2005/05/22

東山の風景(2005GWの古都・特別拝観part5)

京福線で終点の四条大宮まで行き、歩いて東山へ向かう事にする。

 

なにせこの時の連れが、京都は初めて(正確には、ン十年前の修学旅行以来)という京都オンチであり、職場の同僚から「京都やったら、嵐山いうとこへ行かな・・・」と言われて来ていただけに、取り敢えずはリクエストに答えて嵐山へ行ったのだった。それなら東山にも行かねば片手落ちだとばかり、ワタクシが立てたプランである。勿論、ワタクシ自身も東山で色々と見たいところがあったのは、言うまでもない。

 

四条烏丸、四条河原町と通り抜けたあたりで連れに泣きが入った。

 

「疲れた・・・相当歩いたよね・・・一体、どこまで歩くのー?」

 

「多分、もう少しだよ」

 

「かなり歩いたよね?」

 

「このくらいはまだ、たいした事ないよ・・・初めて奈良に行った時は、昼に見てからホテルに入って更に夜のライトアップを見に行ったから、4万歩歩いた事があるよ。あの時から比べれば、まだ半分もないんじゃないか・・・」

 

確かに好天には恵まれたと言えるが、それだけにGWとは思えぬほどの暑さになっていたのである。

 

実は、今回の旅行で3日には奈良の長谷、當麻という二つの大きな山寺を周回する予定だったので、久々にかなり歩く事になろうとスーパーで万歩計を買って付けて出て来ていたのだったが、初日のホテルにチェックインして

(今日は、何歩歩いたか・・・)

と見たら、いつの間にやら万歩計が消えていた。

 

春日大社神苑の手洗いで、用を足してデジカメと傘を抱えた時に「ガシャーン」と何かが落ちた物音は聞いたが、どうやらあれが万歩計だったようだ・・・

 

「喫茶店にでも入って、休みたいな・・・」

 

女性らしい発想とも思えたが、喫茶店などはどこで入っても同じようなものだし、コーヒーの味だって同じようなものだ。自分としては京都や奈良にいる時間は日常の延長などではなく、日常とは切り離した特殊な時間であり、そんな勿体無い時間の使い方など出来るものでない。

 

「じゃあ、どこかの喫茶店で休んでいる?

その間、自分は観光を回って来るから、後は時間で待ち合わせれば良いかも・・・」

 

少し考えるようにしていた彼女は

 

「でも、やっぱり私も行く・・・折角、観光に来たんやもんね」

 

と、覚悟を決めたようだった。

 

そうこういっている間に、四条通りと東大路通りが交差する大通りに面した、あの八坂神社の朱塗りの西楼門が見えて来た。

 


<八坂神社は、スサノヲノミコト(素戔嗚尊)、クシイナダヒメノミコト(櫛稲田姫命)、ヤハシラノミコガミ(八柱神子神)を祀ります。日本神話でも知られるように、スサノヲノミコトは、ヤマタノオロチ(八岐大蛇=あらゆる災厄)を退治し、クシイナダヒメノミコトを救って地上に幸いを齎した偉大な神様です。

 

八坂神社の歴史は、社伝によれば平安建都の約150年前-斉明天皇2年(656)と伝えられています。都の発展とともに日本各地から広く崇敬を集め、現在も約3千の分社が日本各地にあります。八坂神社は長らく「祇園社」、「感神院」などと称しましたが、明治維新の神仏分離にともなって「八坂神社」と改称しました>

 


ここではまたしても、修学旅行らしい学生の姿が目に付くようになっていた。

 

<国の重要文化財に指定されている本殿は、かつて別棟であった二つの建造物-本殿と拝殿とを一つの屋根で覆ったもので、他に類例のない建築様式であることから「祇園造り」と呼ばれている。

 

本殿の建築についての文献上の初見は『二十二社註式』所引の承平5(935)615日の太政官符で

「神殿五間檜皮葺一宇 天神、婆利女、八王子 五間檜皮葺礼堂一宇」

とあり、本殿と礼堂(現在の拝殿)が別棟である事が記されている>

 

屋台が出ている境内を潜り抜け、円山公園に移動。小川治兵衛の作庭による回遊式日本庭園でもあり、有名な枝垂れ桜だけでなく坂本龍馬・中岡慎太郎の銅像もあるなど、見所は沢山ある。

 

二年坂、産寧(三年)坂から清水寺、さらに円山公園、八坂神社、あるいは高台寺へと続くコースは、修学旅行など京都観光の代表的なモデルコースだ。清水坂を上がりきったところで視界に広がってくる、清水寺の古びた仁王門・朱塗りの三重塔・そして本堂(清水の舞台)の三点セットは、嵐山をバックにした渡月橋や金閣・銀閣とともに、最も京都らしさを感じさせてくれる景観だと思う。しかしながら今回は時間の都合もあり、特別公開のない清水さんは割愛して、円山公園から逆のコースを採る事にした。お目当ては「京都三大門」の一つとして知られる知恩院三門の特別拝観である。

 

今回、清水さんのデジカメ画像を諦めてまでここへ足を運んだのは、この巨大な三門の中にひっそりと守られている文化財を見る滅多にないチャンスだからである。特別公開といえば年に12回だけ公開される文化財の事だが、普段こうした寺社が拝観料を取って見せているところは、極端にいえばどうでもよいところなのである。

 

ご本尊や秘仏になると、25年とか50年とかに一度の公開というハレー彗星並みのものも珍しくはないが、これらの公開にしても決して皆に見せたいからというサービス精神の発露などでは決してなく、単にそのくらいのサイクルで風を通したり、外気に晒す必要性があるという科学的根拠からで、それならば

「折角だから、ついでに金を取って見せてやろうか・・・」

というのが実情ではないか。

 

見せてもらう立場としては贅沢は言えないが、地元近郊に住んでいなくては余程運がよくない限り、こうした公開にタイミングを合わせるのは難しい。五重塔や三門というものは、素人目にはあの中はガランドウのように見えてしまいがちだが、実は普段は非公開にしているあれらの中こそ、本当に重要なものが収蔵されているらしい。

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