ホルンの強奏で、有名なメロディーが出る。これはドン・ファンの第2のテーマで、彼の不満を表すとされる。
これまでのドン・ファンのテーマや女性のテーマが交錯し、女性を追い求め満たされぬドン・ファンの苦悩と焦燥が描かれる。いったん静かになるが、再び冒頭のドン・ファンのテーマと第2のテーマが回帰し、絢爛たるクライマックスを築く。
この曲のフィナーレの素晴らしさは実に圧巻だ。オーケストレーションがあまりにも凄過ぎて、今までに聴いたどの超一流の指揮者やオーケストラによる演奏を以ってしても、作曲者の意図した通りに音が鳴り切っていないのではないか、と疑いたくなってしまうほどである。特にホルンの柔らかくも朗々とした美しい音色は、まったくふるいつきたくなるほどで、何度聴いても惚れ惚れとしてしまう。
R.シュトラウスは「オーケストラの達人」と言われるくらい様々な楽器に精通した人だが、父親がホルン奏者だった影響からか特にホルンの使い方は圧倒的に群を抜いており、比類のない素晴らしさである。
三たび冒頭のテーマが出るが、音楽は速度を増し壮絶なカタストロフがやってくる。
全休止の後、曲はホ短調に変わりドン・ファンの悲劇的な死が暗示される。
「薪は燃えつくし、炉は冷たく暗くなった」
出典Wikipedia
R.シュトラウスの入門としては、やはり『ツァラトゥストラはかく語りき』をお勧めしたいところだが、ビギナーに30分を超える作品は少々キツイだろう。 そんなわけで、まずはこちらから先に聴いてみるのも良いかと思う。
この曲は『ツァラ』のちょうど半分くらいの、20分弱という手頃なボリュームであり、それでいて『ツァラ』にも決してひけをとらぬ聴き応えのある曲だ。
お得意の「色彩的なオーケストレーション」の魅力は、ここでも如何なく発揮され、比較的難しい『ツァラ』よりは遥かにわかり易い上に、あの稀代の色男として知られるドン・ファンの一生を綴った作品だから、当然ながらド派手かつセクシーなお色気に溢れた音楽になるのは、間違いないのである。
ファッションなどにも共通するが、あまり派手さばかりを強調すると得てして下品な感じになってしまいがちなものである。ところがR.シュトラウスの凄いところは、あれだけ派手なのにそうしたえげつなさがまったく感じられない点で、この辺りからも「オーケストラの達人」ならではの並々ならぬ力量が伺える。
R.シュトラウスの音楽は、次々と移り変わっていくハーモニーと独特の美しいメロディが特徴であり、お得意の大オーケストラを駆使した重厚なハーモニーを次々と並べながら、リスナーの心を掴んでいくテクニックこそに天才的である。
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