小学5年生といえば、まだまだ10歳そこそこの子供ながら、成熟の早いコたちは大人の目からみると早くも色気も出始めてくる頃で、中学生やヘタな高校生以上に発育の良い子もいたりする。
クラスでは、百合子ちゃんがその代表格だった。
それまでは、これといって目立つ要素のなかった百合子ちゃんだったが、この頃から急激に体の成長目覚ましくなっていた。
普段はそれほどではないものの、体操着に着替えるとおませな男子生徒の眼は知らずと、その白々と輝く太ももに吸い寄せられてしまうのであった。
無論おませとはいえ、まだ小学生のことで野心めいたものからは遥かに遠い仄かな感情に過ぎなかったろうが、それでも顧みるとそのようなものに本能的な魅力を感じ始めたのも、この頃からのような気がする。
しかも男子たちにとって困った事には、それだけ見事に成熟し始めた肉体を持ちつつも、当のご本尊はまだまだ精神的にまったくの子供だっただけに、無邪気で奔放と見える振る舞いが少年達を益々刺激してしまう事になるのであった。
人一倍好奇心旺盛なにゃべっちが、そんな百合子ちゃんの持つ魔力に魅入られなかったハズはない。
やがて当然の成り行きとして、数名の《行動派》とともにクラス全体を巻き込むようにして、とんでもない暴走を引き起こすことになっていった。
この年、クラスで突如として巻き起こった「スカートめくり旋風」
その中心人物は、神童にゃべっちと悪童カツトシ君のコンビだった。
親友ムラカミ君は、決してある程度以上のハメを外す事がない冷静なタイプだけに、暴走したい時の良きパートナーとなるのが、このカツトシ君だ。
典型的な落ちこぼれタイプだったが、悪智恵だけはよく働き天衣無縫ともいえる悪ガキぶりは、悪戯モノのにゃべっちとしては大いに好むところである。
さて、このスカートめくりのターゲットといえば、最初はもっぱら色気ムンムンの百合子ちゃん一人だったのが、いつの間にやらクラス中へと広がっていった。
奈津子ちゃんらズボン派やブルマ着用派、また男子生徒らの興味の対象から外れていた女子を除き、最終的にその被害者はクラス全体の半数以上を数える大旋風となり、瞬く間に他のクラスへも伝播していくや、まさに燎原の火の如くに猛威を振るった。
そして事態は次第にエスカレートしていき、遂には神童&悪童コンビ企画による「肝試し大会」に舞台を移し、とんでもない大騒動へとなだれ込んでいくことになっていった。
この頃、夏真っ盛りの時期になると、毎年「お化け屋敷」がブームとなっていた。
町のとある「お化け屋敷」の常連だった、にゃべっちとカツトシ君は、得意の悪智恵を働かせ、その「お化け屋敷」を利用した《肝試し大会》を計画する。
クラスのリーダー格だったにゃべっちと、ガキ大将のカツトシ君の巧妙な呼びかけに加え「お化け屋敷」に対する興味も相俟って、女子を含めてかなりの人数が揃い、午前で授業の終わる土曜日の下校時に一路、件の「お化け屋敷」へと直行する事になった。
勿論《肝試し》というのはあくまで表向きの企画で、下心は別だ。
にゃべっちら男子生徒のお目当ては、百合子ちゃんであることは言うまでもなかった。
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