2005/05/13

竹馬の友と才女たちの受験(大学受験シリーズpart8)

もろこ

どういうわけか入学当初から卒業までの間に、にゃべと同じような下降カーブを描いてジワジワと成績を下げていった香。元来が勉強嫌いのにゃべは当然の結果としても、勉強家のはずの香がなぜに成績を落としていったのか・・・その原因は、定かではない。

 

 女子大最高峰の国立『O女子大・文』と、私立の『T大・国際』の合格発表は新聞で目にしたが、それ以外はどこを受験したのかも不明で、3年生の時は同じクラスだっただけに『O女子大』の志望は、何とはなしに耳にしてはいたが


 (本当は『N大』なんだろ・・・?)


 と勝手に決め付けていただけに、新聞発表を見た時は


 (ありゃ? 

本当だったのか・・・)


 と驚いた。


 そして


 (小学校時代からの10年に及ぶ、香との学生生活も終わったんだな・・・)


 この活字を見た時に改めて、深い感慨がこみ上げた。


 『B中』時代の香といえば小夜子、千春、美佳らとともに、常に男子生徒たちの注目と人気の的でありながら、各地区から美少女や才女の集まって来ていた『A高』にあっては、千春以外はいずれもイマイチ影が薄れていた。

 

『B中』出身者で『A高』でも他地域の個性派たちに伍して、それなりに存在感を示していたのは、男子では色男のにゃべと秀才ヒムロ、女子では才媛のよーこと美貌の千春というところだったか。元々、目立つような言動を嫌っていたかような香らしく、ひっそりと卒業して行った印象だ。

 

ムラカミ

 『B中』時代の高校受験の際は『T高』受験を巡ってドタバタのあったムラカミだが、その時の経験を活かしたか大学受験では、当初からすんなりとN大一本に決めていたようだ。


 「オレに付き合って『X大』を受けろ」


 と、冗談半分に誘ったものの


 「X大なんて受からん。オマエも、無難に地元N大にしとけ」


 と、逆に諭されてしまった。

 

  「W大にしとけ! 

名古屋の大学じゃあ、あまりにも面白みがなさ過ぎる」

 
 (コイツのことだから、どうせ『N大』に行くに決まってるだろう)


 と思っていただけに、わざと煽ったりした。


  「やっぱりW大の方が全国区だし、将来的には得かな?」


 と、それなりに『W大』進学も考えたらしい。


 が、最終的には


 「やっぱり『N大』を蹴るってのはバカだし、周囲の反対もデカイしな・・・」


 と予想した通り、妥当な線に落ち着いた。
※全国レベルでは、N大など旧帝大とW&Kのレベルは同じように見られているが、地元愛知における『N大』の評価は遥かに高く、『T大』、『W大』にも匹敵しうるものであった。


 このムラカミこそ、幼少の頃から一貫して唯一無二の親友であった。保育園からの同窓で家も歩いて3分と近所でもあり、小・中・高と通して最も親しい仲である。加えて、12年間の間に実に7回も同じクラスになるという、どこまでも縁の強い相手だった。


 まことに自分にとっては水か空気のように、常に傍にいるのが当たり前のような存在だっただけに「ムラカミ抜きの学生生活」というのが、どうしてもイメージ出来なかったのは無理もない。別れの寂しさは色々とあるものの、やはりなんといっても最も寂しいのはこの幼時から長きに渡る親友・ムラカミとの別れであった。

 

千佳

  高校の3年間で、にゃべが熱中した女学生は何人か居たが、卒業の頃に最も入れ込んでいた相手は、間違いなくこの千佳だった。同じクラスで委員長をともに務め、あの何を考えているのかがサッパリ読み取れない、謎めいたエギソティックな美貌に何度見惚れた事か。

 

  彼女の受験は『N大文学部』。私立は色々受けたようだが、記憶にない。英検2級の彼女の狙いは勿論、語学クラスばかりだった。

 

茜の受験は、国立が『N大』合格が新聞に出ており、確認済み。『Y大』、或いは『TB大』辺りの志望かと思われたが、無難な選択していた。また私立では『K大理工』に合格していた。

 

3年生の時は理系クラスに属していたが、2年生の時は文系クラスだった茜は、英検2級も獲っていたように英語もかなり堪能だったから、英文科狙いの受験だったのは間違いない。通常なら迷わずN大というとこだが、K大といえばブランドだから、どっちに進学してもおかしくはないが、結果的にどこに進学したかは闇の中であった。

 

茜といえば、にゃべにとっては入学直後の電撃的な一目惚れから始まり、常に気になる存在であり続けた眩しい存在で、高校生活のアルバムの貴重な位置を占めていた。1年生の時は、ともにクラス委員長を務める幸運にも恵まれ、ひときわ強い印象を残しながら、その後は接触のチャンスもないまま、卒業を迎える事になってしまったのは残念だ。

 

あのアイドル風のカワイイ顔に似合わぬ人一倍の努力家であり、かつまた天才的な社交術の持ち主。そしてなんと言ってもあの類稀な美貌は、A市のような田舎都市に置いておくのは勿体ない事だとカネガネ思っていただけに、キャンパスで一際華やかな輝きを放つであろう茜の今後には、蔭ながら大いに期待したい。

 

『B中』時代には、3年生になる直前に遅れて転校してきたハンデもあって、常に5番前後に甘んじていたため、にゃべの眼中にまでは入って来る事はなかったが、『A高』ではその実力を如何なく発揮した。


 彼女の受験は語学系統ばかりで、国立が『T外国語大』、私立が『I大』一本。このクラスにしては珍しい事に、私大トップのW&Kは受験しなかったらしい。

 

この時期、すでに英語が堪能だった梓は、カトー、お嬢とともに最も早く英検準1級を獲っていた。バスケ部でも活躍をしていたくらいだから、語学に全力というわけでもなかったろう事を考え合わせると、やはり相当な能力に恵まれていたと見るべきか。当然、『外大』に進むものと思っていたが、意外にも噂では『I大』を選んだらしい。

 

「意外」というのは、当時愛知のA市では

 

「ICUって何?」

 

というくらいに知名度が低かったためで、実際にはW&Kに次ぐ難易度だったと知ったのは、かなり後になってからだった。

 

真紀
かつて1年間だけ同じ『B中』にいた真紀は、貴重な「良き女友達」だった。

梓と同様に英語を得意としていた真紀も、英検準1級。その真紀の受験は、国立が『T外国語大』、私立は『I大』、『K大・英文』、『J大・英文』と、当然の事ながら「英文系」では名の通った一流どころばかりだ。

 

 「で、K大と外大のどっちに行くんだ?」 

 

 「迷ってるんだよね・・・親からは


 『お金の掛からない国立に行って欲しいが・・・やはりK大も捨て難いな』


 と言われているけど・・・」 


 と、当初は外大を考えていたようだったが、K大合格後は


 「段々と、蹴るのが勿体無い気がして来たよ・・・」


 などと、珍しく本気で迷っていた。

 
 元来が、大人っぽいところのあった真紀だったが『A高』で再会した時は『B中』1年でともに級長を務めた頃から随分と感じが変わっており、てっきり別人のように見えた。


 「あー、にゃべー! 

アンタ、全然変わってないねー!」


  とメガネの奥の細い目を一段と細めて、懐かしがってくれたあの表情を思い出す。

 

2年生で再び同じクラスとなった際、不登校を乗り越え再登校した初日に、サッカー部の練習の終わる夜遅くまで、千春とともに待っていてくれた優しさは、彼女らしさを語る上で欠かせない。それでいて、家路に着くまでの20分間、非難や詰問めいたセリフを一切言わなかったあの態度には、上っ面の優しさを超えた彼女の理性と知性を高さを、改めて垣間見た思いがした。


 「ムラカミとか、随分と心配してたようだったけど・・・」


 というさりげないひと言は、その件に関してひと言も触れなかったムラカミ除けば、誰の言葉よりも重く胸に迫った。


 千春と3人で自転車で帰ったのは、高校生活でも有数の印象深い思い出として残ったように、最後まで知的で爽やかな印象を残した。

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