2003/12/11

不滅のカリスマ効果(「長嶋様は神様だ」の詩の主題による変奏曲part1)


 熱狂的なミスター信奉者として知られる某作家の詩(?)に、こんなようなのがありました。

『長嶋様は神様だ
長嶋様は神様だ
長嶋様は神様だから神様なのだ』(以下略)

ミスターの現役時代を知らないワタクシは、当然の事ながら最初にこの詩を目にした時は笑ってしまいましたが、しかしミスターの存在を知ってから四半世紀以上が経過した最近になって

(確かにミスターという人は、ある意味では神のような存在なのかも・・・)  

と、感じられるようになって来ています。

現役時代のミスターを知る、選手や関係者などの話を訊いているとまるで「生き神様」のような扱いですが、確かにミスターがプロ野球界に齎した影響を考えるなら「神様」と言うに相応しいものがあります。

ミスター現役時代の巨人といえば、常にミスターを中心に総てが廻っていた事でしょう。

言うまでもなく、当時の巨人といえばキラ星の如きスターが何人も犇いていた黄金時代ですが、そのスター達の誰しもがミスターの前に出てしまえば「月の前の星」のように、すっかり霞んでしまったようです。

これは、あの「世界の王」さんとて例外ではありません。

良く言われるように、記録だけを見れば本塁打数では王さんの868本に対し、ミスターは444本と約半分にしか過ぎず、安打数でも張本の3085本に対し2471本と2割は少ない。

ここに野村を加えるなら、この中では唯一大学出で実働年数は17年と短いミスターとはいえ、王(22年)、野村(26年)、張本(22年)との比較では、本塁打・安打ともにミスターが勝っているものは一つもない事からもハッキリしているように、数字(実績)を超えた存在感がミスターのミスターたる所以なのでしょう。

敢えて穿った見方をするならば、巨人という組織はとにかくこのミスターなる稀代の魅力的で、スター性を備えた人物を最前面に押し立てておきたいがために、様々な意味でこのミスターを脅かすような存在が出てくると、これを排除してしまおうという目に見えぬ力が働くのではないか、とも勘繰りたくなります。

こう書くと「そんなバカな!」と思われるかもしれませんが、これは巨人という組織が意図したものか否かは別として、組織の力学を現象面から捉えた話で、その答えはあの「世界の王」さえもが、半ば巨人を追われるような形でダイエーに移らざるを得なかった事からみても、あながち我田引水と一笑に付すことも出来ないであろうと考えらないでしょうか。

 ミスターと同じ時期に現役時代を送った選手といえば、いわゆる「9戦士」と言われる面々ですが、あれほどに巨人=プロ野球界の繁栄に大貢献をした王さんを筆頭に広岡、森、黒江等など、それぞれが皆ミスターのライバルであったり、或いはミスターにも遠慮会釈のないうるさ型の顔ぶれであり、こうしたミスターの行く手に障害と成りうるような危険性を孕んだ人物は、総て石持て追われるが如しという歴史は、歴然と見て取れます。

当の本人達にとっては無論腹立たしい限りでしょうし、個人的には恨みつらみもある事でしょうが、客観的に見るならば(王さんはともかく)巨人にいる限りは、100年待っていようが転がり込んでくる可能性はなかった監督の座に(他球団で)就いた事により、その持てる能力を存分に発揮できたのが広岡であり森であり、またこの両氏をヘッドコーチとして支えてきた黒江でした。

その結果は、弱小チームだった西武が広岡・森という頭脳を導入した事により、巨人と並び賞されるライバルにまで伸し上がって来たり、また最近では王・ダイエーが優勝の常連となるなど、かつてはどこまでも永久に続くとも思われた巨人一極時代から、群雄が割拠するプロ野球界全体の活性化に繋がっている事は、誰もが認める通りです。

また間接的には、土俵の違うパリーグに居ながらも、常にミスターに対して(勝手に)ライバル心を持ち続ける事でスーパースターとしての地位を築き、また指導者としてセリーグ参入後は、弱体の代名詞だったヤクルトを常勝チームに変身させて一時代を築いた、野村のあのパワーの原動力も

「ミスターという、ひまわりのような存在があってこそ」

とは皮肉交じりにも、本人自身が折りにふれて認めている事です。

同じように、中日と阪神で巨人に果敢な挑戦を続けた星野のエネルギー源も、誰もが知っているようにその原点はONにあるといった調子で、例を挙げていけばキリがないほどに、その影響力はリーグの壁をも遥かに超えて計り知れぬ程に大きなものがあるでしょう。

無論、これら総てはミスター自身が意図するところではまったくなく

「巨人にいる限り(或いは、巨人がらみでいる限り)は、所詮ミスターの引き立て役に甘んじるしかない・・・」

という苦渋の決断から生まれた、いわばヒョウタンからコマのような思わぬ副産物でしたが、それだけ「ミスター」という大きな存在感が球界全体に渡って、これだけの活気のある大改革を齎したと考えるなら、確かに「長嶋様は神様だ!」  という迷フレーズも、大いに説得力があると言えそうです。

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