2004/08/10

リヒャルト・シュトラウス 交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』



14世紀の北ドイツの伝説の奇人ティル・オイレンシュピーゲルの物語を、シュトラウスの巧みな管弦楽法で音楽化した作品であり、「ロンド形式による昔の無頼の物語」という副題を持つ。

従来の交響詩は3管編成であったが、この曲から4管編成が用いられるようになった。リヒャルト・シュトラウスの管弦楽法全てが巧妙に生かされた傑作だ。

・弦楽器による親しみやすい短い前奏で始まる。これは昔話の「むかしむかし……」を表すテーマである。

・続いてホルンによるティル・オイレンシュピーゲルの第1のテーマが出る。

・続いてクラリネットでティルの笑いを表すテーマが示される。まず市場に現れたティルは牛馬を解き放し、市場は大騒ぎになる。ティルは空を飛ぶ靴で遁走する。

・続いてティルは僧侶に変装し、でたらめなお説教で人々を煙に巻く。独奏ヴァイオリンが退屈したティルのあくびを表現するが、ふと彼の心に破滅への予感がよぎる(金管群による信号)。

・続いてティルは騎士に変装し、美しい淑女を口説くが彼女にあっさりと袖にされる。怒ったティルは全人類への復讐を誓う(金管の鋭い上昇音型)。

・最初の標的を俗物学者(ファゴットによるユーモラスな音型)に定めたティルは、彼らに論争をふっかける。しかし次第に旗色が悪くなり、論破されたティルは悔しまぎれに小唄を歌う。

・再びホルンによるティルのテーマが現れ、次第に勢いを増していく。好き放題にいたずらを繰り返すティルの活躍が描かれるが、突如小太鼓が鳴り響き、ティルは逮捕される。

・金管によるいかめしい裁判のテーマが奏される。ティルは裁判を嘲笑しているが、やがて彼は死の予感におびえて金切り声を上げる。

・ついに死刑の判決が下り、ティルは絞首台に昇らされ敢えない最期を遂げる。

・冒頭の「むかしむかし……」のテーマが回帰し、ティルは死んでも彼の残した愉快ないたずらは不滅であることを示す、ティルの笑いの動機で曲が締めくくられる。

R.シュトラウスは、あのヒトラーに気に入られた不幸が元となって、ナチス政権に協力をした(させられた)罪で戦後は裁判にかけられる(結局は無罪)など、晩年は不遇に見舞われつつ隠棲していたガルミッシュ=パルテンキルヒェンの山荘で、ひっそりと息を引き取った。独裁者に利用されたからとはいえ、天才の音楽的評価になんらの影響を齎すものではない事は、今でもこれら数々の「楽しくカッコイイ曲」たちが、世界中で根強く愛されている事が如実に証明しているのである。
出典Wikipedia

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