2005/05/28

「撮影禁止」(2005GWの古都・特別拝観part11)

次に訪ねたのは、當麻寺から少し歩いたところにある「石光寺」という小さな寺院である。 


<寺伝によればその昔、天智天皇の時代、光輝く土地があるので掘ってみたら、石の光った仏「弥勒三尊」が出て来た。天皇の勅願により、役行者が堂宇を建て「石光寺(せっこうじ)」と称したのが始まりと伝えられ、その後、中将姫が境内にある「染の井」で蓮糸曼陀羅の糸を染めたため、別称「染寺」とも呼ばれています。

 

平成3年には「弥勒堂」建て替えの際に、堂の下から白鳳時代の「弥勒石仏」が出土し、小さな「弥勒堂」の横に建つより小さなお堂内に陳列されていますが、現存する石仏では日本最古の石仏です>

 

とあり、その由緒が偲ばれる。

 

境内にはボタンを始めとした色々な花があり、散策してみると案外と広く、それでいてよくまとまっているのには驚いた。ドッシリと重厚な感じの當麻寺に対し、女性的な美しい庭園が春の陽光を受けて、のどかな広がりを見せていた。

 


石光寺を出ると、二上山をバックに見渡す限りに美しい田んぼが広がっている。その道を行くと「二上山ふるさと公園」があるのだが、そちらへは寄らずに三日目の日程を終える事にした。

 

最終日の京都観光の日程に備え、京都にUターンして宿泊する。

 

4日目は、最終日。この日は帰りに元住んでいた家に、必要な荷物を取りに行く用もあるためあまり遠出や長居は出来ず、以前に訪ねた大徳寺を再訪した。常時公開の龍源院、瑞峯院、大仙院を見て廻る。これまではデジタルビデオカメラで庭園などを撮影して廻っていたが、今はデジカメの時代である。

 

ビデオカメラのように動画というわけにはいかないが(簡易な動画機能もあるようだが、中途半端なのと面倒が先立って使っていなかった)、何しろバッテリーも含めて軽いのに加え、PCで色々と二次利用が出来るから、こんなにありがたいものはない(デジタルビデオカメラの映像を加工する事も出来るだろうが、ビデオテープにダビングした元テープの映像は、悉く上書きで使ってしまっていた)

 

これまで、ビデオカメラで撮影して来たところ全部を廻り直して、デジカメに画像を納めるには到底無理があったが、この大徳寺のような寺院の庭園は、是非ともデジカメで残しておきたい気持ちが強い。

 

計画通り龍源院、瑞峯院、金毛閣、そして本坊外観などの撮影を済ませ、いよいよお目当ての某寺院へと向かう。これまでに見て来た数ある庭園の中でも、特にお気に入りがこの寺院の幾つかの庭園だった。

 

拝観料を払い中に入る時に、受付にいたオバサンがデジカメに目を留め

「中は撮影禁止となっておりますので、ご了承願います」

と言って来たのには、正直戸惑った。

 

(ハテ?

前に来た時は、そんな話は聞いた事がなかったハズだがな・・・)

 

現実に、当時持ち歩いていたデジタルビデオカメラで撮り溜めたライブラリーには、この寺院もしっかりと刻まれていたのである。数年前に観た有名な枯山水の庭は、これまで観て来た数多くの庭の中でも、出色の傑作としてクッキリと記憶に焼き付いていただけに、今回はなんとしてもデジカメに収めなくてはならない。撮影禁止云々は、単なるお題目のようなものだろうなどと考えながら、デジカメを撮影していると

 

「ニイチャン!」

 

と、ドスの利いた太い声が降って来た。

 

撮影に夢中になっていたせいか、まったく人影に気がつかなかったが、声のする方に目をやると、坊さん(年齢は40後半から50くらいか・・・)が眉間にしわを寄せた、険しい顔をしながら歩み寄って来た。

 

「ニイチャンって、オレの事?」

 

「ああ・・・受付でも、女性に撮影禁止だと注意されたはずやろ。ルールは守ろうやな」

 

これには

 

(横柄な口の利き方をするヤツだ)

 

とムカっ腹が立った。

 

「ニイチャンって呼び方は、ないだろう。以前はビデオ撮影していたけど、何も言われなかったが・・・」

 

「それは、アンタが勝手にルール破りをしたんだろう。ルールを守れないような人には、見て貰わんでもよろし」

 

「なに?

随分と偉そうな坊主だな・・・」

 

睨みつけると相手も負けじと睨み返して来て、しばし睨み合いが続いた。場所柄を弁え、坊主を無視して奥へと進んでいくと、坊主も後ろから着いて来る。お目当ての蓬莱山、大海と鑑賞している間も、終始背後で監視をしている坊主のしつこさは異様であった。

 

「ほら、もうカメラは仕舞ったよ。何で着いて来るのか?

しつこいな」

 

「ルールは守ろうよな・・・」

 

「だからもう、なにも撮ってないよ。そこまでして、撮影禁止に拘る理由はなんなのかな?」

 

「それがルールだから、理由なんて必要ない」

 

要するに、さしたる理由がないのだろう。

 

そして驚いた事には、そうして拝観が終わり玄関で靴を履くまで、この坊主はずっと背後から付いて歩いて来たから、さすがに呆れた。

 

「たかが個人の撮影くらいで、ここまで付きまとうとは筋金入りだ。坊さんってのは、そんなに暇なんかい?」

 

「なんやと?

あんたは、ブラックリストに載せるからな・・・もう二度と来るな」

 

「個人の所有物じゃあるまいし、アホらし」

 

と捨て台詞を残して、去るところまでは良かったが・・・

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