2004/08/01

卒業式の号泣


 卒業式

小学校時代に続き、生徒会長にゃべと副会長・香による卒業の言葉も滞りなく終了し、父兄らが帰っていった講堂には生徒たちが余韻を惜しむかのように、また先頃終えたばかりの高校受験の話題が、あちこちで持ち切りであった。

そんな中、突如31組の輪の中だけが何故か異様な雰囲気に包まれ、大役を終えて虚脱した感のあるにゃべもみなの集まる方へと視線をやると、女子の集団の中で一人、泣き崩れる生徒の姿があった。「犯人」は案の定、お騒がせ女のサッコである。

「なに泣いてんだ、アイツは・・・?」

と何人かの男子生徒は、すっかりしらけ気味。卒業式の雰囲気に感極まって号泣しているものだと思い込み

「ガラに似合わず、随分と涙脆いやっちゃな・・・」

と最初は気にもとめなかったが、どうやらそれにしては様子がおかしい。単に悲しくて泣いているにしては、異常なまでの昂ぶりの様子なのである。次第に、様子のおかしさに気付いた男子生徒らも

「なんなんだよ、アイツは・・・まったく最後まで、人騒がせなヤローだ」

「また、悲劇のヒロインにでもなったつもりか・・・」

これまでの鬱憤をぶつけるかのように、マサらサッコ嫌いの男子は、ここぞとばかりこき下ろしていた。

これまで書いて来たように、サッコの『A東高』受験までには、紆余曲折があったらしい。

『A高』を目指し、死に物狂いの努力の成果あって何とか、滑り込みでボーダーライン上まで浮上してきただけに、本人はダメ元覚悟で『A高』へのチャレンジを申し出たようだったが

「『A高』合格は難しいな・・・そんなリスクを犯すよりは、確実に合格できる『東高』にしとけ」

と担任に諭され、泣く泣く『A高』を断念という経緯があったらしい。そんなわけで、卒業式の間『A高』にチャレンジ出来なかった悔しさが突き上げ、式がクライマックスに向かうにつれ、自らの感情の昂ぶりを抑えきれなかった、ということのようだった。

「それなら、自分で願書を持って行ってでも『A高』を受験すればよかったんじゃねーかよ・・・どこまでも、人を馬鹿にしたヤローだ」

とマサら、当初からの『東高』志望者らから顰蹙を買うハメに。

この年同じクラスだったマサと、犬猿の仲だったサッコが同じ『A東高』進学が決まったのは、実に皮肉だ。マサと言えば、小学生時代は、にゃべ、ムラカミとともに「不動のトップ3」を形成していた悪友トリオ不動の一角だったが、中学から急降下していった。

名門私立『東海』合格で幾らか迷った末、結局は通学が楽な地元の『A高』に進学を決めたにゃべ。『B小』、『B中』に続いて同じ学校となる『A高』進学組は、男子がムラカミ(推薦)、マチャら、女子は香、梓(ともに推薦)、香里、奈津子、美佳、小夜子ら。

そして、推薦面接で合流した『C中』の真紀。同じ『C中』から推薦のゴトーは『東海』を受験し

「オレは『東海』に行くかも」

などと嘯いていただけに『A高』に進学するかは不明だった。またヒムロは、遂に最後まで『東海』を受験したのかどうかさえ、わからずじまいに終わった。 

当時、にゃべっちが密かに「『B小』三大美」と目していた「小夜子・千春・香」のトリオのうち、千春の進路も結局、最後までわからないままに卒業を迎える事になったのも、なんとも心残りである。

野球少年のオグリは、地元の公立商業高校へ進学。「芸術家」シモッチは、志望通り地元の工業高校へ、サッカー部の盟友イモも同じ工業高とはいえ、こちらは学力に応じて自動的に振り分けられたためで、志望校ということではない。超人ミグは、スポーツ推薦で私立の中京に進学が決まっていた。

この結果、女子の方は先にも記した通り(千春は保留だが)お気に入り組がごっそり『A高』進学となったのに対し、男子の方は小学生時代からのなにかと想い出の多いイモ、マサ、シモッチ、オグリ、ミグらとは別離となってしまう事に。

「ま、仕方ねーか・・・出会うも人生、別れも人生・・・」

と、無理にも自らを納得させるしかなかった。

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