さて法堂を出た後は、いよいよお目当ての「曹源池庭園」である。
<夢窓国師の作庭「曹源池庭園」は、背景に嵐山と亀山(小倉山)の借景を巧みに採り入れ、三段の石滝組などを配した南北朝時代の禅院を代表する回遊式庭園であり「史跡・特別名勝庭園」に指定されています>
この「曹源池庭園」こそは、ワタクシが最初に見た本格的な日本庭園であり、庭園の魅力に嵌る切っ掛けを与えてくれた忘れがたい庭園だ。
これまで春は桜のシーズンと枝垂れが満開だった4月中旬に一度、そして5月半ばくらいに一度訪ねていたから今回が4度目となる。毎回、違った相を見せてくれる広大な庭園だが、今回はこれまでで最も花の少ない時期に当たったかもしれない。しかしながら、小倉山の新緑と五月晴れの澄み切った空に、嵐山の眺望が美しく広がっていた。
修学旅行や学生時代の物見遊山を別とすれば、京都で初めて訪れた寺社は「清水寺」であり、2番目に訪れたのがこの「天龍寺」だったのは、もう10年位前か。
この天龍寺の拝観は回遊式庭園のみが500円で、100円をプラスして600円を払うと方丈に上がり違うアングルから「曹源池庭園」を楽しめる。最初に訪れた時の事。 ちょうど拝観料を払っているところへ、見るからに田舎から出て来たとオボシキ、ジーさんバーさんの団体がやって来た。
「いくら?」
「方丈と両方で600円、庭園のみでしたら500円です」
すると先頭にいたリーダー格のオヤジが、濁声を張り上げた。
「上(方丈の事)は、別に金を取るのかね?」
(と言っても、たかだか100円ですよ・・・)
「方丈に上がられるのでしたら、100円増しとなりますが・・・いかがなさいますか?」
リーダー格のオヤジは、皆を振り返って問うた。
「オイ、どうするか?
100円、別に取るだとよ・・・」
(オイオイ、折角ここまで来ておいて、たかだか100円をケチるのか・・・)
と驚くやら呆れるやらだったが、しばらく皆で侃々諤々やっていた・・・
(普段は100円くらい、しょーもないような事に使うものなのに、どうしてこんな滅多にない機会にケチるのだろーか?)
と、大きなお世話も焼きたくなろうと言うものだった。
天龍寺を出て、タレントショップなどが並ぶ有名な通り(通りの名がわからない)を渡月橋に向かって歩く。
<大堰川[おおいがわ]に架かる、全長250mの橋。亀山上皇が「まなき月の渡るに似る」として、渡月橋と命名したという風情ある橋で嵐山の景観に溶け込んでいる。鵜飼などの川遊びも、渡月橋を中心に行われる。
当初、橋は現在より100mほど上流にあったと考えられるが、1606年(慶長11)に角倉了以[すみのくらりょうい]が、大堰川上流の保津川開削工事を行った際、今の場所に移された>
観光客に混ざって、修学旅行の学生が小学生から高校生くらいまでごった返し、相変わらずの賑わいを呈する渡月橋を往復し、ガラス張りの窓から渡月橋を一望できる土産物屋二階のレストランで昼食を取る事にした。京らしく湯豆腐とかやくご飯の定食で、昼間から地酒を呑む。ただし歩くと暑くなってくるので、ここは一杯だけで済ます事にしたが食事をするとやはり汗ばんでくる。ガラス窓越しに新緑の嵐山をバックにした渡月橋が見えるというのは、なんとも贅沢な気分だが時間が惜しいので、あまり寛いでもいられない。
今度は渡月橋を背に、京福嵐山駅へ向かって歩く。昼を過ぎて益々日差しが強くなり、やはり歩いているうちに暑くなって来たので、ソフトクリームを食べる事にした。
「さっきの昼は奢って貰ったから、これは私が・・・」
という、連れの好意に甘える事にする。何の変哲もないソフトクリームも、ここではひとつが260円もするのだ。隣のビルの軒に巣を作っているツバメが、視界を過ぎっていく。美空ひばり館の前の階段脇に座ってソフトクリームをパクついていると、館のスタッフらしきオジサンが客引きをしている前を、真っ黒に日焼けした大学生が引く人力車が勢いよく走っていく光景はお馴染みだ。土産物屋が並ぶ通りだけに修学旅行の学生の姿がひときわ多く、やはり京都でも最も華やいだ雰囲気を感じさせる。
ところで京福嵐山駅は、ホームの突き当りに「足湯」がある事で知られる。
<平成14年に、京福嵐山駅にオープンした嵐山温泉「駅の足湯」は、20名程度が座れるこじんまりした足湯です。泉質は単純温泉(低張性弱アルカリ性温泉)で、適応症として神経痛や筋肉痛が挙げられています>
話の種に入っていくつもりだったが、修学旅行の学生が入れ替わりで入って来てスペースがない。女学生の中に割って入るのも躊躇われたし、連れが
「私は、人見知りするからダメ・・・」
という事で、残念な事に入らずに四条へと向かう事に。
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