2隻の船が停泊する港では、ノルウェー船の水夫やその妻たちが無事に帰還できたことを祝っています。
しかし、呪われたオランダ人の船からは、暗い運命を嘆く歌が聞こえてきます。
ゼンタには、実はエリックという恋人がいました。
エリックは、ゼンタが自分を裏切ったことを責めます。
かつて自分たちは愛し合っていたのに、と。
この時、その話を物陰から聞いていた者がいました。
オランダ人です。
所詮永遠の愛など存在しないのだと絶望したオランダ人は、船に乗り込み出航します。
オランダ人の船が岸から遠のく時、ゼンタはオランダ人に対する真の愛を誓って海に身を投げました。
すると呪われた船は海に沈み、オランダ人とゼンタの体は空から一条の光を浴び、天に昇っていきます。
ゼンタの死とともに、オランダ人は呪いから救済されたのでした。
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●ワーグナーはオペラのスペシャリスト
ワーグナーは、初期の習作で上演機会の少ない『妖精』、『恋愛禁制』、『リエンツィ』の3作品のオペラを書いた後、10作品のオペラを遺した。
この10作品総てが名作というように、名実とともに大オペラ作曲家だったが『さまよえるオランダ人』は、その10作品の中の第1作目に当たりワーグナー28才の時の作品だ。
●ワーグナー・オペラの入門編
この『さまよえるオランダ人』は、ワーグナー最初期の作品というだけあって、作曲に使っている手法もより易しく、初めてワーグナーのオペラを観る人に最適なオペラと言える。
アリア、二重唱、合唱などの聴きどころも、しっかりとクローズアップされているので、音楽を堪能することができ、また「呪われたオランダ人の動機」や「ゼンタの救済の動機」など、ワーグナー作品の特徴である示導動機(モティーフ)にも慣れることができる。
●オランダ人のモノローグ
このオペラで、注目すべき登場人物といえば、やはりタイトルにもなっている「オランダ人」だ。
オランダ人の役を歌う歌手の出来によって、オペラ全体の成功も左右されるが、特に第1幕での登場シーンでは自分の呪われた運命を歌う、長大なモノローグ(一人語り)が用意されている。
この作品を書いた後、オペラに憑(つ)かれたワーグナーの人生の始まりをも象徴するかのような独白である。
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