2003/09/15

YAWARAサマほか世界柔道勝手総括 \(-_- )



●勝手総評
 まず個人戦の結果だが、内容に関係なくメダル獲得数だけを見ると男子が「金3、銅1」女子が「金3、銅2」となった。

この数字だけを見ればまずまずという感じがするが、その実多くの外国人選手はあくまでオリンピックにピークを持ってくるため、世界選手権は重視しない傾向があり、それを差し引いて考える必要がある。

まず女子は8階級で金が3つ、そして銅2つを合わせると過半数の階級でメダルを獲得したわけだから、これは上々の出来と言っても良い。

一方の男子は、やはり外国人選手格落ちと地元開催という2点を考えるなら、最低でも金4つ、欲を言えば5つ以上は欲しいところだったが、まあ3つならギリギリの許容範囲といえるだろうか。

しかしながら、トータルでメダルが4つ。

つまり半分の階級でメダルを逃し、そのいずれもが早々に敗退というテイタラクは、まったくいただけなかった。

このレベルの大会ならば、最低でも8階級の内の6階級くらいでメダルを取らなければ、オリンピックでは2つか運が良くても3つがいいところではないか。

●各選手の活躍
今大会で素晴らしい活躍を見せてくれたと思う選手を挙げると、男子100kg級の井上、男子無差別級の鈴木、女子70kg級の上野、YAWARA(田村亮子)、男子60kg級の野村5選手か。

まずは、なんといっても初日に登場した、男子100kg級の井上だ。

とにかく強い!

オリンピックでもそうだが大地に根が生えたように、そしてスカッと胸のすくような力強い「一本柔道」をこれでもかと見せ付けてくれた。

全階級を見渡しても、これほど安定感があり負けそうな雰囲気すらない充実した選手は、ちょっと見当たらない

続いて、男子無差別級の鈴木。

この大会に出場が決まるまでに様々な紆余曲折のドラマがあったようだが、そうした苦難の道を乗り越えてきた人特有の、勝った時のあのえもいわれぬ表情が良かった。

他の階級とは違いニッポン柔道の中でも「聖域」といえる、この階級の代表には想像を絶するプレッシャーがある事は素人目にも容易に想像が付く。

それを静かなる闘志で跳ね除けたばかりでなく、とかく見所のないオシクラまんじゅうに終わってしまいがちな無差別級にあって、高度な技のキレも抜群に眼を惹くものがあった。

そして女子70kg級の上野。

生憎、この日は生中継を見逃してしまったが、世界選手権という舞台で「オール一本勝ち」というのは、余程の心技体の充実なければそうそう出来るものではなく、内容的にもさぞや素晴らしかったであろうと想像が出来る。

残る金メダリストの 男子100kg超級の棟田と女子78kg級の阿武の2人は、内容的には正直イマイチの感は否めず、格落ちの世界選手権だから優勝できたものの、オリンピックではやはり「」をつけざるを得ない。

寧ろ金メダルこそ逃しはしたものの、強く印象に残ったのは 男子60kg級の野村ではないだろうか。

オリンピックで天才的な技のキレと、力強さで2大会連続して金メダルを齎したあの天才が、ブランクの壁にぶち当たりよもやの敗退。

しかし、そこからが野村の偉いところで、2大会連続金メダリストのプライドをかなぐり捨て、元王者にとっては屈辱の舞台ともいうべき敗者復活戦で、決して投げやりに成る事なく必死で闘い抜いて見事メダルを勝ち取った、あの不屈の闘志こそは天才的な技のキレ以上に、敬服に値する

 さて、そして最後にご登場願うのは、勿論この方をおいて他にはない「YAWARAさん」こと、田村亮子だ。

スポーツ観戦オタクのワタクシにとって、マラソンの高橋尚子とYAWARAさんのお二人は、長きに渡り「別格官幣大社」的な存在である。

どちらもそうだが、あの抜きん出た実力もさることながら、なにしろパーソナリティが素晴らしい。

勿論、テレビなどでお目にかかるものは実は虚像であり、実際のパーソナリティはどうなのかはわからないし、高橋はともかくとしてもYAWARAさんについては、方々から

「実際には・・・」

といった噂も耳に入ってきたりはしていなくもないが、一観戦者であるワタクシにとっては、そんな事は一切関心がない。

喩え彼女らの正体が、どんなに気が強いワガママなイヤミ女であったとしても、その被害を蒙るのは周囲にいる一握りの者だけであり、それは常に注目を浴び続ける国家的才能を持つ天才の謦咳に接する幸運な者の「税金」のようなものである。

長い競技生活の中ではさぞかし嫌な事もあろうし、それ以上に無神経でしつこいマスコミ攻勢にはさぞかしウンザリさせられる事も多かろうとは、我ら無名の凡人にさえ容易に想像がつく。

が、テレビなど対外的にはそういった仕草や表情はおくびにも出さず、常に明るい笑顔と歯切れのよい口調で素人の耳にも明快に語り、また競技においてもヘタなスポ根よろめきドラマ紛いを演じて徒に涙を誘うような素振りは微塵もなく、常に爽やかなアスリートの魅力を振り撒き続けてきたあの精神力こそは、このお二方に共通する最高の美点だ。

そのYAWARAさんも、もう28歳になったんだねー。

あの少し前までは無邪気な感じの残っていた童顔に、怪我やスランプそして10代半ばから20代後半という女性の青春を総て柔道に捧げてきたがための経年疲労のようなものが一気に表れ、そこはかとなく痛々しく見えたのはワタクシの目の錯覚だったのでだろうか。

ワタクシは、この稀に見る天才少女がまだ本当にあどけない、1516の時にすい星の如く現れた時からずっと注目してきた幸運な一人だが、10年以上の長きに渡って世界のトップを張りつづける事はとても想像の外である。

敢えて素人の雑感を書き連ねるなら、デビューしてきた頃のあの怖い物知らずのスピーディで溌剌とした柔道に比べ、年々柔道のスタイルが変わっていっているのは、やはり仕方のない事ことなのだろう。

あれだけ日本中の期待と注目を一心に浴びつづけては、どうあっても負ける事だけは許されないのだ。

それが皮肉にも、この折角の天才の手足を縛ってしまい技のキレを年々、鈍らせてしまっている気がしてしまうのである。

いわば「贔屓の引き倒し」というヤツだが、その結果がYAWARAさんの最大の魅力だった、あの「攻める柔道」、「一本柔道」から年々遠ざけてしまい「守りの柔道」、「負けない柔道」へと傾かせている気がするのだが、これはやはり王者の宿命としては如何ともし難いことなのだろう。

そんな中で内容は(YAWARAさんにしては)不十分ながらも、しっかりと金メダルを獲ってしまうところは、やはりさすがというしかない。

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