2003/12/13

「世界の王」の悲劇(「長嶋様は神様だ」の詩の主題による変奏曲part2)



 思えば「世界の王」さんほど、あれだけずば抜けた実力を持ちながら悉くに「ミスター」という巨大すぎる存在に、行く手を阻まれ続けた悲運の人もいないでしょう。

早実高時代はエースだった王さんは、甲子園ではノーヒットノーランをやってのける一流投手として選抜大会では優勝投手にもなり、本来であれば大騒ぎして巨人入りとなるところでした。

が、その前の年に鳴り物入りで入団した、六大学のゴールデン・ボーイことミスターが注目を一身に集めていたせいで、すっかり霞んでしまう事になったのが、そもそものケチの付き始めでした。

また一本足打法を習得してからも、あれだけのズ抜けた成績を残しながらも「ミスター」という不動の4番が鎮座ましましていたがために、本来は王さんに最も相応しい指定席になるはずの4番の座に座ることも叶わぬまま、ミスターの引退を待つことになります。

またオールスターや日本シリーズ、或いは天覧試合といった大舞台で活躍をして見せても、最後の最後のところではいつも一番オイシイところを掻っ攫っていくのが大得意であったミスターに、千両役者として最大の見せ場を奪われ続けるという廻り合わせは、如何ともし難かったようです。

こうして巨人に大貢献したはずの王さんも、結局は「ミスター大事」という巨人の大方針の前には邪魔者(?)に過ぎぬとばかり、半ば追い立てられるような形で解任されたのは周知の事実です。

王さんの偉いところは、あれだけの実績を残しながらもスッパリと巨人への未練を断ったことで、巨人に居る限りはいつまで経っても「ミスターの引き立て役」に過ぎなかった座り心地の悪さからようやく開放され、ダイエーで巨人時代には終ぞなしえなかった日本一に二度まで導いたのは、まことに立派でした。

あのまま巨人に残っていたならば、恐らくはいつまでもミスターの引き立て役をやらされるに止まっていたでしょうから、結果的には外に新天地を求めたのは正解だったでしょうし、逆に言えばダイエーで成功したのも本人の努力は勿論真っ先に挙げられるとしても、ミスターという絶対不動の存在がその方向へと導いていったという見方も、やはり一面の真理といえます。
 
 しかしながら王さんという人は、どこまでいってもミスターに邪魔をされ続ける星の下にある方のようで、今年も折角日本一に輝きながらも丁度そのタイミングを狙ったかのように、何の苦労もなく号令一つで創り上げた「ドリームチーム」率いる「長嶋JAPAN」のオリンピック予選突破に世間の関心が移ってしまうという悲運に見舞われてしまった事は、まことに重ね重ねも気の毒としか言いようがありません。

ともあれ野球関係者にとっては、ミスターといえばそれこそ神様のような存在でもあり、しかもミスターが大のオリンピックオタクと来ているだけに、余計に始末が悪かった

殊に、プロ解禁となったオリンピック野球には殊のほか関心を示していた、ちょうどそんなタイミングに巨人の監督の座を退いて浪人の身になってしまっては、アマ球界のお偉方の歴々としてもこの「生き神様」を放っておく訳にはいかず、必然的に代表監督を依頼する運びとなったのであろう経緯は、容易に推測できます。

敢えて言ってしまえば、ミスターというお方は図体の大きな子供のような方で「日本代表」というこれまで手にした事のなかった珍しくも高価なオモチャを手に入れ、ひときわ歓んでいるようにも見えます。

しかも、そこにはこれまで(巨人監督時代)のような限度を遥かに超える、超一級の豪華なアイテムを思いのままに手に入れて自由自在に操る事が出来るという、まさにミスターにとっては長年夢見てきた最大の贅沢が叶う飛び切りのオモチャであり、これに新しく刺激的なもの好きのミスターたる人が飛びつかないわけはなかったでしょう。

巨人監督時代、あれほど「4番ばかり掻き集めて、悦に入っている」などと散々に批判された補強は、湯水の如く大枚を垂れ流した割りに芳しい結果を残す事の出来なかったミスターですが、性懲りもなく(或いは、まだまだあれでは不足だと感じて?)今度はオリンピックという世界を相手にした大舞台で、またしても同じ愚を繰り返そうとしています。

が、事は「巨人」という一企業の所有するチームの話ではなく、国家としての威信をかけたオリンピックという舞台なんですが、そうした認識はご本尊には欠片ほどにもなさそうで (*m*)ブブッ

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