今回から正式競技として採用された女子レスリングは、四つある階級の日本代表全員が世界チャンピオンという超豪華なメンバーとなりました。終わってみれば七階級のうち五階級を制覇した女子柔道でさえ、戦前の予想では「複数のメダルが目標。3つ獲れたら万々歳」と言われていた事を考えるなら、およそ半分の四階級で「複数のメダルが目標。全階級制覇も決して夢ではない」と言われた女子レスリングへの期待が、いかに大きかったかがわかります。
これまで女子レスリングは正式種目ではなかった事ばかりでなく、派手な足技や投げ技の応酬で素人目にも楽しめる要素の強い柔道に比べ、見た目は比較的地味な攻防に終始する競技という関係からか、これだけの有力な顔触れが揃いながらも注目度は今ひとつでしたが、ここへ来て突如として注目を集める事になり、代表選手たちもいつにも増して燃えていたことでしょう。
中でも浜口京子選手は、元プロレスラーのアニマル浜口の娘として選手団の旗手を務めるなど、父とともにマスコミへの露出は格段に多かったし、残る3選手も浜口選手ほどではないにせよ、奇しくも3人揃って同じ名古屋の女子大生という関係から、地元の新聞ではしばしばその活躍が大々的に採り上げられていたから、子供の頃からプロレスマニアだったワタクシにとっては、4人ともに馴染みの深い選手たちでした。
そんな中、四階級が一斉にスタートするや、いずれも順当に準決勝まで勝ち上がり、最も注目された浜口選手は惜しくも準決勝で敗れて早々に「全階級制覇」の快挙は潰えたものの、残る3選手は決勝に勝ち進み、結果的に「金2.銀1.銅1」は、充分に立派な成績と言えるでしょう。
姉妹でオリンピックに出場し、ともに金メダルを獲ろうと誓い合った伊調姉妹のうち、先に登場しながら惜しくも決勝で判定負けとなった姉の千春選手は、表彰式が終わるまで一度として笑顔を見せることのないあの仏頂面が、悔しさの大きさを物語っていました。
「また銀かという感じ・・・オリンピックの銀メダルといっても全然嬉しくない・・・」
と心底ぶっきら棒な口調でインタビューに答える姿は、どうにも痛ましくて観ているのが苦痛になってきました。
次いで登場した吉田選手は、注目度こそ浜口選手の陰に隠れるような形でしたが、これまで外国人選手には一度も負けたことがない70連勝中という驚異的な強さを誇る選手であり、唯一のライバルといわれた同僚の山本選手は代表選考会で破ってきているだけに、よもや破れる事はないだろうというのが関係者の一致した見方でした。
とはいえ柔道の井上選手を例に挙げるまでもなく、得てしてこういったガチガチの本命に限って呆気なく肩透かしを喰らう姿は、これまでに何度も見てきただけに、意外な苦戦となった準決勝では
(まさか・・・)
と心配されましたが、最後の決勝では抜群の安定感を見せ、まったく危なげのない試合運びで金を捥ぎ取ったのは、さすがでした。
最後に登場した伊調姉妹の妹の馨選手は苦しい戦いの末、決勝では強敵相手に終盤の見事な大逆転で堂々の金メダルです。馨選手の金メダルそのものは、大変に喜ばしい事であるのは言うまでもありませんが「一緒に金メダルを獲ろうね!」と誓い合って、ともに頑張ってきた姉の千春選手が銀メダルに終わった事を考えるなら、なんとしても複雑な気持ちにならざるを得ません。内容的にも紙一重の判定差で銀に終わった千春選手と、やはり紙一重ながら最後の逆転で金をモノにした馨選手。今更ながら、改めて勝負の世界の非情さというものを痛感させられました。
前日は、野口選手が快走で金メダルを獲得した女子マラソンを観ていて午前3時まで起きていたワタクシですが、この日も眠い目を擦りつつ馨選手の金メダルを見届けた時は結局午前2時近くになっており、元々弱い朝起きが益々つらくなりましたが、それでも起きていた甲斐があったというものです。この女子レスリングの2つの金を加え、遂に日本選手の金メダル獲得数は実に前回の3倍の15個となり、過去最高である地元開催の東京五輪の16個に迫る勢いです。
また、男子体操種目別での「銀・銅」とソフトボールの「銅」を加えたメダル総数はついに過去最多を記録したようですが、どうやら日本のメダルラッシュもここまでというところのようです。それにしても・・・最後の金メダルを信じていた野球が、新参のオーストラリア如きに完封負けの情けなさよ ∑( ̄皿 ̄;;キィィィィィィィィィィィ!!!
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