『ツァラ』に惚れたとは言っても、最初の頃は35分程度のこの曲のうちの冒頭の2分程度の、あの有名な「日の出」を描写した部分だけであった。
聴き始めた頃は、恐らくは音楽史上でもベートーヴェンの『交響曲第5番』か、或いはチャイコフスキーの『ピアノ協奏曲第1番』と、どれが世界一有名かを争うかと思われるくらいに有名な、あの強烈なオープニングばかりにどうしても心を奪われてしまい、続く本編からがどうにも頭に入ってこないのも無理はない。あの60人を超える大編成オーケストラの中にあって、6本のホルンが素晴らしい味を出しており、オルガンによる独特の効果も加わって、音響効果はこれ以上ないほどに満点なのである。
物事の形式に拘るところのあるワタクシは、その後本格的にClassisを聴いて行こうと決心をした時、真っ先に体系だったプランを立てるため数冊の解説書を買い込んできて、片っ端から読み漁った。その際、R.シュトラウスに関しては、必ずといってよいくらいに『色彩的オーケストレーションの達人』 などと評されているのが、常であった。
(「色彩的オーケストラ」ってのは、一体なんなんだ・・・?
音に、色なんてあるのか?)
と、その不思議な表現を目にする度に面喰らうと同時に、興味も津々といったところだった。
そうして実際に、この『ツァラ』を聴いた時に
(「色彩的音楽」とは、まったく上手く表現したものだ・・・)
と、思わずニンマリと膝を打ったのである。
この交響詩の構成はニーチェの作品テーマに沿って、以下の8曲によって構成されている。
1.後世の人々について
2.大いなる憧れについて
3.歓喜と情熱について
4.埋葬の歌
5.科学について
6.病から回復に向かう者
7.舞踏の歌
8.さすらい人の夜の歌
1.後世の人々について
2.大いなる憧れについて
3.歓喜と情熱について
4.埋葬の歌
5.科学について
6.病から回復に向かう者
7.舞踏の歌
8.さすらい人の夜の歌
前半から、やや重苦しいような比較的お堅い曲調が続くのは、テーマが哲学書だから無理もないが、原作では第7章の「舞踏の歌」は全編中でも最も難解なところである。ところが、この「舞踏の歌」はタイトルの通り、楽しいワルツに仕立ててしまったところが、R.シュトラウスの面目躍如たるところだ。そして「舞踏の歌」の、なんと美しく魅力に溢れている事か。
「これぞ色彩的オーケストラ!」と、思わずニンマリとせずにはいられないような煌びやかな美しい曲で、色彩感の豊かさばかりでなく、オケ全体が歌うような圧倒的な迫力には、背筋がゾクゾクしてくる。 こんなに爽やかなお色気が濃厚に漂って来る曲は、まったく後にも先にも聴いたことがないと言っても良い。
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