高校の環境にもようやく慣れて来て、そろそろと視野を広げつつあった。
「拡がる視野」と言えば、無論女子に集まるのは言うまでもない。同じA市のB学区から集っていた中学時代とは違い、多くの市町から生徒が集まって来てはいる分、個性も多様化していたのは確かだった。
全体として、やはり最も垢抜けた感じのする『A中』やC市出身組の男子に2,3人そこそこモテそうなのがいたが、いずれも「美少年」の誉れ高いにゃべっちの比較の対象ではない (´ー`)y━~
そして、気になる女子はと言えば・・・『A高』と言えば地区随一は勿論のこと、県内でもトップクラスの進学校だけに、地元ではとかく
「牛乳ビンの底のような眼鏡をかけた、ガリ勉タイプばかりなんでしょ?」
などとステレオタイプ的に捉えられる事が多かったが、実際にはそんなことはまったくなく普通の高校生ばかりだ。
そして目を皿にしつつ、期待する美少女を探しては見たが、どうも見当たらない。
「やっぱ、タカシマが一番かな?」
と、次第に期待を薄れていく中でも漫然と泳がせていた視線が、ある一点でピッタリと釘付けとなってしまった。
そこには・・・色白ふっくらの絵に描いたような丸顔に、輝かしいまでに大きなな眼がパッチリとした美少女が。
(うーむ・・・こりゃ、夢か幻か・・・激カワイイ子がいるじゃねーか・・・)
そこには、密かに心を寄せていた千春もまったく霞んでしまうほどの輝きを放つ女学生が、あたかもレンブラントの絵画の如く、ただ一人周囲から浮き上がって見えるではないか!
「ウーム・・・
あれは、タカシマより遥かに上!
もろこ、小夜子も、まったく問題にならん・・・あんなにカワイイのがいるなんて・・・」
こうして入学早々、かつてお目にかかったことのないような、都会的に洗練された美少女に強烈なひと目惚れをしてしまったのである。
入学直後から、密かに千春をそっちのけで目を付けた美少女。彼女の正体こそは、栄誉ある2人の「女生徒会長」のうちの一人、その名も「白椿茜」嬢だ。
C市はA市とほぼ同じ人口規模の学区内最大の都市で、C市最高レベルの『Y高』(にゃべ兄マッハの母校)は難易度では『A高』に次ぐ、学区2番手である。そうしたことからC市トップレベルの秀才たちは、地元の『C高』ではなくわざわざ『A高』まで電車通学して来ている者も多かった。
C市にはA市と同様に5つの中学があったが、茜の出身中学はA市からは最も離れた立地にあったためか、同じ中学から『A高』へ進学して来たのは彼女ただ一人。
「さみしー。他のコたちは、みんな地元だもん・・・『N中』から来てるの、私一人だけなんだよー」
と嘆いていた。これは茜が、あの可愛らしい外見に似合わぬ、強固な意思を持っていた証でもあった。その『N中』では生徒会長を立派に勤め上げた茜だけに、見るからに優等生然としたきりっとした美貌もさる事ながら、非常に社交的な性質が著しい特徴だった。
美しい声とハキハキとした積極的かつ歯切れの良い弁舌で、あっという間にクラス中に存在感を示していった。ある意味、目立ちたがり屋と言えなくもないが、これが不思議な事に嫌味がまったくないのは、あの颯爽とした振る舞いに加え、桁外れの人当たりの良さのせいだった。
また単に可愛らしいだけでなく、明るく活発な性格も群を抜いており、あっという間にクラス一の人気者として男子ばかりか女子の間においても、たちまち一目置かれるアイドル的な存在に伸し上がっていったのは当然だった。
要するに『B中』における香や『C中』における真紀のような男勝りの存在といえたが、どちらかと言えば控えめだった二人とは違い、持ち前の明るさでグイグイ引っ張っていくリーダーシップの持ち主だけに、その際立った美貌と相俟って存在感は段違いである。こうして颯爽とした茜の魅力に、ドップリと嵌ってしまうことになっていく。
(よもや千春以上に、魅力のある女学生はおるまい・・・)
という当初の予測をあざ笑うかのように、颯爽と登場して来たスーパー美少女の茜。勿論、2人の美少女を比較し優劣をつけるのは愚の骨頂でしかないが、当時はこれは大きな関心事であった。
そこで《にゃべ式判定》による審査を試みた。
・髪の美しさ・・・ロングヘアの千春に対し、ショートヘアの茜と対照的だが、どちらもサラサラとした綺麗な髪の持ち主だ。
・色の白さ・・・2人ともに日本人離れした抜けるような白さとあって、これも甲乙つけがたい。
・眼の魅力・・・吸い込まれそうな、パッチリして大きな眼が茜。対する千春は、ややキツイ感じの切れ長の眼。これは好みの問題だろうが、一般受けしそうなのは茜のキラキラとした、少女漫画のヒロインのような大きな瞳の方だろう。
・ 美声・・・ソプラノでややクセのある千春の声に対し、女性らしく甲高いいわゆる「かわいい声」が茜。これは好みも含めて、甲乙つけ難い。
・スタイル・・・中背でスマートな茜に対し、大柄で肉感的ないわゆる「セクシー系」が千春。大人の目には千春に分があろうが、男子高校生にはまだまだスマートな茜の方が受けが良いか。
・学力・・・これは珍しく、勝敗がハッキリした項目だ。常に級長の常連であり、女子でありながら生徒会長まで務めた茜の完勝。
・性格・・・かなり対照的。几帳面でで努力家の茜に対し、大らかで掴み所のない千春。対人的には人当たりが良く、社交性抜群で同姓・異姓問わず人気を博した茜。対する千春の方は図太さではヒケを取らない上に、茜同様の明るさも持ち合わせてはいたが、やや気分屋でワガママ、おまけに多少ヒステリーの気もあった。もっとも、茜は千春と比べると関わりが浅く短いために、粗が見え難かったということもあるだろうが。
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