2004年の大晦日は、雪の中を自宅で迎える事となった。
大雪予報の中、何とか持ち堪えていた午前中に急いで買出しを済ませて帰って来ると、ちょうどタイミングを見計らったかのように雪が降り始め、ギリギリのところで正月料理を確保し、ほっと一息。早速、冷蔵庫一杯に詰め込むと、ようやくのことで部屋の掃除に取り掛かったところだった。
時は、日暮れ近い午後4時。
外は昼から降り詰めの雪で白一色に染まり、普段は暖房を入れなくても20℃近い室温を保っているさしもの暖かい部屋も、設定温度24℃でエアコンを効かせたてはいたが、津々として冷気が漂って来るような寒い日である。
そんな寒い中で、窓を開けて掃除機を掛け始めた途端のことだ。
ボンッ
という異音を残し、部屋中の電気という電気が総て消えてしまった。
(しまった・・・ブレーカーが落ちたか・・・?)
思わず慌てたのも無理はない。なにしろ住み慣れた家ではなく、数ヶ月前に入ったばかりのマンションである。入居した当日、ブレーカーの位置は確認して中身を一瞥はしてはいたが、それ以来3ヵ月近くの平和な間は、一度としてブレーカーの存在などは意識した事がなかった。
引越し当初はまだ台風シーズンだっただけに、万一の事態に備えて百均で懐中電灯を買ってはいたものの、生来のものぐさのせいで大した台風に見舞われなかったのを良い事に、結局乾電池も入れずに段ボール箱の底の方に埋もれたままにしていたツケが、ここで廻って来た形だ。
午後4時とはいえ冬至を過ぎたばかりであり、また大雪の舞っているようなこの日の天候だから、当然の事ながら既に薄暗くなっていた。うろ覚えの記憶を頼りに、ブレーカーの在り処だけは探し当てたものの、蓋の開け方すらわからない状態は、まさにパニック一歩手前である。
このパニックの原因は、物件の管理窓口が30日から年末休暇に入っていたのを知っていたためでもある。
(万一、考えているような単純なブレーカーの故障ではなく、ヒューズが飛んでいたり最悪漏電していたりしていたケースを考えたら・・・管理会社仕事始めの4日までを、真っ暗闇の寒い部屋で過ごさねばならない事になるわけか?)
そう考えると、暗澹たる気持ちにならざるを得なかったのも、無理からぬところだった。
とにもかくにも、暗い中ではブレーカーの蓋の位置の特定すらも困難であり、懐中電灯を取り出してはみたものの、やはり単二に比べ使用頻度の低い単一乾電池の用意はなかった。部屋中の電気という電気は勿論、浴室乾燥機にエアコンなど総ての電気製品が落ちてしまい、辛うじて生き残っていたのはバッテリー自家発電に切り替わったノートPCのみだが、これにしてもほんの数時間後でバッテリーが切れてしまったら、もうまったく使えなくなってしまうのである。
(最悪じゃー。
参った参った・・・このままブレーカだけで直らなかったら、一体どうするんだ?
少なくとも、マンスリー窓口が年始となる4日までは寒い暗闇の中で、PCもなにも出来ず過ごさねばならんのか?
大量に買い込んで来た正月料理も、全部腐ってしまう・・・)
と最悪のケースばかりが頭を過ぎる中で、クローゼットからジャンパーを取り出していた。
(この大雪の中、出来る事なら電池を買いに行きたくない・・・)
という意識から、藁をも掴む気持ちで無駄とは思いながらもマンスリー窓口に電話をしてみると、年末年始緊急窓口というフリーダイアルが設けられているではないか。
対応に出たスタッフの誘導でブレーカーの蓋を開けると、思った通りブレーカーの主電源が落ちていただけで、無事に復旧した。
(まったく・・・柄にもなく、大晦日からバタバタしてしまった)
と苦笑いだったが、よくよく思い出せば地元(愛知)で過ごしていた前の年の大晦日も何かの拍子に突然ヒューズが飛んでしまい、電力会社から派遣されて来たウドの大木のようなボンクラ技術員に散々に悪態をついて、大騒ぎしていた事を思い出したのであった ( ´艸`)ムププ