いよいよアテネオリンピックが開幕したと思ったら、早速前回同様に柔道で初日から男女ともに「順当に」金メダルを獲得という好スタートとなりました。YAWARAさんも野村選手も過去に数々の輝かしい実績のある超一流選手ですが、昨年の世界柔道選手権の結果を受けて、僭越ながらワタクシが書いた一文も、この五輪金メダルに至る流れの中では大きな分岐点と位置付けられるであろう事から、敢えて以下に再録して振り返ってみる事にします。
Panorama 2003.9.15版
《男子60kg級の野村選手。五輪二連覇の天才肌の選手として、キレの良く小気味の良い柔道にはこれまで何度も舌を巻かされたものでしたが、ブランクの影響でよもやの敗退。しかしながら、野村選手の立派なのはここからだった。五輪金メダリスト、しかも2大会連続という離れ業をやってのけた天才でありながら、敗者復活戦で投げやりになることなく必死で闘い抜くあの姿は、まさに五輪に向けての過去の栄光を捨てての、敗者復活戦を自らに課しているような感動を誘いました。そんなひたむきな姿勢だけでなく、最後の3位決定戦では手強い相手との高度な技の応酬を制し、見事メダルを勝ち取ったあの天才的な技のキレと美しい柔道は、今なお健在で嬉しかったですね~。来年の五輪では必ずや復活を遂げ、シドニーの舞台であの芸術的で力強い柔道をみせてくれることでしょう》
とまあ一年前にはこんな事を書いていたわけですが、この筋書き通りに事が運ぶと信じながらも、こうも漫画かドラマのように皆の期待を寸分違わず実現して見せてくれては、やはり驚きしかありません。なにより野村選手の試合中のあの集中した、凛とした表情が良いではないですか。苦行僧のような、生真面目を絵に描いたような浅黒い顔、射るような鋭い目つき。そして鋼の精神力を感じさせる仮面の無表情の裏に押し隠してはいたものの、時折ふと垣間見せるデリケートな表情に、なんとも深い勝負師の味わいを感じさせてくれました。
そしてまた試合内容が、これ以上は望みようがないくらいに素晴らしい。決勝こそ、相手のへっぴり腰のせいで綺麗に決めるチャンスは逃したものの、準決勝までの3試合は「これぞニッポン(イッポン)ジュードー!」というような、鋭くも美しい技の冴えを、これでもかこれでもかと堪能させていただきました。前回の五輪金メダルの時もそうでしたが、この一番の大舞台で最高のパフォーマンスを発揮出来るのがこの人の持ち味であり、こうして見ていると「銅」に終わった昨年の世界選手権はこの「五輪男」にとっては「舞台が小さすぎて実力を出し切れなかったのか?」とまで思えてしまうくらいです。それにしても野村選手の奥さん、綺麗やなー (*゚ー゚*)ポッ
さて・・・今回のオリンピックでも、我が日本選手団金メダル第一号は、やはりYAWARAさんでした。
Panorama 2003.9.15版
《さて、そのYAWARAさんも、なんともう28歳になったんですね~。あの少し前までは無邪気な感じの残っていた童顔に、怪我やスランプそして10代半ばから20代後半という女性の青春を総て柔道に捧げてきたがための経年疲労のようなものが一気に表れ、なんだかそこはかとなく痛々しく見えたのは、ワタクシの目の錯覚だったのでしょうか。ワタクシは、この稀に見る天才少女がまだ本当にあどけない15か16の時に、すい星の如く現れた時からずっと注目してきた幸運な一人ですが、10年以上の長きに渡って世界のトップを張りつづける事は、とても想像のほかであり滅多な事は言えるものではありません。しかしながら、敢えて無謀にも素人の雑感のようなものを書き連ねるなら、デビューしてきた頃のあの怖い物知らずのスピーディで溌剌とした柔道に比べ、年々柔道のスタイルが変わっていっているのは、やはり仕方のないことなのでしょうねぇ。
あれだけ日本中の期待と注目を一心に浴びつづけては、どうあっても負ける事だけは許されないわけですから。それが皮肉にもこの折角の天才の手足を縛ってしまい、技のキレを年々鈍らせてしまっている気がします。いわば「贔屓の引き倒し」ですが、その結果がYAWARAさんの最大の魅力だった、あの「攻める柔道」、「一本柔道」から年々遠ざけてしまい「守りの柔道」、「負けない柔道」へと傾かせている気がするのですが、これはまあやはり王者の宿命として如何ともし難いことなんでしょうねぇ。しかし、そんな中で内容は(YAWARAさんにしては)不十分ながらも、しっかりと金メダルを獲ってしまうところはさすがというしかないのですが》
この世界選手権の時の雑感と同様、今回もやはりYAWARAさんの持てる力からすれば決して会心の出来とは言えなかったでしょうし、大胆かつ豪快にして切れ味鋭く思い切りの良い最高の柔道を展開し続けた野村選手と比較すると、やはり内容的には一歩を譲るYAWARAさんでしたが、これはやはり国民の期待と注目度や一貫して王道を歩み続けるYAWARAさんの、あの小さな体に背負っているものの大きさを考えれば、致し方ない事なのでしょう。
絶対に負ける事が許されないという、恐らくは他のどの競技のどの日本選手よりも厳しいギリギリの状況の中で、いつも以上に緊張したような強張った表情は痛々しくも感じましたが、それでも結果的にはしっかりと金メダルを獲得してしまうところは、最早敬服する以外にありません。
これまでのオリンピックと違い、少女時代から「柔道一直線」に青春を捧げて来たようなYAWARAさんにも、ようやくにして(?)世間の女性並みに「春」が訪れた事は真に喜ばしいことですが、それが本番でどんな風に影響するのかというところを興味深く拝見しておりました。なるほど、ちょん髷のように縛った髪はいつの間にか金髪のようになっているし、どことはなしにふとしたしぐさなどにも女らしさを感じるようなところもあり、それはそれでこれまで国家に数々の栄誉を齎してくれた人に対する微笑ましさを感じると同時に、ワタクシの心の片隅に潜む意地の悪い悪魔が
(これで負けたら、容赦なく扱き下ろしてやるぞー)
と手薬煉引いて待ち構えていたこともまた事実でしたが、そうした愚かな悪魔の目論見などは木っ端微塵に粉砕されてしまった事は実に喜ばしい限りです。別に亭主殿に恨みがあるわけではありませんが、やはり10年以上の長きにわたって慣れ親しんできた「田村亮子」の名に愛着のあるワタクシ的には「谷亮子」という名はどうも親しめない事もあり、今後もこれまで同様に「YAWARAさん」という呼び名で通して行こうと思います。
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