「うぬ・・・顔に似ず、相当に手ごわいヤローだ・・・」
いよいよ本気を出してきたものの、誰のボールも素早いにゃべっちを捕らえることが出来ない。
焦った敵は、エースのシンカイにボールを集め始め
「早くアイツを仕留めろ!」
と躍起となったが、そうは問屋が卸さなかった。
そして、この大会のハイライトとなる「神童にゃべっちvs怪童シンカイ」の小学生とは思えぬような壮絶な頂上バトルが、いよいよ佳境に入る。
中学生のような大きな体から、火の出るようなボールを投じるシンカイ。
しかしながら、それらをしなやかにかわしていくにゃべっちには、紙一重で当たらない。
後に「柳のようなしなやかさ!」と教師らから最大級の賛辞を送られたにゃべっちの動きは、あの「謎の猫少年以上に神懸っていた」と言われた。
ボールを受けたシンカイは、ほんの眼と鼻の先の至近距離だ。
まさに、絶体絶命のピンチ!
舌なめずりせんばかりに、シンカイが視線を外さなかったが裏を読んだ。
(目を見ながら、足元を狙ってくる・・・)
相手の手の内を読むと開脚ジャンプ一閃「奇跡の八艘跳び」、そして眼にも留まらぬスピードでヒラリと間一髪。
あたかも、五条大橋の欄干を飛び交う牛若丸を再現したかのような、身軽な身のこなしに
「あの4年生、神懸ってるぞ!!!」
と既に敵味方を超えて、見物に回った全校生徒から万雷の喝采を受けるにゃべっち。
この声援が「神童」に、さらに大きな力を与えた。
不思議なことに
「オレは、あの『謎の猫少年』よりも鋭く動けるのだ!
誰のどんなボールも、オレには絶対に当たらない!」
という「確信」に支えられていた。
そのにゃべっちの「柳のようなしなやかさ」に、すっかり魅了された6年1組の女生徒たちの間では、いつの間にか「にゃべっちブーム」が巻き起こり、シンカイがボールを投じた時には悲鳴が上がるほど、異様なムードに包まれた ガンバレ~ o(´∀`;)o尸~
元々、逃げるだけの「謎の猫少年」とは違い、強力な攻撃力も持っていたにゃべっちだけに、当初は10人以上残っていた相手の6年生を次々に薙ぎ倒し、気付けば敵のコート内は5人まで減っていた。
「神童」にゃべっちとともに、もう一人残っていたのがヒグチ君だ。
にゃべっちとは対照的で地味な存在ながら、これまたしぶといツワモノで神童の蔭に隠れながらも、6年生相手に一歩も引けを取っていない。
乾坤一擲とシンカイの投じたボールが、遂に神懸りのにゃべっちを捕らえる!
「万事休す」と思われたところで、大きく跳ね返ったボールをヒグチ君が見事、ダイビングキャッチ。
まさに、九死に一生。
ボールはムラカミ君に繋がれ、4年1組期待の中、誰よりも親友のコート復帰を期待したにゃべっちだった。
が、果敢にもシンカイを仕留めに行ったムラカミ君のボールは、怪童に真正面から受け止められてしまい、ガックリしたところでシンカイ執念の一投の前に、神童遂に沈む (/||| ̄▽)/ゲッ!!!
残ったヒグチ君も続いて仕留められ「栄冠」は、するりと手から零れ落ちた。
「決勝で負けてしまったのは、実に残念無念だ。
しかし上級生相手に準優勝は立派過ぎて、オレにはこんな嬉しいことはない。
にゃべ、ヒグチらを始め、本当にみんな良くやってくれたなー」
と担任教諭から労われ、得意絶頂のにゃべっち。
これを契機として、姉ミーちゃんのクラスでにゃべっちブームが起こり、卒業するまでの間は放課後になると、ミーちゃんのクラスメートが教室の窓越しに
「にゃべちゃん、こっち見てよー」
「キャアー、カワイイ。
女の子みたい」
などと散々にやられ、女生徒らから
「にゃべ、おねーさんたちにモテモテじゃん」
などと冷やかされたのには、随分と閉口したものだった ヽ(´―`)ノやれやれ
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