この頃『B小』では、体育の授業ばかりでなく放課後にもドッジボールが大ブームとなり、遂には「全校ドッジボール大会」が開催されるに至った。
この年頃では、1年、2学年の体力差が大きいため6年生、5年生のクラスが軒並み勝ちあがっている中で、眼を瞠る快進撃を続けていたのが、にゃべっち率いる4年1組だ。
当時は「神懸り」と言われるほどに、抜群の反射神経でここまで上級生との対戦を含めて「一度も仕留められずに」勝ち上がってきた神童にゃべっちと、親友ムラカミ君らの活躍もあって5年生、6年生をも次々に打ち破る破竹の快進撃が続く。
気付けば、あれよあれよの間に決勝まで勝ちあがっていた。
奇しくも決勝で迎えることになった相手は、姉ミーちゃん属する6年1組だ。
「奇しくも」と言うよりは、このクラスにはスポーツ万能の優等生で生徒会長も務めていたシンカイがいただけに、寧ろ当然の如くに勝ち残ってきた優勝候補の筆頭格である。
こうして、決勝は「神童」にゃべっち率いる4年1組と「怪童」シンカイ率いる姉ミーちゃんの6年1組という、恐らくは相手にとっては思わぬ顔合わせとなった。
敵のエースであるシンカイは体も中学生並みに大きく、そのデカイ体から投げ出されるスピードボールには、当たり前だがこれまでの同級生とは比較にならないような迫力があった。
普通ならば最初から戦意喪失というところであり、また誰の目にも6年1組の圧勝と予想するのが妥当であったろう。
が、その怪童シンカイをも、てこずらせた相手がいた。
小柄ながら、驚くべき反射神経で鮮やかにボールを避け続けた「謎の6年生」だ。
その独特のバネのようなしなやかな体捌きには、さしもの怪童シンカイも散々に手を焼いていた。
この「謎の猫少年」の変幻自在な猫のような俊敏な動きは、怪童シンカイ以上に神童にゃべっちの脳裏に強い印象を残した。
(シンカイも凄いが・・・あの6年生の動きは凄い!
あんなに早く動けるなんて・・・あーして避ければ、確かにどんなボールも当たらない。
オレにも、あんな器用な真似が出来るかな?)
と「謎の猫少年」の風のような動きをしっかりと目に焼き付け、いよいよ怪童との対決を迎える。
決勝戦は、予想通り怪童シンカイの鋭いボールが次々とクラスメートを薙ぎ倒す、一方的な展開だ。
誰の目にも実力差は歴然としており、決勝とは思えないような展開となりつつあった。
一人、また一人とシンカイに狩られ、コートに残る者が少なくなっていく。
恐るべきは、シンカイの怪童ぶりだ。
そうした拙い展開の中、誰もが目を疑うようなシーンが待ち構えていた。
男勝りの奈津子ちゃんの放った強烈なボールが、油断をしていたような怪童シンカイを見事に仕留めたのだ!
「くそーっ!
年下の、しかも女子にやられるとは!」
と、地団駄踏んで悔しがるシンカイ。
が、怪童シンカイを欠いたとはいえ、6年生と4年生の体力差は歴然である。
その奈津子ちゃんも呆気なくシンカイの返り討ちに遭うと、頼みのムラカミ君までも仕留められてしまい、気付けばコートにはにゃべっちとヒグチ君を残すのみとなっていた。
しかも皮肉なことに、ムラカミ君を仕留めたシンカイが再びコートに復帰だ。
ところで、試合の途中から
「あれが、ミーちゃんの弟のにゃべちゃん?
カワイイーっ!」
という、6年1組の女子のおねーさんたちの矯正が聞こえていたが、遂に2人残されるに及ぶと判官贔屓からか
「にゃべちゃん、がんバってー」
という黄色い声のボルテージは、益々高まっていた。
まだ、コートに10人以上を残した6年1組は余裕綽々で
「よーよー、相手の残りはミーの弟かよ。
こりゃ、おもろい。
精々、かわいがったろうじゃねーか」
と余裕が見られた。
痩身の美少年にゃべっちだけに、敵は簡単に仕留められると思っていたろうが、持ち前の反射神経に加え「謎の猫少年」の変幻自在な動きを踏襲し、自家薬籠中のものとした神童の動きは神懸っていた (*`▽´*) ウヒョヒョヒョ
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