統書付きとあって
「今度のヤツは、前のノラとは違って上等なんだからな。間違っても、捨てんといてや・・・」
などと、珍しくクギを刺されたが
「捨てるって・・・なんなの、それ?
ちょっとぉ、 人訊きの悪いこと言わんといてよー」
などと、得意のお惚けを決め込んでいた
柱| ̄m ̄) ウププッ
そうして数ヶ月間、家族みなから大事にされてきたアメショーだったが、或る日子供達が学校から帰ると、またしてもその姿が忽然と消えているではないか オ―イ・・ (;´д`)ノ
当然、子供らはマリコ姉に
「ママ?
ネコがいないよ・・・?」
と問うてみるが、マリコ姉は
「いつの間にか、居なくなってたんだよー。どこ行ったのか、私も不思議でしょうがないんだから。まあネコだから、そのうち帰って来るでしょうよ」
と判で捺したような生返事を繰り返すのみで、さして心配しているような顔色は窺えなかった。勿論、高価な血統書付きとあって、うっかり外に散歩などに出しては人に浚われてしまうというので、日頃から充分注意を払っていてネコの方も臆病になっていただけに、アメショー自ら外に出ることは考えられず、そこには明らかに「人為的な作為」が含まれていると見るべきである。が、重ねて何度も問うては
「知らないって言ってるだろ!
煩いな、もう!」
と例によってヒステリーの発作を誘発するだけだから、家族誰もが
(本当は、またママが捨てたんでしょ?)
と疑いながらも直接抗議する勇気のないまま、いつしかウヤムヤとなってしまったのである。
疑惑を募らせる家族には、あくまで「謎の行方不明!」で押し通した、マリコ姉。やがて内心では激怒しながらも、怖い母には直接には言えない思いを涙ながらにぶちまけに来た長女から
「絶対、ママが捨てたんだよー。
前の時も、そーだったもん・・・」
と事の一部始終を訊いた、にゃべっち母は義憤にかられ
「どーせ、またアンタが捨てたんでしょ?
なにせアンタには、ポチの前科があるしねー」
と問い詰められたが
「本当に知らんのだって!
知らん間に、どっかへ消えてたんだよ~!
人に訊いたんだけど、ネコって案外そんな気まぐれなところがあるみたいだよ~」
と、あくまでも頑強に否定を繰り返すばかり。結局、この件も過去の「余罪」同様、明確な証拠がないのを勿怪の幸い「私は無実だ!」で押し切ったマリコ姉だったが、前科数犯の「オオカミオバサン」の言を信じる者の居ようはずはなかった (* ̄m ̄)ブッ
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